【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

D・J・ダーリン『真実のソ連』法政大学出版、1949年

2012-04-22 00:51:43 | 政治/社会

             

 本ブログでは、一番古くに出版された本です。わたしが生まれる前に出た本です。

 札幌の知人紹介です。電話で「旧ソ連の問題点はこの本に全部書いてあります」と言われました。


 図書館にあったので、借り出し、読みました。当初はよくありがちなイデオロギー的に旧ソ連を断罪する内容のものかと想像していましたが、そうではなく、革命後の旧ソ連の国内事情を少ない資料の制約のもとで、可能な限り客観的に描きだそうと努力した形跡があります。

 読み通した感じでは、この国では社会主義政権が成立して以降、その思想を現実化しようとしたためかなり無理をしたこと、また列強がこの国をつぶそうとしていたためにその無理が加速化されたことがわかります。

 スターリン体制が確立した30年代以降はとくにひどかったようです。粛清や飢餓、そして第二次世界大戦によって失われた人的被害が天文学的数字にのぼり、その数が連合国側のそれの比ではないことを知ると暗澹たる気分になります。

 訳者の紹介によれば、著者ダーリンは1889年ロシアのロガチェフで生を受け、ピータースブルク大学に在学中、地下活動に加わり検挙されました。その後ドイツに逃れ、ハイデルベルク大学で哲学博士の学位を受けました。
 1917年3月の革命後ロシアに戻り、モスコー・ソヴィエトの代議員に選出されましたが、1921年にソビエト当局に検挙され、その後亡命。
 1940年からニューヨークに在住し、ロシア、ソビエトの外交史研究に従事し、多くの書物を上梓しました。

 本書もソ連の当時の外交政策を分析しようというのが執筆動機にあり、対外政策と国内政策とは密接に結びついているという認識のもとに、その外交政策を理解し予見するには国内政策を理解しなければならないとして刊行したようです。
 確かにソ連は戦争直後までで国内事情を固め、以降資本主義の全般的危機論を旗幟として国際社会にうってでたのですから、著者の見方は正鵠を射ていたといえます。


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