検証 財界主導の大学改革③ 高等教育ゆがめる「質」確保
自民党の教育・人材力強化調査会の提言(5月23日)は、大学への「手厚い支援」を「単なる高等教育機関の延命につなげるのではなく、高等教育機関の質を確保」するように「厳格な評価」を行う必要があるとしています。
自民党の提言に強い影響を与えているのが、大学教育改革についての経団連の2022年1月の提言です。同提言は、少子化のもと定員充足のために学生を実質無試験で入学させていることは、「教育の質が担保されていない」として、大学の淘汰(とうた)を求めています。定員を絞り、「足きり」によって「質を確保」しろとの主張です。
自民党のいう「質」とは、財界が求める「質」であり、それを確保できない大学は「厳格な評価」によって切り捨てられます。
定員割れに罰則
自民党の提言は、「質の高い高等教育の実現に向けた規模の適正化」をはかるとして「教育の質を保障できない高等教育機関の撤退の促進」「私学助成のメリハリ付け」などを掲げます。現在も定員割れの私立大学には国庫助成の減額・不交付、新学部・新学科申請での制限、修学支援新制度からの除外などのペナルティーがあります。財界の要求にこたえ、これらをさらに強化する方針です。
「教育の質」を定員割れかどうかで測るのは誤りです。文部科学省も「定員充足の状況のみが私立大学等の教育の質をあらわすものではない」と答弁しています(18年6月6日、衆院文科委)。定員未充足は、国の適切な財政支援があれば、少人数教育によって教育の質を高める機会にもできます。
23年度の大学・短大・高専の進学率は62・1%に達し、専門学校も含めると84%です。日本の高等教育は、いわゆるエリートだけでなく、高度に発達した社会に適応しうる国民を育成する機能を持つユニバーサル(普遍的)段階に達しつつあると言われています。「足きり」で「質を確保」するのは進学率が低かった段階の発想です。
今、求められているのは、自主的・主体的な学びや学生・教員間の双方向的コミュニケーションの充実など、一人ひとりが学び成長する権利を大切にする教育の質です。
財界求める人材
財界が求めるもう一つの「質」は、自らが求める人材養成への「改革」です。
経団連は提言で、「経済界が求める人材像と採用動向」などを示し、「学修者本位の学び」の実現に必要な制度改革として、大学設置基準の見直しを求めました。自民党の提言は、教育研究の「質」の高度化として「学修者本位の教育」のさらなる推進をかかげます。
これは財界が求める人材養成のための「改革」です。
経団連の「学修者本位の学び」とは、財界が求める「即戦力」の養成に必要な単位だけを履修して卒業できるように大学のカリキュラムを見直すことです。
「人格の完成」という教育の目的を学位取得に矮小(わいしょう)化し、就職予備校化するものです。
実際、「学修者本位」を掲げた22年10月の大学設置基準改定は、専任教員を非正規雇用に置き換えることを可能にし、「原則」備えなければならないとしていた運動場と体育館を「必要に応じて」とするなど、教育研究の質の低下を招きかねない規制緩和でした。
大学は「学術の中心」(学校教育法)であり、一般教育、専門教育、職業訓練とともに専門的研究を目的とします。「学修者本位の教育」は、学術の中心としての大学のあり方を、財界本位にゆがめる危険があります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月4日付掲載
自民党のいう「質」とは、財界が求める「質」であり、それを確保できない大学は「厳格な評価」によって切り捨てられます。
23年度の大学・短大・高専の進学率は62・1%に達し、専門学校も含めると84%。日本の高等教育は、いわゆるエリートだけでなく、高度に発達した社会に適応しうる国民を育成する機能を持つユニバーサル(普遍的)段階に達しつつあると。
今、求められているのは、自主的・主体的な学びや学生・教員間の双方向的コミュニケーションの充実など、一人ひとりが学び成長する権利を大切にする教育の質。
自民党の教育・人材力強化調査会の提言(5月23日)は、大学への「手厚い支援」を「単なる高等教育機関の延命につなげるのではなく、高等教育機関の質を確保」するように「厳格な評価」を行う必要があるとしています。
自民党の提言に強い影響を与えているのが、大学教育改革についての経団連の2022年1月の提言です。同提言は、少子化のもと定員充足のために学生を実質無試験で入学させていることは、「教育の質が担保されていない」として、大学の淘汰(とうた)を求めています。定員を絞り、「足きり」によって「質を確保」しろとの主張です。
自民党のいう「質」とは、財界が求める「質」であり、それを確保できない大学は「厳格な評価」によって切り捨てられます。
定員割れに罰則
自民党の提言は、「質の高い高等教育の実現に向けた規模の適正化」をはかるとして「教育の質を保障できない高等教育機関の撤退の促進」「私学助成のメリハリ付け」などを掲げます。現在も定員割れの私立大学には国庫助成の減額・不交付、新学部・新学科申請での制限、修学支援新制度からの除外などのペナルティーがあります。財界の要求にこたえ、これらをさらに強化する方針です。
「教育の質」を定員割れかどうかで測るのは誤りです。文部科学省も「定員充足の状況のみが私立大学等の教育の質をあらわすものではない」と答弁しています(18年6月6日、衆院文科委)。定員未充足は、国の適切な財政支援があれば、少人数教育によって教育の質を高める機会にもできます。
23年度の大学・短大・高専の進学率は62・1%に達し、専門学校も含めると84%です。日本の高等教育は、いわゆるエリートだけでなく、高度に発達した社会に適応しうる国民を育成する機能を持つユニバーサル(普遍的)段階に達しつつあると言われています。「足きり」で「質を確保」するのは進学率が低かった段階の発想です。
今、求められているのは、自主的・主体的な学びや学生・教員間の双方向的コミュニケーションの充実など、一人ひとりが学び成長する権利を大切にする教育の質です。
財界求める人材
財界が求めるもう一つの「質」は、自らが求める人材養成への「改革」です。
経団連は提言で、「経済界が求める人材像と採用動向」などを示し、「学修者本位の学び」の実現に必要な制度改革として、大学設置基準の見直しを求めました。自民党の提言は、教育研究の「質」の高度化として「学修者本位の教育」のさらなる推進をかかげます。
これは財界が求める人材養成のための「改革」です。
経団連の「学修者本位の学び」とは、財界が求める「即戦力」の養成に必要な単位だけを履修して卒業できるように大学のカリキュラムを見直すことです。
「人格の完成」という教育の目的を学位取得に矮小(わいしょう)化し、就職予備校化するものです。
実際、「学修者本位」を掲げた22年10月の大学設置基準改定は、専任教員を非正規雇用に置き換えることを可能にし、「原則」備えなければならないとしていた運動場と体育館を「必要に応じて」とするなど、教育研究の質の低下を招きかねない規制緩和でした。
大学は「学術の中心」(学校教育法)であり、一般教育、専門教育、職業訓練とともに専門的研究を目的とします。「学修者本位の教育」は、学術の中心としての大学のあり方を、財界本位にゆがめる危険があります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月4日付掲載
自民党のいう「質」とは、財界が求める「質」であり、それを確保できない大学は「厳格な評価」によって切り捨てられます。
23年度の大学・短大・高専の進学率は62・1%に達し、専門学校も含めると84%。日本の高等教育は、いわゆるエリートだけでなく、高度に発達した社会に適応しうる国民を育成する機能を持つユニバーサル(普遍的)段階に達しつつあると。
今、求められているのは、自主的・主体的な学びや学生・教員間の双方向的コミュニケーションの充実など、一人ひとりが学び成長する権利を大切にする教育の質。
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