GAFAと新自由主義① 骨抜き独禁法の下、独占
グーグルやアマゾンなど、米国の巨大IT(情報技術)企業が独占的な地位を確立する上で、新自由主義は重大な役割を果たしました。龍谷大学名誉教授の夏目啓二さんに聞きました。(杉本恒如)
龍谷大学名誉教授 夏目啓二さん
―米国の巨大IT企業が注目されるのはなぜでしょうか。
米国の巨大IT企業は英語の頭文字をとってGAFA(ガーファ)またはGAFAM(ガーファム)と呼ばれ、まとめて論じられています。グーグル(アルファベット)、アマゾン、フェイスブック(メタ)、アップル、マイクロソフトのことです。
GAFAの規模は超巨大です。世界の株式時価総額(企業価値額)という指標でみると、上位7社のうちに、なんと、これら米国のIT企業5社がすべて入っているのです。(1月時点、表)
2022年度の日本の政府一般会計予算規模は107兆円ですから、7位のフェイスブックの企業価値額(9266億ドル=約120兆円)にも及びません。GAFAは世界的な富の偏在と格差社会を生み出す象徴的存在となっています。
世界時価総額トップ10
※「STARTUP DB」から作成。22年1月14日時点
利益独り占め
GAFAへの経済的富の集中は、21世紀の20年間に及ぶIT革命がもたらしたものでした。21世紀のIT革命は、クラウド技術、ビッグデータ、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)という技術革新によってもたらされました。この技術革新の力は広く社会や産業や企業に影響を及ぼし、世界の技術と経済発展に貢献しています。
アップルのビジネスは、スマートフォンの開発・販売・情報配信サービスです。マイクロソフトは、ソフトウエア開発・販売とクラウド・サービス。グーグルは、検索サービスとネット広告。アマゾンは、ネット販売とクラウド・サービス。フェイスブックは、交流サイト(SNS)とネット広告です。
個人と企業がコンピューターを使って情報を処理し、商品を売買するうえで、不可欠の基盤をGAFAは提供しています。これらの基盤技術をプラットフォームといい、GAFAはプラットフォーマーといわれます。
しかしながらIT革命による経済的な利益や成果は、ごく一部の米国企業であるGAFAに独り占めにされ、経済的富の偏在を招きました。さらには個人信報の漏えい、偽情報の拡散と人権侵害、中小企業との不公正取引、劣悪な労働環境、税逃れなどの問題が噴出し、GAFAのビジネスのやり方に批判が集まっています。このためGAFAへの社会的な規制、民主的な規制が求められています。
米上院予算委員会の公聴会で米社アマゾン内の労働慣行について証言するアマゾン労働組合のクリスチャン・スモールズ代表=5月5日、ワシントン(ロイター)
約750社を買収
―GAFAの独占的事業は独占禁止法に抵触しないのですか。
その問題が現在、米国で焦点になっています。バイデン政権は反トラスト法(独占禁止法)によるGAFA規制を提起しようとしています。そのためには反トラスト法の運用方針の転換が必要です。
なぜなら、1980年代にレーガン政権が反トラスト法の解釈を変更し、骨抜きにしてしまったからです。解釈の変更を理論的に支えたのは「シカゴ学派」と呼ばれる新自由主義の経済学者や法学者でした。GAFAがやすやすと独占的地位を築けた背景には反トラスト法の新自由主義的な解釈がありました。
1890年に成立し、1914年に補完された米国の反トラスト法は、独占企業の優越的地位乱用の禁止、競合関係にある企業買収の禁止、競争の促進という原則で厳格に運用されていました。レーガン政権はこれを転換し、「消費者利益」を唯一の判断基準としました。競争的水準を上回る不当な高価格を維持するのでなければ、企業買収を認めることにしてしまったのです。
独占禁止(排除)のために政府が提訴するケースは激減し、合併・買収(M&A)を認められるケースが増えました。反トラスト法の新自由主義的解釈は今日まで続き、GAFAはその下で競合企業を次々に買収して独占状態を強化したのです。GAFAMによる過去30年間の買収は約750社(「日経」20年1月14日付)を超えます。(つづく)(5回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年5月12日付掲載
2022年度の日本の政府一般会計予算規模は107兆円ですから、7位のフェイスブックの企業価値額(9266億ドル=約120兆円)にも及びません。
GAFAへの経済的富の集中は、21世紀の20年間に及ぶIT革命がもたらしたもの。21世紀のIT革命は、クラウド技術、ビッグデータ、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)という技術革新によるもの。この技術革新の力は広く社会や産業や企業に影響を及ぼし、世界の技術と経済発展に貢献。
その一方で、レーガン政権の反トラスト法の骨抜きによって、GAFAMによる過去30年間の買収は約750社(「日経」20年1月14日付)を超えます。
日本でも、楽天やJTBなど企業買収で拡大している企業多い。
グーグルやアマゾンなど、米国の巨大IT(情報技術)企業が独占的な地位を確立する上で、新自由主義は重大な役割を果たしました。龍谷大学名誉教授の夏目啓二さんに聞きました。(杉本恒如)
龍谷大学名誉教授 夏目啓二さん
―米国の巨大IT企業が注目されるのはなぜでしょうか。
米国の巨大IT企業は英語の頭文字をとってGAFA(ガーファ)またはGAFAM(ガーファム)と呼ばれ、まとめて論じられています。グーグル(アルファベット)、アマゾン、フェイスブック(メタ)、アップル、マイクロソフトのことです。
GAFAの規模は超巨大です。世界の株式時価総額(企業価値額)という指標でみると、上位7社のうちに、なんと、これら米国のIT企業5社がすべて入っているのです。(1月時点、表)
2022年度の日本の政府一般会計予算規模は107兆円ですから、7位のフェイスブックの企業価値額(9266億ドル=約120兆円)にも及びません。GAFAは世界的な富の偏在と格差社会を生み出す象徴的存在となっています。
世界時価総額トップ10
順位 | 企業 | 時価総額(ドル) |
1 | アップル | 2兆8281億 |
2 | マイクロソフト | 2兆3584億 |
3 | サウジアラムコ | 1兆8868億 |
4 | アルファベット(グーグル) | 1兆8214億 |
5 | アマゾン | 1兆6352億 |
6 | テスラ | 1兆310億 |
7 | メタ(フェイスブック) | 9266億 |
8 | バークシャ・ハザウェイ | 7146億 |
9 | エヌビデイア | 6817億 |
10 | 台湾積体電路製造(TSMC) | 5945億 |
利益独り占め
GAFAへの経済的富の集中は、21世紀の20年間に及ぶIT革命がもたらしたものでした。21世紀のIT革命は、クラウド技術、ビッグデータ、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)という技術革新によってもたらされました。この技術革新の力は広く社会や産業や企業に影響を及ぼし、世界の技術と経済発展に貢献しています。
アップルのビジネスは、スマートフォンの開発・販売・情報配信サービスです。マイクロソフトは、ソフトウエア開発・販売とクラウド・サービス。グーグルは、検索サービスとネット広告。アマゾンは、ネット販売とクラウド・サービス。フェイスブックは、交流サイト(SNS)とネット広告です。
個人と企業がコンピューターを使って情報を処理し、商品を売買するうえで、不可欠の基盤をGAFAは提供しています。これらの基盤技術をプラットフォームといい、GAFAはプラットフォーマーといわれます。
しかしながらIT革命による経済的な利益や成果は、ごく一部の米国企業であるGAFAに独り占めにされ、経済的富の偏在を招きました。さらには個人信報の漏えい、偽情報の拡散と人権侵害、中小企業との不公正取引、劣悪な労働環境、税逃れなどの問題が噴出し、GAFAのビジネスのやり方に批判が集まっています。このためGAFAへの社会的な規制、民主的な規制が求められています。
米上院予算委員会の公聴会で米社アマゾン内の労働慣行について証言するアマゾン労働組合のクリスチャン・スモールズ代表=5月5日、ワシントン(ロイター)
約750社を買収
―GAFAの独占的事業は独占禁止法に抵触しないのですか。
その問題が現在、米国で焦点になっています。バイデン政権は反トラスト法(独占禁止法)によるGAFA規制を提起しようとしています。そのためには反トラスト法の運用方針の転換が必要です。
なぜなら、1980年代にレーガン政権が反トラスト法の解釈を変更し、骨抜きにしてしまったからです。解釈の変更を理論的に支えたのは「シカゴ学派」と呼ばれる新自由主義の経済学者や法学者でした。GAFAがやすやすと独占的地位を築けた背景には反トラスト法の新自由主義的な解釈がありました。
1890年に成立し、1914年に補完された米国の反トラスト法は、独占企業の優越的地位乱用の禁止、競合関係にある企業買収の禁止、競争の促進という原則で厳格に運用されていました。レーガン政権はこれを転換し、「消費者利益」を唯一の判断基準としました。競争的水準を上回る不当な高価格を維持するのでなければ、企業買収を認めることにしてしまったのです。
独占禁止(排除)のために政府が提訴するケースは激減し、合併・買収(M&A)を認められるケースが増えました。反トラスト法の新自由主義的解釈は今日まで続き、GAFAはその下で競合企業を次々に買収して独占状態を強化したのです。GAFAMによる過去30年間の買収は約750社(「日経」20年1月14日付)を超えます。(つづく)(5回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年5月12日付掲載
2022年度の日本の政府一般会計予算規模は107兆円ですから、7位のフェイスブックの企業価値額(9266億ドル=約120兆円)にも及びません。
GAFAへの経済的富の集中は、21世紀の20年間に及ぶIT革命がもたらしたもの。21世紀のIT革命は、クラウド技術、ビッグデータ、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)という技術革新によるもの。この技術革新の力は広く社会や産業や企業に影響を及ぼし、世界の技術と経済発展に貢献。
その一方で、レーガン政権の反トラスト法の骨抜きによって、GAFAMによる過去30年間の買収は約750社(「日経」20年1月14日付)を超えます。
日本でも、楽天やJTBなど企業買収で拡大している企業多い。
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