安倍政権の経済政策 検証④ 医療・介護の利用阻む
「骨太の方針」は、2016年度以降、社会保障費を1年当たり3千億~5千億円も削減していく姿勢を示しました。そのための「改革項目」を事細かに盛り込んだのが特徴です。
今年度から「速やかに取り組みを進める」と強調。経済財政諮問会議の下に専門調査会を設置し、今年末に「改革工程表」をつくります。そして「改革項目」を「全部やっていく」(甘利明経済財政担当相)というのですから、国民生活にとって事態は深刻です。
自動削減仕組む
最大の標的は医療・介護です。その理由は財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の建議(6月1日)が明記。年金は「マクロ経済スライドの仕組みを十分に機能させれば、経済と整合的な伸びとなる」のに対し、医療・介護の給付費は「増加が顕著」だから「改革が不可欠」なのだと説明しています。つまり、支給額を自動的に下げる年金のような仕組みが医療・介護にないことが、不都合だというのです。
そこで政府は、高齢化が進んでも医療・介護給付費の伸びが抑制される仕組みの構築を狙っています。75歳以上になると医療・介護費が大きく増えるので、「『団塊の世代』が75歳の仲間入りを始める2020年代初頭までに、制度改革を実施に移す」(財政審建議)というわけです。
骨太の方針に盛り込まれた「改革項目」には、こうした意図が貫かれています。
一つの柱は、医療・介護の自己負担を増やし、利用を妨げることです。▽外来受診時に定額負担上乗せ▽75歳以上の患者負担引き上げ▽患者負担の月額上限(高額療養費)引き上げ▽介護保険の利用者負担引き上げ―などをあげました。
大きな打撃を受けるのは、複数の病気があって頻繁な外来受診が必要な人、病気になりがちな高齢者、重い病気で医療費が高額になる人、手厚い介護を必要とする人です。弱いものいじめそのものです。
二つ目の柱は、公的保険の適用範囲を縮小することです。▽介護保険の「軽度者」の保険外しや市町村事業への移行▽市販品類似薬(湿布など)の保険外し―などをあげました。現在、介護保険では要支援1~2の訪問介護と通所介護を全国一律の保険給付から外し、限られた予算の範囲内で市町村が行う事業に丸投げする制度改悪を進めています。今回は、要介護1~2までの全サービスを市町村事業に切り下げ、生活援助と福祉用具貸与については全額自己負担を原則とする方向に踏み込みました。
三つ目の柱は、病院のベッド(病床)の強制的削減です。15年度中に国の基準を示し、都道府県に計画をつくらせて、1人当たり医療費の地域差を「半減させ年のる」方針を打ち出しました。医療費の最も少ない県を基準にして病床を強引に減らし、地域ごとの特性を無視して入院医療を縮小するものです。
安心できる年金制度を求めて声をあげる、年金引下げ違憲訴訟の原告と支援者=5月29日、東京地裁前
自治体に罰則も
四つ目の柱は、自治体に罰則を科して費用削減に追い込むことです。医療・介護費が高い場合に、▽都道府県ごとに診療報酬を引き下げる▽国民健康保険料(税)や介護保険料をいっそう引き上げる―などの仕組みづくりをあげました。
年金についても、▽支給額を毎年減らすマクロ経済スライドの強化▽「高所得者」の支給額削減▽年金課税の強化―などを盛り込みました。生活保護の水準をさらに切り下げる方針も示しました。
これでは、国民の可処分所得は減り続け、必要な医療・介護を受けられない人はますます増えます。重症化が進み、家族の「介護離職」に拍車がかかります。経済への悪影響は必至です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年7月9日付掲載
小泉内閣の時も1年間に2000億円もの社会保障費の削減がやられました。今回は金額が増えるだけでなく、中身も具体的になりました。
外来受診時に定額負担上乗せ、公的保険の適用範囲を縮小など踏んだり蹴ったりです。
「骨太の方針」は、2016年度以降、社会保障費を1年当たり3千億~5千億円も削減していく姿勢を示しました。そのための「改革項目」を事細かに盛り込んだのが特徴です。
今年度から「速やかに取り組みを進める」と強調。経済財政諮問会議の下に専門調査会を設置し、今年末に「改革工程表」をつくります。そして「改革項目」を「全部やっていく」(甘利明経済財政担当相)というのですから、国民生活にとって事態は深刻です。
自動削減仕組む
最大の標的は医療・介護です。その理由は財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の建議(6月1日)が明記。年金は「マクロ経済スライドの仕組みを十分に機能させれば、経済と整合的な伸びとなる」のに対し、医療・介護の給付費は「増加が顕著」だから「改革が不可欠」なのだと説明しています。つまり、支給額を自動的に下げる年金のような仕組みが医療・介護にないことが、不都合だというのです。
そこで政府は、高齢化が進んでも医療・介護給付費の伸びが抑制される仕組みの構築を狙っています。75歳以上になると医療・介護費が大きく増えるので、「『団塊の世代』が75歳の仲間入りを始める2020年代初頭までに、制度改革を実施に移す」(財政審建議)というわけです。
骨太の方針に盛り込まれた「改革項目」には、こうした意図が貫かれています。
一つの柱は、医療・介護の自己負担を増やし、利用を妨げることです。▽外来受診時に定額負担上乗せ▽75歳以上の患者負担引き上げ▽患者負担の月額上限(高額療養費)引き上げ▽介護保険の利用者負担引き上げ―などをあげました。
大きな打撃を受けるのは、複数の病気があって頻繁な外来受診が必要な人、病気になりがちな高齢者、重い病気で医療費が高額になる人、手厚い介護を必要とする人です。弱いものいじめそのものです。
二つ目の柱は、公的保険の適用範囲を縮小することです。▽介護保険の「軽度者」の保険外しや市町村事業への移行▽市販品類似薬(湿布など)の保険外し―などをあげました。現在、介護保険では要支援1~2の訪問介護と通所介護を全国一律の保険給付から外し、限られた予算の範囲内で市町村が行う事業に丸投げする制度改悪を進めています。今回は、要介護1~2までの全サービスを市町村事業に切り下げ、生活援助と福祉用具貸与については全額自己負担を原則とする方向に踏み込みました。
三つ目の柱は、病院のベッド(病床)の強制的削減です。15年度中に国の基準を示し、都道府県に計画をつくらせて、1人当たり医療費の地域差を「半減させ年のる」方針を打ち出しました。医療費の最も少ない県を基準にして病床を強引に減らし、地域ごとの特性を無視して入院医療を縮小するものです。
安心できる年金制度を求めて声をあげる、年金引下げ違憲訴訟の原告と支援者=5月29日、東京地裁前
自治体に罰則も
四つ目の柱は、自治体に罰則を科して費用削減に追い込むことです。医療・介護費が高い場合に、▽都道府県ごとに診療報酬を引き下げる▽国民健康保険料(税)や介護保険料をいっそう引き上げる―などの仕組みづくりをあげました。
年金についても、▽支給額を毎年減らすマクロ経済スライドの強化▽「高所得者」の支給額削減▽年金課税の強化―などを盛り込みました。生活保護の水準をさらに切り下げる方針も示しました。
これでは、国民の可処分所得は減り続け、必要な医療・介護を受けられない人はますます増えます。重症化が進み、家族の「介護離職」に拍車がかかります。経済への悪影響は必至です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年7月9日付掲載
小泉内閣の時も1年間に2000億円もの社会保障費の削減がやられました。今回は金額が増えるだけでなく、中身も具体的になりました。
外来受診時に定額負担上乗せ、公的保険の適用範囲を縮小など踏んだり蹴ったりです。
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