ハンドルクライシス トラック物流危機 24年問題編② しわ寄せ全て、運転者に
「関西・関東往復が一番きつい。それより先は、むしろ長く眠る時間がとれるから」と、語るのは北関東地方の運送会社の運転者Aさん(50)です。東京―大阪間、約500キロをトラック運転者たちはどのように運んでいるのでしょうか。
さいたま市内のトラックステーションで休憩のために止まるトラック
睡眠は4~5時間
大阪のトラック運転者Bさん(56)は、月曜日の昼ころに荷物を積み込み出発。夜9時ごろに東名高速道路の海老名サービスエリア(神奈川県)に着くと、そこで仮眠します。
高速道路の中で休息を取るのは、道路料金の割引のためです。日付が変わる前に、高速道を降りると、割引が適用されません。車中泊したBさんは、2日目の朝5時に出発。午前中に東京近郊へ荷物を届け、帰りの荷物を別の場所で積み込んでから、ようやく大阪へ向かいます。
帰り道は、岐阜県や滋賀県のサービスエリアで仮眠。3日目の午前中に大阪に帰り着きます。
「睡眠は4、5時間かなあ。渋滞や雪、荷主に待たされればどんどん休息が削られる。寝ずに関東に行って、帰ることもある」
国土交通省が2020年に告示した「標準的な運賃」。大阪―東京間の片道で、大型トラック(10トンクラス)で14万6000円、トレーラーは18万8000円です。
Bさんは「実際は7万円ぐらいですよ。そのうち、2万円が僕の人件費、片道で燃料代が3万円ぐらい。高速料金も2万円はかかるから。固定費や車の減価償却を入れたら事業者は厳しいよ」
Aさんも北関東から関西までの荷物の運賃は「平均して12万~13万円だ」といいます。
区間ごとの「標準的な運質」を載せた国土交通省や全日本トラック協会がつくったパンフレット
“付帯業務”が負担
運賃が低く抑えられる原因に、トラック業界の多重下請け構造があります。1990年に施行の貨物自動車運送事業法で規制緩和がすすみ、多くの事業者が参入。過当競争が進んできました。
「4次、5次の下請けなんてザラ。荷主から『運んでくれる者は他にいるから』は、結構な殺し文句。荷主の立場は絶対だ」
仕事の中で、最もストレスになるのは荷主との関係だと、Bさんはいいます。
「荷主の元に午前11時に行って、『午前中に荷物積めるかな』と思ったら、荷主に『3時ぐらいになる』と言われた。寝る時間がこれでなくなった。しわ寄せが、ドライバーに全部来る」
荷主がテレビCMを流す大手上場企業であっても、運転者に“付帯業務”を求めてくるといいます。Bさんは、調味料の大手企業から「荷物にラップを巻いてくれないなら、積ませない」と言われ、運送会社が持ち出しで買った、ラップを巻きました。
その営業所に届けると、そこで「このラップいらん、外せ。ゴミは持って帰れ」と言われました。家具小売店の時は、数十種類の商品を倉庫まで運び、仕分けするよう求められました。
Aさんも「少しでも早く出発したいと焦って、積み込みやシール貼りなど荷主がすべきことを手伝わざるをえない時がある。“休憩”しているはずなのに実際は働いている。この業界は“ブラック”じゃないと回らないのか」と語ります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年1月30日付掲載
大阪のトラック運転者Bさん(56)は、月曜日の昼ころに荷物を積み込み出発。夜9時ごろに東名高速道路の海老名サービスエリア(神奈川県)に着くと、そこで仮眠。
高速道路の中で休息を取るのは、道路料金の割引のため。日付が変わる前に、高速道を降りると、割引が適用されません。車中泊したBさんは、2日目の朝5時に出発。午前中に東京近郊へ荷物を届け、帰りの荷物を別の場所で積み込んでから、ようやく大阪へ。
帰り道は、岐阜県や滋賀県のサービスエリアで仮眠。3日目の午前中に大阪に。
「睡眠は4、5時間かなあ。渋滞や雪、荷主に待たされればどんどん休息が削られる。寝ずに関東に行って、帰ることもある」
「関西・関東往復が一番きつい。それより先は、むしろ長く眠る時間がとれるから」と、語るのは北関東地方の運送会社の運転者Aさん(50)です。東京―大阪間、約500キロをトラック運転者たちはどのように運んでいるのでしょうか。
さいたま市内のトラックステーションで休憩のために止まるトラック
睡眠は4~5時間
大阪のトラック運転者Bさん(56)は、月曜日の昼ころに荷物を積み込み出発。夜9時ごろに東名高速道路の海老名サービスエリア(神奈川県)に着くと、そこで仮眠します。
高速道路の中で休息を取るのは、道路料金の割引のためです。日付が変わる前に、高速道を降りると、割引が適用されません。車中泊したBさんは、2日目の朝5時に出発。午前中に東京近郊へ荷物を届け、帰りの荷物を別の場所で積み込んでから、ようやく大阪へ向かいます。
帰り道は、岐阜県や滋賀県のサービスエリアで仮眠。3日目の午前中に大阪に帰り着きます。
「睡眠は4、5時間かなあ。渋滞や雪、荷主に待たされればどんどん休息が削られる。寝ずに関東に行って、帰ることもある」
国土交通省が2020年に告示した「標準的な運賃」。大阪―東京間の片道で、大型トラック(10トンクラス)で14万6000円、トレーラーは18万8000円です。
Bさんは「実際は7万円ぐらいですよ。そのうち、2万円が僕の人件費、片道で燃料代が3万円ぐらい。高速料金も2万円はかかるから。固定費や車の減価償却を入れたら事業者は厳しいよ」
Aさんも北関東から関西までの荷物の運賃は「平均して12万~13万円だ」といいます。
区間ごとの「標準的な運質」を載せた国土交通省や全日本トラック協会がつくったパンフレット
“付帯業務”が負担
運賃が低く抑えられる原因に、トラック業界の多重下請け構造があります。1990年に施行の貨物自動車運送事業法で規制緩和がすすみ、多くの事業者が参入。過当競争が進んできました。
「4次、5次の下請けなんてザラ。荷主から『運んでくれる者は他にいるから』は、結構な殺し文句。荷主の立場は絶対だ」
仕事の中で、最もストレスになるのは荷主との関係だと、Bさんはいいます。
「荷主の元に午前11時に行って、『午前中に荷物積めるかな』と思ったら、荷主に『3時ぐらいになる』と言われた。寝る時間がこれでなくなった。しわ寄せが、ドライバーに全部来る」
荷主がテレビCMを流す大手上場企業であっても、運転者に“付帯業務”を求めてくるといいます。Bさんは、調味料の大手企業から「荷物にラップを巻いてくれないなら、積ませない」と言われ、運送会社が持ち出しで買った、ラップを巻きました。
その営業所に届けると、そこで「このラップいらん、外せ。ゴミは持って帰れ」と言われました。家具小売店の時は、数十種類の商品を倉庫まで運び、仕分けするよう求められました。
Aさんも「少しでも早く出発したいと焦って、積み込みやシール貼りなど荷主がすべきことを手伝わざるをえない時がある。“休憩”しているはずなのに実際は働いている。この業界は“ブラック”じゃないと回らないのか」と語ります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年1月30日付掲載
大阪のトラック運転者Bさん(56)は、月曜日の昼ころに荷物を積み込み出発。夜9時ごろに東名高速道路の海老名サービスエリア(神奈川県)に着くと、そこで仮眠。
高速道路の中で休息を取るのは、道路料金の割引のため。日付が変わる前に、高速道を降りると、割引が適用されません。車中泊したBさんは、2日目の朝5時に出発。午前中に東京近郊へ荷物を届け、帰りの荷物を別の場所で積み込んでから、ようやく大阪へ。
帰り道は、岐阜県や滋賀県のサービスエリアで仮眠。3日目の午前中に大阪に。
「睡眠は4、5時間かなあ。渋滞や雪、荷主に待たされればどんどん休息が削られる。寝ずに関東に行って、帰ることもある」
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