変貌する経済 軍事化の足音② 武器製造「誇り」と三菱
防衛省の2015年度予算の概算要求は過去最大の総額5兆545億円に膨らみました。イージス艦2隻の新造や軍事衛星の開発強化を盛り込んでいます。
自衛隊がもつイージス艦は現在6隻。IHI(旧石川島播磨重工業)による1隻を除き、5隻が三菱重工業の長崎造船所で建造されました。衛星とロケットの姿勢制御装置をつくっているのも長崎造船所です。ミサイル垂直発射装置や魚雷も製造しています。
次つぎ軍需特化
1950年代には「世界第一位の造船企業に君臨」(『長崎造船所150年史』)した三菱重工の造船所が、なぜ次つぎに生産を軍需に特化していくのでしようか。造船業を研究してきた嘉悦大学の古賀義弘名誉教授は話します。
「世界の造船業界の構造が様変わりした。その中での動きです」
第2次世界大戦後、日本の造船業界は高度経済成長の波に乗って躍進しました。
しかし80年代半ばから韓国が台頭。2000年代には中国が急成長します。日本のシェアは低下し、13年には世界の新造船建造量の7割を中国(37%)と韓国(35%)が占有するに至りました。
日本の造船業界は2010年代に新たな対応に踏み出しました。企業合併、海外進出の強化、航空・宇宙・機械工業への移行。「並行して強まったのが、造船を含む総合重機メーカーの軍事への傾斜です」
古賀さんは、代表的な企業が三菱重工だと指摘します。
「三菱重工の造船部門は、高度の建造技術を要する『高付加価値船』と、イージス艦や潜水艦などの艦艇の建造に特化して生き残る方向をめざしています。
特別に力を入れている宇宙部門は、IHIと並んで衛星打ち上げロケット分野で独占的地位を確立してきました。事実上の軍事スパイ衛星です」
歴代政権に対して軍事費の拡大と武器輸出の解禁を声高に迫ってきたのが三菱重工です。07年、同社の西岡喬(たかし)会長(当時)は「日刊工業新聞」(3月5、19日付)で述べました。
「日本は平和のために武器を輸出しないという方針であるが、世界の常識はこれとは正反対」。
「国際化」による技術力発展の「障害となっているのが武器輸出三原則に代表されるわが国の輸出管理政策である」。これは武器を日米で共同開発するうえでの「足かせとなっており、日米同盟の趣旨に反している」。
「必要な装備に対する予算はなんとしても確保いただくことが必要である」。「防衛は国家の根幹であり、これに携わる企業も真に誇らしい仕事」をしているのだから、「我々がむしろ積極的に問題提起していかなければならない」。
樹木の陰に隠れて建つ三菱重工業の魚雷発射実験施設(堂崎工場)=10月8日、長崎県西彼杵郡長与町
解禁を財界歓迎
安倍政権が武器輸出を解禁した4月1日に、経団連の米倉弘昌会長(当時)は「大いに歓迎する」とコメントを発表。「防衛装備の移転(輸出)に係わる案件が決まることを期待したい」と表明しました。
武器の輸出で利益をあげ、生産基盤や技術力を「発展」させることは、日本の軍需産業の宿願だったのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年11月11日付掲載
新興国に造船のシェアーを奪われたからといって、なぜ軍艦などにシフトする発想が出てくるのでしょうか。
安易な方法で儲けをあげようなんて、それも国民の税金で儲けようなんて許せません。
防衛省の2015年度予算の概算要求は過去最大の総額5兆545億円に膨らみました。イージス艦2隻の新造や軍事衛星の開発強化を盛り込んでいます。
自衛隊がもつイージス艦は現在6隻。IHI(旧石川島播磨重工業)による1隻を除き、5隻が三菱重工業の長崎造船所で建造されました。衛星とロケットの姿勢制御装置をつくっているのも長崎造船所です。ミサイル垂直発射装置や魚雷も製造しています。
次つぎ軍需特化
1950年代には「世界第一位の造船企業に君臨」(『長崎造船所150年史』)した三菱重工の造船所が、なぜ次つぎに生産を軍需に特化していくのでしようか。造船業を研究してきた嘉悦大学の古賀義弘名誉教授は話します。
「世界の造船業界の構造が様変わりした。その中での動きです」
第2次世界大戦後、日本の造船業界は高度経済成長の波に乗って躍進しました。
しかし80年代半ばから韓国が台頭。2000年代には中国が急成長します。日本のシェアは低下し、13年には世界の新造船建造量の7割を中国(37%)と韓国(35%)が占有するに至りました。
日本の造船業界は2010年代に新たな対応に踏み出しました。企業合併、海外進出の強化、航空・宇宙・機械工業への移行。「並行して強まったのが、造船を含む総合重機メーカーの軍事への傾斜です」
古賀さんは、代表的な企業が三菱重工だと指摘します。
「三菱重工の造船部門は、高度の建造技術を要する『高付加価値船』と、イージス艦や潜水艦などの艦艇の建造に特化して生き残る方向をめざしています。
特別に力を入れている宇宙部門は、IHIと並んで衛星打ち上げロケット分野で独占的地位を確立してきました。事実上の軍事スパイ衛星です」
歴代政権に対して軍事費の拡大と武器輸出の解禁を声高に迫ってきたのが三菱重工です。07年、同社の西岡喬(たかし)会長(当時)は「日刊工業新聞」(3月5、19日付)で述べました。
「日本は平和のために武器を輸出しないという方針であるが、世界の常識はこれとは正反対」。
「国際化」による技術力発展の「障害となっているのが武器輸出三原則に代表されるわが国の輸出管理政策である」。これは武器を日米で共同開発するうえでの「足かせとなっており、日米同盟の趣旨に反している」。
「必要な装備に対する予算はなんとしても確保いただくことが必要である」。「防衛は国家の根幹であり、これに携わる企業も真に誇らしい仕事」をしているのだから、「我々がむしろ積極的に問題提起していかなければならない」。
樹木の陰に隠れて建つ三菱重工業の魚雷発射実験施設(堂崎工場)=10月8日、長崎県西彼杵郡長与町
解禁を財界歓迎
安倍政権が武器輸出を解禁した4月1日に、経団連の米倉弘昌会長(当時)は「大いに歓迎する」とコメントを発表。「防衛装備の移転(輸出)に係わる案件が決まることを期待したい」と表明しました。
武器の輸出で利益をあげ、生産基盤や技術力を「発展」させることは、日本の軍需産業の宿願だったのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年11月11日付掲載
新興国に造船のシェアーを奪われたからといって、なぜ軍艦などにシフトする発想が出てくるのでしょうか。
安易な方法で儲けをあげようなんて、それも国民の税金で儲けようなんて許せません。
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