きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

海プラ 汚染の“運び屋”

2021-04-20 07:03:45 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
海プラ 汚染の“運び屋”
プラスチックは軽くて安価で便利な一方、半永久的に分解されないため現在、世界中の海の表面から深海底まで廃プラスチック(プラごみ)が見つからないところはないと言われています。2010年の推計で毎年800万トン近くのプラごみが海に流出しており、このままだと50年には海のプラごみ量が魚の量を超えるとの予測もあります。また有害な化学物質の“運び屋”となって海の生態系を汚染し、食べた人間の体にも及ぼす危険性が懸念されており早急な対策が求められています。「脱プラスチック戦略推進基本法(案)」を提言した「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」に参加する日本野鳥の会、WWF(世界自然保護基金)ジャパン、日本自然保護協会に話を聞きました。
(原千拓)




日本野鳥の会自然保護室 岡本裕子さん・山本裕さん
海鳥の減少の要因に





世界で約360種の海鳥のうち110種が絶滅のおそれがあります。1950年から2010年までに海鳥の全個体数の約7割が減少しており要因の一つがプラごみです。
最も顕著な影響は海に浮かんでいるプラごみの誤飲・誤食で、消化器官の損傷や消化阻害、疑似満腹感を起こします。ひなは栄養状態の悪化で体重が減り巣立ち率の低下につながります。コアホウドリのひなの体内からはライターやペットポトルのふた、プラスチック製のスプーンやフォークなどが発見されています。



海岸に漂着した漁で使用される浮き玉や網、ロープなどの海ごみ(日本自然保護協会提供)

70年代ごろからプラスチックの増産とともにプラごみを食べる個体の割合も増えているというデータがあります。アホウドリやウミツバメなどでは5割以上の取り込みがみられます。有害化学物質を吸着した5ミリ以下のマイクロプラスチックの摂取や食物連鎖を通して有害化学物質が体内に取り込まれ脂肪に蓄積されるという報告もあります。
海鳥は卵を産めるまでに種によっては約3年かかり、1度の産卵数が1、2個と少ないため個体数が減ると回復に時間がかかります。
海洋プラスチック問題は、もはや海鳥だけの問題ではなく全世界の環境汚染として広がっています。使い捨てを前提にしたプラスチックの大量生産・大量消費を続ける限り、どんなに気をつけて回収・リサイクルしても環境への流出を食い止めることは難しいのが現状です。
肥料カプセルなどのマイクロプラスチック製品やプラスチック製の漁具は、その用途から自然環境に流出しやすく、いったん流出すると回収が困難です。自然環境へのプラごみ流出ゼロを目指す施策が必要です。


WWF(世界自然保護基金)ジャパンプラスチック政策マネージャー 三沢行弘さん
大量消費の転換必要



WWFは、政府や企業にプラスチックの大幅削減を前提とした資源循環型社会への移行を推進することを働きかけています。世界的に深刻なプラごみ問題の解決に向けた国際的な枠組みを早急につくるべきです。
問題の本質は、処理能力を大幅に上回るプラスチックの大量生産・大量消費にあります。日本では1人当たりの容器包装プラごみ発生量が世界で2番目に大きいなど無駄な消費が顕著です。まずは不必要なプラスチックの発生抑制や削減(リデュース)を最優先し、次に同じものを繰り返し使う再使用(リユース)、そして新たに製品を作り直す再生利用(リサイクル)や持続可能な素材を自然の再生能力の範囲内で使用した代替品への切り替え―と明確な優先順位をつけることが重要です。これらで対応できない場合に①熱回収②管理された埋め立てや単純焼却するという順で具体的な政策を導入するべきです。
熱回収はごみ焼却で生じた熱エネルギーを利用する処理方法です。ただプラスチックの大量生産と焼却は、二酸化炭素を発生させ地球温暖化を加速させることになるので、中長期的にはそれに頼らない制度が必要です。
欧州連合(EU)では、ストローや発泡スチロール製の容器、カップなどの使い捨てプラスチック製品10品目の販売禁止や、製造業者に漁具の回収費用を負担させる政策などがあり、日本よりも対策が大きく進んでいます。
大量生産・大量消費の仕組みを変えるには各企業の努力や企業同士の連携が必要ですが、そこに政策が果たす役割は大きい。消費者と一緒に企業と政治が立ち向かっていく大きな課題です。

日本自然保護協会事務局長 志村智子さん
自然の豊かさ後世へ



全国各地で自然の守り手を増やし自然観察のポランティアリーダーの養成を続けてきました。開発など一つの地域だけでは解決しない際には、中央省庁や政治家と改善に向けた意見交換や交渉をしています。
海では、護岸工事やダム開発で減る砂浜の保護、漂流物の採取や観察などの楽しみ方、自然の豊かさを伝える活動をしています。こうした中、砂浜でごみ拾いに明け暮れてしまう地域があるなど、各地の守り手から困り事の相談が急激に寄せられるようになりました。
打ち上がるごみは、缶やビーチグラスが減る一方でペットポトルが増えていると感じます。海草やサンゴなど海の調査は、機材や船での移動など時間や労力、資金がかかることから、海中のプラごみの回収がいかに大変で途方も無いか実感します。
一番の心配は無関心。ごみだらけの砂浜では“自分たちの故郷”という関心がなくなり守り手の減少につながります。



アホウドリと砂浜に打ち上がった海ごみ=米・ハワイ諸島ミッドウェイー環礁(OWS提供)

自然保護協会は今年で設立70周年。広大な湿原が広がる尾瀬ケ原を水力発電のためのダム開発から守る反対運動がスタートでした。世界遺産になった白神山地や小笠原諸島では「自然を残してよかった」という声を聞いてきました。
自然保護の結果は後世の人たちにしか分かりません。50年先の人たちに自然の豊かさを残すことが大事です。


「脱プラ戦略推進基本法(案)」の提言
提言ではプラスチックの生産から廃棄後まで、ライフサイクル全般における計画や施策を策定することを求めています。
具体的には、2030年までにプラごみやマイクロプラスチックの自然環境への流出ゼロ▽使い捨てプラスチック製造・輸入の原則禁止▽生産・販売者などに使い捨てプラスチック製品を無くし確実に再使用、リサイクル可能な設計を求める―などの施策の推進計画を示しています。
政府が3月9日に閣議決定した「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」などは「大量生産・大量消費・大量廃棄社会からの転換を図るものになっていない」と指摘し、提言の実現を求めていくことにしています。
「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」には23団体が加わっています。


有害物質体に蓄積
国立科学博物館動物研究部の田島木綿子(ゆうこ)研究主幹は、クジラやイルカなどのストランディング(海棲(かいせい)哺乳類が生きて座礁したり、死んで漂着した状態)個体から見えてきた深刻な状況に警鐘を鳴らしています。



ストランディングしたクジラの胃から出てきたプラこみ(国立科学博物館提供)

クジラやイルカなどのストランディングの要因について病気の観点から調査・研究している田島さんは「ポリ袋や漁具といったプラごみが国内のストランディング個体の胃から数多く出てきます。胃潰瘍や腹膜炎を起こし、胃の壁を貫いたり腸を詰まらせて腸閉塞を起こすなどの死因につながる可能性を懸念します」と指摘。海洋中の有害化学物質などを吸着したマイクロプラスチックを含む海洋プラスチックは、食物連鎖の中で最終的には海の哺乳類に蓄積します。体内に蓄積すると、免疫低下を引き起こし、健康な個体ではかからない病気にもかかりやすくなり最悪死に至るといいます。
田島さんは「スナメリの肺には寄生虫がいます。有害化学物質が体内に蓄積し免疫が低下すると、共生するはずのバランスが崩れ寄生虫が爆発的に増えて肺炎を起こし死んでしまう例があり、特に幼体で多く見られます。化学物質は脂質に溶けやすいため、お乳を介して赤ちゃんに蓄積されるからです。ストランディングの原因の一つにもなっています」と説明します。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年4月19日付掲載


地球温暖化の問題を解決しても、プラごみの問題は深刻。
海に排出されるのは、漁業の網などだけではない。マイクロプラスチック、プラスチックのカップやストローなど。
カップを紙製に変えるとか、ストローを再生可能な素材に変えるとか。
できるところから、自治体も企業も一般の人も取り組もう。

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