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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

多国籍企業と人権② 労働者・市民が前面に

2017-05-26 11:23:09 | 国際政治
多国籍企業と人権② 労働者・市民が前面に

今回の条約づくりは、国連による多国籍企業規制の3度目の挑戦となります。過去2回は、失敗に終わりました。
国連が多国籍企業の規制に取り組み始めたのは、1970年代です。「多国籍企業行動規範」(拘束力のない自発的文書)づくりを開始しました。しかし、発展途上国の多くをはじめ米国政府や日本政府などが「規制しすぎる」と反対し、この動きは、90年代に中断に追いこまれました。具体的作業をおこなっていた国連「多国籍企業センター」も廃止されました。

中断を乗り越え
2度目の挑戦は、国連人権委員会による取り組みです。「人権に関する多国籍企業およびその他の企業の責任についての規範」づくりをはじめます。企業を拘束する準条約的な文書として検討がはじまり、2003年に規範案が提案されました。
ところが、この文書案は、支持する人権擁護団体と、反対する経済団体との間で熱い議論をよびおこしました。経済団体は、「国家の責務である人権擁護を企業に転嫁するものだ」と激しく反対しました。取り組みは再び中断に追いこまれました。
2度の失敗をふまえて、拘束力のないガイドラインとして、前回で紹介した国連「グローバル・コンパクト」や「国連人権枠組み」、「国連人権指導原則」が次々と採択されていったのでした。
しかし、その後、国連担当者やNGOの間で、拘束力がないという点が弱点になっているという認識が広がるなか、条約づくりがスタートしました。3度目の挑戦の始まりです。
今回の政府間作業部会の設置と第1回会合と第2回会合の開催は、多国籍企業を規制しようとする国連にとっての3度目の挑戦となります。過去の取り組みは、発展途上国が反対するもとで失敗に終わりました。しかし、今回の挑戦は、これまで多国籍企業の規制に反対してきた発展途上国の多くが賛成しています。自国の低賃金が国際競争力の源泉と考えてきた発展途上国がその考え方を転換させたからです。
また、これまで国連の討議にあまりかかわってこなかったNGOが論戦の流れをつくるというまったく新しい状況のもとで始まりました。いま労働者・市民が新しい国際経済秩序をつくる運動の中心的プレーヤーとして国際社会におどりでています。



賃上げと安全な労働環境を求めてデモ行進する労働者=5月1日、バングラデシュ・ダッカ(ロイター)

企業人の存在も
同時に、多国籍企業内で「企業の社会的責任」(CSR)活動を推進するまじめな企業人の存在と活動も注目に値します。これらの企業人は、人権と環境などの倫理性を追求しながら、企業の違法行為や不正をただそうと努力し、国連の人権擁護のとりくみにも参画しています。ビジネス分野における人権擁護の活動は、かつてない広がりをみせようとしています。
国際社会は今日、発達した資本主義国だけでは国際経済を律することができなくなるような時代をむかえています。このような世界の構造変化に対応した新しい民主的な国際経済秩序が、切実に求められます。国際経済における民主的ルールを確立し、多国籍企業化した企業に国際的な民主的規制を行うことが、諸国民のたたかいの緊急の課題として日程にのぼる新しい時代を迎えています。人権に対する企業責任の強化を求める今日の運動は、まさにこうしたたたかいとなっています。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年5月25日


多国籍企業に規制をかける、国際的なルールづくりが、労働者もはいってつくられつつある。

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