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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

落日の東芝③ 現実見ぬ「64基受注」

2017-03-25 10:22:49 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
落日の東芝③ 現実見ぬ「64基受注」

東芝は2006年10月17日のウェスチングハウス(WH)買収説明会で、「BWR(沸騰水型軽水炉)・PWR(加圧水型軽水炉)両炉型を推進する世界のリーディングカンパニー」になると打ち出します。
買収の狙いについて、東芝の執行役専務だった庭野征夫(にわの・まさお)氏は、こう指摘しています。
「今回のウェスチングハウスの株式取得は、この高い事業ポテンシャルを世界市場に展開できる絶好の機会である」「海外を中心とした事業の拡大に取り組み、さらに強固な収益体質を確立していく決意である」(『エネルギーレビユー』06年7月号)。
このとき、原発推進という国策を錦の御旗にしていた東芝経営陣は、10年後の事態を夢にも思わなかったのでしょう。






事業環境激変
東芝は、WH買収をテコにしてグローバルな原発受注に積極的に動きだしました。
08年5月には、「2015年までに33基の受注を見込む」とした経営方針を打ち出しました。WHは、米国で原発建設プロジェクトの受注に成功。中国での原発新設計画などを受け、翌09年8月には、「2015年までに全世界で39基の受注を見込む」として目標を引き上げました。このときは、15年度の原子力事業の「売上高1兆円」をぶち上げました。
11年3月11日に発生した東日本大震災によって、東京電力福島第1原子力発電所で大事故が発生したことで、原発をめぐる事業環境が激変しました。安全規制が強化され、建設コストが拡大、工事は遅延が余儀なくされました。
このとき、WHが米国で手掛けていた原発4基の建設の追加費用をだれが負担するのかをめぐり、建設会社との間で訴訟合戦が起きます。WHは、工事の損失が表面化することを恐れ、15年10月に建設会社を買収しました。
ところが翌月、日本で開催した説明会で、東芝は、原発事業で損失が発生する可能性があることを隠す一方、今後15年間で64基の受注を目指すという計画を発表したのです。
東芝は、「原発事業の収益性は高い」「原発事業の未来は明るい」といわんばかりでした。会計評論家の細野祐二氏は、「国策に基づいた誇大宣伝だった」と指摘します。

米国からくぎ
東芝は3月14日、記者会見を開き16年4~12月期決算を再延期することを明らかにしました。上場企業による2度の延期は極めて異例です。この会見で、経営危機の根源であるWHの非連結化を目指す方針を表明しました。WHの米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の申請に関し、綱川智(つなかわ・さとし)社長は、「選択肢」に入っていることも明らかにしました。しかし、「決まったものはない」とも述べました。再建をめぐり紆余(うよ)曲折が避けられない状況が続きます。
16日、ワシントンを訪問していた世耕弘成経済産業相は、会談したロス商務長官とペリー・エネルギー長官の両長官から「米国で原発を建設しているWHの親会社である東芝の財政的安定性は、米国にとって非常に重要だ」とくぎを刺されました。
トランプ米政権からの圧力の下、東芝再建へ公的資金の投入すらもささやかれ始めました。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年3月21日付掲載


福島第1原発の事故が起こる前さえ、大ぶろしきを広げた原発建設計画。
しかも、事故後も基本的に見直すことをしなかった異常さ。
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