けいざい四季報⑤ 原発 基本計画案に「重要電源」
ポイント
①安倍政権がエネルギー基本計画の政府案を決定。閣議決定へ議論ヤマ場
②東電の再建計画を承認。被害者切り捨て福島事故に際限のない国費投入
③原発推進勢力の動きが活発化。一方で政権と東電に市民の反撃が広がる
安倍晋三政権は2月25日に原子力関係閣僚会議を開き、エネルギー基本計画の政府案を決定しました。
与党内に異論
昨年末に経済産業省審議会が策定した案は、原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけ、核燃料サイクルについても「着実に推進する」と明記していました。安倍政権は当初、年明けの閣議決定を狙っていましたが、国民の圧倒的な反対世論に加え、与党内からも異論が相次ぎました。
政府案は原発の位置づけを「重要なベースロード電源」と書き換え、核燃料サイクルについては「着実に」を削除しました。原発推進の本質は変わりません。閣議決定に向け、与党内での議論が大詰めを迎えています。
安倍政権が昨年末に閣議決定した福島復興に向けた新指針は、東京電力を延命させたまま、福島第1原発事故の賠償・除染費用に、際限なく国費を投入することを打ち出しました。来年度予算に汚染土壌の中間貯蔵施設費1012億円を計上。今後30年間かけ1・1兆円を投じる計画です。
東京電力福島第1原発の中央制御室=10日(ロイター)
再稼働を推進
東電は新指針の閣議決定に合わせて再建計画案を発表。被害者を置き去りにし、国費投入と早期の原発再稼働を当て込んだ無責任なこの再建計画を、安倍政権は1月15日に認定しました。
安倍政権はまた、原子力規制委員会が実施している審査の迅速化を要求。規制委は3月13日、九州電力川内原発(鹿児島県)を優先的に審査することを決定しました。
「原発利益共同体」の動きも活発化しています。1月には電気事業連合会が、原発を重要な電源と位置づけるよう求める文書を自民党の国会議員に配っていたことが発覚。同党が所属の国会議員を対象に実施していたエネルギー政策に関するアンケートの「模範回答」とみられます。
政府は、原発停止で化石燃料の輸入が増え、年間3・6兆円の国富が流出しているといいます。実際には化石燃料の輸入額増加は、円安や投機による燃料高騰が大きな役割を果たしています。
(グラフ)
福島第1原発では2月20日、基準の380万倍という高濃度の汚染水の大量流出が発覚。3月日には試運転中の汚染水浄化装置が全停止するなど、トラブルが相次いでいます。事故収束の見通しは全く立っていません。
賠償求め訴訟
反撃も広がっています。福島原発事故の被害者を切り捨てようとする動きに対し、全国各地で「国と東電の責任を明らかにし、完全な賠償を実現する」(福島原発かながわ訴訟第3次原告団声明)ことを求めた訴訟が起きています。
再生可能エネルギーへの転換に向けた「市民発電所」のネットワーク化も進んでいます。1月に関西中心の約30団体が「市民・地域共同発電所全国連絡会」を、2月に首都圏中心の約50団体が一「市民電力連絡会」を結一成。3月にも約40団体からなる「全国ご当地エネルギー協会」(仮称)の発起人総会が開かれました。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年3月29日付掲載
ポイント
①安倍政権がエネルギー基本計画の政府案を決定。閣議決定へ議論ヤマ場
②東電の再建計画を承認。被害者切り捨て福島事故に際限のない国費投入
③原発推進勢力の動きが活発化。一方で政権と東電に市民の反撃が広がる
安倍晋三政権は2月25日に原子力関係閣僚会議を開き、エネルギー基本計画の政府案を決定しました。
与党内に異論
昨年末に経済産業省審議会が策定した案は、原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけ、核燃料サイクルについても「着実に推進する」と明記していました。安倍政権は当初、年明けの閣議決定を狙っていましたが、国民の圧倒的な反対世論に加え、与党内からも異論が相次ぎました。
政府案は原発の位置づけを「重要なベースロード電源」と書き換え、核燃料サイクルについては「着実に」を削除しました。原発推進の本質は変わりません。閣議決定に向け、与党内での議論が大詰めを迎えています。
安倍政権が昨年末に閣議決定した福島復興に向けた新指針は、東京電力を延命させたまま、福島第1原発事故の賠償・除染費用に、際限なく国費を投入することを打ち出しました。来年度予算に汚染土壌の中間貯蔵施設費1012億円を計上。今後30年間かけ1・1兆円を投じる計画です。
東京電力福島第1原発の中央制御室=10日(ロイター)
再稼働を推進
東電は新指針の閣議決定に合わせて再建計画案を発表。被害者を置き去りにし、国費投入と早期の原発再稼働を当て込んだ無責任なこの再建計画を、安倍政権は1月15日に認定しました。
安倍政権はまた、原子力規制委員会が実施している審査の迅速化を要求。規制委は3月13日、九州電力川内原発(鹿児島県)を優先的に審査することを決定しました。
「原発利益共同体」の動きも活発化しています。1月には電気事業連合会が、原発を重要な電源と位置づけるよう求める文書を自民党の国会議員に配っていたことが発覚。同党が所属の国会議員を対象に実施していたエネルギー政策に関するアンケートの「模範回答」とみられます。
政府は、原発停止で化石燃料の輸入が増え、年間3・6兆円の国富が流出しているといいます。実際には化石燃料の輸入額増加は、円安や投機による燃料高騰が大きな役割を果たしています。
(グラフ)
福島第1原発では2月20日、基準の380万倍という高濃度の汚染水の大量流出が発覚。3月日には試運転中の汚染水浄化装置が全停止するなど、トラブルが相次いでいます。事故収束の見通しは全く立っていません。
賠償求め訴訟
反撃も広がっています。福島原発事故の被害者を切り捨てようとする動きに対し、全国各地で「国と東電の責任を明らかにし、完全な賠償を実現する」(福島原発かながわ訴訟第3次原告団声明)ことを求めた訴訟が起きています。
再生可能エネルギーへの転換に向けた「市民発電所」のネットワーク化も進んでいます。1月に関西中心の約30団体が「市民・地域共同発電所全国連絡会」を、2月に首都圏中心の約50団体が一「市民電力連絡会」を結一成。3月にも約40団体からなる「全国ご当地エネルギー協会」(仮称)の発起人総会が開かれました。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年3月29日付掲載