カミナリ様の不思議⑦
「まいど衛星」に観測装置を搭載 宇宙から雷を観る
大阪大学大学院教授 河崎善一郎
今年1月23日午後0時54分、種子島のJAXA(宇宙航空研究開発機構)射場から、地球観測衛星いぶきの相乗り衛星として「まいど衛星」が宇宙へと旅立った。「まいど衛星」は、マスコミに派手に取り上げられており、東大阪中小企業発の衛星として良く知られている。しかし我々大阪大学の雷放電研究グループが関わってきたことはあまり知られていない。
実は、東大阪の中小企業家たちが人工衛星を打ち上げようと頑張っていたけれど、その衛星で何をするのかという、衛星の使用目的(ミッション)が決まっていなかった。それゆえ「雷放電を宇宙から観測するというミッションで!」を提案し、まいど衛星に搭載するための、俗称「雷センサー」の製作に関わってきた。
元々我々のグループは、VHF広帯域干渉計という、雷放電進展様相の可視化装置(雷を観る装置)を設計・製作して、野外観測を国内外で実施してきた。この装置は100万分の1秒という時間分解機能で、雷放電に伴って放射される電波の位置を推定する装置である。推定したそれらの位置を時間順に並べると、写真で写した稲妻の形状となる。つまり雷放電を電磁波で観る装置といえよう。
最近では実用的と自信を持って言えるほどまでに機能を高めてきており、研究者の常として、「それなら宇宙空間からの観測を!」との考えが頭をもたげ、それがまいど衛星プロジェクトに関わった本当の理由である。ただ、衛星搭載用の装置に仕上げるのは容易でないことば当然で、まいど衛星製作に指導的役割を務めていたJAXA小型衛星チームみんなに、次のような本音をぶつけた。
「我々阪大グループはいわばタクシー待ちの客。衛星というタクシーをひたすら待ちながら観測装置を作っています。作ることには自信もあり真摯に取り組みますので、御指導をよろしく」。そんな、本音の申し出が功を奏したのだろう、JAXAチームの物心両面での支援を得ることができ、今回の快挙に繋がった。
とはいえ「まいど衛星」に搭載した我々の装置は単体であり、宇宙から放電路を可視化する干渉計とするには、複数の受信機を搭載せねばならない。今回は受信機は1台だ。我々の製作した受信装置が、宇宙空間で仕様通り機能することを確認したに過ぎない。
今後の予定としては2012年に宇宙ステーション実験棟「きぼう」に干渉計として取り付けることが決まっており、「宇宙から雷を観る」という夢の実現を目指して、もう一踏ん張り、二踏ん張りをと老骨に鞭を打つ毎日である。そしていつの日か読者の皆様方に、その成果をお見せすることを約束して稿を終えたい。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2009年8月5日付より転載
「まいど衛星」に観測装置を搭載 宇宙から雷を観る
大阪大学大学院教授 河崎善一郎
今年1月23日午後0時54分、種子島のJAXA(宇宙航空研究開発機構)射場から、地球観測衛星いぶきの相乗り衛星として「まいど衛星」が宇宙へと旅立った。「まいど衛星」は、マスコミに派手に取り上げられており、東大阪中小企業発の衛星として良く知られている。しかし我々大阪大学の雷放電研究グループが関わってきたことはあまり知られていない。
実は、東大阪の中小企業家たちが人工衛星を打ち上げようと頑張っていたけれど、その衛星で何をするのかという、衛星の使用目的(ミッション)が決まっていなかった。それゆえ「雷放電を宇宙から観測するというミッションで!」を提案し、まいど衛星に搭載するための、俗称「雷センサー」の製作に関わってきた。
元々我々のグループは、VHF広帯域干渉計という、雷放電進展様相の可視化装置(雷を観る装置)を設計・製作して、野外観測を国内外で実施してきた。この装置は100万分の1秒という時間分解機能で、雷放電に伴って放射される電波の位置を推定する装置である。推定したそれらの位置を時間順に並べると、写真で写した稲妻の形状となる。つまり雷放電を電磁波で観る装置といえよう。
最近では実用的と自信を持って言えるほどまでに機能を高めてきており、研究者の常として、「それなら宇宙空間からの観測を!」との考えが頭をもたげ、それがまいど衛星プロジェクトに関わった本当の理由である。ただ、衛星搭載用の装置に仕上げるのは容易でないことば当然で、まいど衛星製作に指導的役割を務めていたJAXA小型衛星チームみんなに、次のような本音をぶつけた。
「我々阪大グループはいわばタクシー待ちの客。衛星というタクシーをひたすら待ちながら観測装置を作っています。作ることには自信もあり真摯に取り組みますので、御指導をよろしく」。そんな、本音の申し出が功を奏したのだろう、JAXAチームの物心両面での支援を得ることができ、今回の快挙に繋がった。
とはいえ「まいど衛星」に搭載した我々の装置は単体であり、宇宙から放電路を可視化する干渉計とするには、複数の受信機を搭載せねばならない。今回は受信機は1台だ。我々の製作した受信装置が、宇宙空間で仕様通り機能することを確認したに過ぎない。
今後の予定としては2012年に宇宙ステーション実験棟「きぼう」に干渉計として取り付けることが決まっており、「宇宙から雷を観る」という夢の実現を目指して、もう一踏ん張り、二踏ん張りをと老骨に鞭を打つ毎日である。そしていつの日か読者の皆様方に、その成果をお見せすることを約束して稿を終えたい。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2009年8月5日付より転載