黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『つくもがみ貸します』畠中恵(角川書店)

2007-10-10 | 読了本(小説、エッセイ等)
お紅と清次の姉弟……清次は、お紅の叔父が跡取にする為、知人から引き取った子供で、お紅は両親亡き後、叔父の元に引き取られた為に実際の血のつながりはなく、清次はお紅に密かな思いを寄せている……が、深川で営む古道具屋兼損料屋・出雲屋。
彼らの店には、齢百年を経て“付喪神”となった品物たちがたくさんいて、他所で聞いてきたいろいろな話を語る連作短編集。

遊女たちの夜着を回収の為、茶屋を回っていた清次は、馴染み客である遊女・おきのに出会う。彼女は客で武家の次男・佐久間勝三郎と一緒にいたが、彼は清次に相談したい事柄があるという。聞くと、勝三郎には婿入り話があり、実家よりも格式が高い婿入り先・蜂屋家から、長男が代々受け継ぐという鼠の根付けを贈られたが、盗賊に押し入られた際に消えてしまったという。しかも、盗まれたのではなく、その鼠の根付けがすごい勢いで走り去った、という勝三郎。それを探し出して欲しいと頼まれた清次は……『利休鼠』、
かつて人であった裏葉柳は、思い人がありながら若くして亡くなる心残りから、たまたま側にあった青磁の香炉に憑いた妖。深川で新しく始めるという料理屋・鶴屋の元に、出雲屋から貸し出されていた裏葉柳は、そこが幽霊が出ることで有名な物件だという話を聞いてきた。それを聞いた清次は、知らずに店を買った様子の鶴屋にそれとなく伝えるのだが……『裏葉柳』、
お紅がその行方を気にする香炉“蘇芳”とその持ち主。鶴屋に来た客のひとりが、その名と同じ俳号を持つ梅島屋という青年であったという話を聞いてきた、金唐革の財布・唐草。その話を聞いた清次は、翌日鶴屋に出かけるが、鶴屋自身は彼の店の場所までは知らなかった。そこへ折りよく、彼を知る浅川屋が現れた。お紅が探している“蘇芳”こと飯田屋佐太郎に会いたいと話すと、何故か協力してくれ……『秘色』、
お紅の実家であった、日本橋の古道具屋・小玉屋にいた帯留・黄君が出雲屋に……お紅と“蘇芳”にまつわる過去の話を語る。唐物屋を営む飯田屋の息子・佐太郎は、お紅に思いを寄せていたが、飯田屋では既に大店の娘との縁談話が持ち上がっていた。当然、お紅と佐太郎との仲を認めない、佐太郎の母・十女は、お紅にひとつの櫛を手し、それを元手に大金を作ることができれば認めてやる、と一方的に言い渡し……『似せ紫』、
行方をくらましていた佐太郎が、財産を成して江戸に戻って来たという噂を聞いた清次たち。しかし迎えに来るといっていたお紅の元には顔を見せてはいなかった。その噂を聞いた翌日、出雲屋に十女がやってきて、佐太郎がきていないかという。どうやら飯田屋からも再び姿を消したらしく……『蘇芳』の5編収録。

付喪神たちはいろんなことを語るけれど、基本的に清次たち人間とは直接会話しない(でも清次たちは彼らの声は聞こえていて、彼らも自分たちの声を清次たちが聞いているのを知っている)という関係を保っているところが、“しゃばけ”に出てくる妖たちとは違うところでしょうか(『神』と付いている分、プライドが高い?/笑)。
ちょっと切ない感じも漂いつつも、清次とお紅の仲はほのぼのしてて良いですね~。

<07/10/10>