黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『サクリファイス』近藤史恵(新潮社)

2007-10-03 | 読了本(小説、エッセイ等)
高校時代、陸上選手として将来を嘱望されていた白石誓。しかし、ある日たまたま見た自転車のロードレースに心惹かれ、大学からその道へと転向していた。
そして現在、国産自転車フレームメーカーがスポンサーとなっている、プロチーム<チーム・オッジ>に所属して2年目。
チームには、選手としては高齢な33歳でありながら、いまだ<エース>としてトップを走り続ける石尾豪、そして誓の同期で<エース>候補の伊庭和実がおり、誓は<アシスト>として<エース>をサポートする立場となっていた。
そんな中、<ツール・ド・ジャポン>に出場した誓は、思いがけずに好成績を収めることになり、スペインの有名チームにも注目される存在に。
しかし周囲の人々からは、石尾の<エース>としてのプライドの高さ、それ故にその地位を脅かす存在を許さないらしいことを忠告され、3年前に起きた<エース>候補・袴田の身に起きた“事故”とそれにまつわる疑惑について知ることに……

自転車のレースといっても、ただそれぞれに走る訳ではなく、チームとして<エース>を勝たせることが絶対で、その為にはそれ以外の<アシスト>は捨石のごとく使われ、タイヤや車体を奪われるのさえ当たり前、という勝負の世界が舞台。
……そして、そんな世界に生きる<精神>を見事に具現化し、ミステリと融合させた傑作でした。

<07/10/3>