く~にゃん雑記帳

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<林美智子> 表情豊かに「平城山」やカルメン「ハバネラ」など

2014年03月03日 | 音楽

【秋篠音楽堂でメゾソプラノ・リサイタル】

 豊かな歌唱力で人気の高いメゾソプラノ、林美智子のリサイタル(「秋篠うたくらぶ」10周年記念)が2日、奈良市の秋篠音楽堂で開かれた。ピアノ伴奏は指揮者としても注目を集める河原忠之(国立音楽大学・大学院准教授)。林は艶のある伸びやかな歌唱で「早春賦」や「平城山」、歌劇「カルメン」の「ハバネラ」など和洋の唱歌や歌曲など23曲(アンコール2曲を含め)を歌い上げた。

   

 林はこれまでにチョン・ミュンフン、故若杉弘など著名指揮者やオーケストラと共演を重ね、2005年からは「NHKニューイヤーオペラコンサート」に連続出演し幅広い人気を集める。家庭に戻れば双子の男の子(4歳?)の母親。心身ともに充実し、今最も脂の乗ったオペラ歌手の1人だろう。林が純白のドレスで登場すると舞台がぱっと華やいだ。

 プログラムは1部前半が「早春賦」「赤とんぼ」「お菓子と娘」「平城山」などおなじみの日本の歌6曲。時に目を真ん丸に見開いて明るく、時に遠くを見つめて悲しげに切々と歌う。いずれも感動的な熱唱。とりわけ「平城山」の朗々とした深みのある〝ベルベットトーン〟にはうっとりさせられた。

 1部後半は武満徹作詞・作曲の「小さな空」に始まり、その後に谷川俊太郎作詞・武満徹作曲の歌曲を中心に置く構成。その1曲「死んだ男の残したものは」は繊細かつ力強い歌唱が印象的だった。林が「敬愛してやまない」というピアノの河原との呼吸もぴったり。1部の最後は武満作詞・作曲の「翼」で締めくくった。「風よ雲よ陽光(ひかり)よ 夢をはこぶ翼……」

 2部はがらりと趣向を変え歌劇のアリアやフランスの歌曲が中心。まず今や林の当たり役といわれるオペラ「カルメン」より「ハバネラ」を披露した。林が客席後部から緑色のドレスで登場し、男性客を見つめて歌うたびに会場が沸いた。この後、プーランクの「パリへの旅」や「ホテル」、マスネの「エレジー」、サティの「ジュ・トゥ・ヴ」、サン=サーンスの歌劇「サムソンとデリラ」より「あなたの声に心は開く」と続いた。

 アンコールは「市の花屋」と「この道」。消え入るように「この道」を歌い終えた林が両指でそっと涙をぬぐい、舞台から下がる時にもまた指を目に当てる姿が印象に残った。林が奈良を訪れたのは中学時代以来という。奈良入りした前日には小雨の中、「伎芸天立像」で有名な秋篠寺を訪ねたそうだ。これを機にまた奈良に来て、第一級の歌声を披露してくれることを期待したい。


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