く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<キリ(桐)> 花・葉をデザインした〝桐紋〟は日本政府の象徴

2016年04月26日 | 花の四季

【名前は「切り」から? 材は箪笥、下駄、琴など様々な木工品に】

 ゴマノハグサ科(ノウゼンカズラ科とも)の落葉高木。生長が速く、直立した幹は高さが10m以上にもなる。5月ごろ、葉に先立って枝先にブドウの房のような大きな円錐花序を立て、うす紫色の筒状唇形花をたくさん付ける。原産地は解明されていないが、中国説が有力という。その中国では古くから瑞鳥の鳳凰がすむ、めでたい樹木とされてきた。

 キリ属の学名「パウロヴニア」は医師・植物学者シーボルトの支援者だったオランダ王妃アンナ・パヴロヴナ(1795~1865)の名前に因む。和名の語源には「切り」や「木理」など諸説。キリは生長が速く切ってもすぐ新芽を出す。そのためキリの栽培では植えて2~3年目に根元から台切りし強い萌芽を育てるという。それが「切り」説の根拠になっている。一方の「木理」説は木目が美しいことによる。

 キリの材は軽い、狂いや割れが少ないなど優れた性質を持つ。このため家具や下駄、琴、茶器、羽子板、漆器、卓球のラケット、釣りの浮きなど様々な木工品に利用されてきた。中でも桐の箪笥(たんす)は高級家具の代名詞にもなっている。大阪泉州、名古屋、春日部(埼玉県)、加茂(新潟県)の桐箪笥は国指定の伝統的工芸品産地。かつては娘が生まれるとキリの苗木を植え、嫁ぐときにそのキリで箪笥を作って持たせたともいわれた。

 高貴な紫色の花を付けるキリは古くから愛され、清少納言は枕草子で「紫に咲きたるはなほをかし」(35段)と称えた。源氏物語第1巻の「桐壺」も宮中にキリが植えられていたことに由来する。花と葉をデザインした桐紋は菊花紋とともに日本を代表する紋章でもある。後醍醐天皇は足利尊氏に桐紋を下賜し、室町幕府15代将軍足利義昭も織田信長に桐紋を与えた。豊臣秀吉の「五七桐」は〝太閣紋〟と呼ばれることでも有名。桐紋は武士にとってまさに垂涎の的だった。

 「五七桐」は葉の上中央に7つ、左右に5つの花を配した紋様。現在でもその桐紋は日本政府・内閣の紋章になっている。法務省や皇宮警察の紋章は「五三桐」。そのため法務省が管轄する司法書士の徽章(バッチ)にも「五三桐」がデザインされている。桐紋はもっと身近なところにも。小銭入れの中にある500円硬貨だ。キリは岩手県の県花になっている。「あを空を時の過ぎゆく桐の花」(林徹)


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