【沖縄など亜熱帯~熱帯に広く分布、葉は敷物やかごなどの材料に】
タコノキ科タコノキ属(パンダヌス属)の常緑樹。奄美大島~沖縄から台湾、東南アジア、太平洋諸島まで亜熱帯~熱帯地域に広く分布する。タノノキ属は「蛸の木属」。海岸のそばで群落をつくることが多く、横に伸びた枝からタコの足のように支柱根を垂らす。樹高は3~6mほど。幹にはリング状に落葉痕が並ぶ。
雌雄異株で、夏に開花する。雄株は長さ20~30cmの太い肉穂花序を垂れ気味に伸ばし、芳香のある白い小花を密に付ける。雌株は松かさ状の球形の頭状花序。果実は数十個の核果からなる集合果で、直径は20cmほど。一見パイナップルに似て、初めは緑色だが熟すと黄色くなる。かつては食べる習慣もあったらしいが、ほとんどが繊維質のため食用にはあまり向かないという。完熟すると核果はバラバラになって落ち、これをヤシガニが好んで食べるそうだ。
葉は細長い剣状で長さが1mから1.5mにもなる。硬い革質で、縁と裏側真ん中の葉脈上には鋭い棘。中には棘のない種類もあり「トゲナシアダン」と呼ばれる。アダンをはじめタコノキ属の植物はその葉が屋根葺きや敷物、籠、パナマ帽などの材料として利用されてきた。沖縄諸島でもアダンの葉を編んでござやぞうりなどが作られていたという。
同属の仲間には小笠原諸島固有種の「タコノキ」をはじめ、沖縄や南洋諸島に広く分布する「シマタコノキ」、高さが30mにもなる「オオタコノキ」、葉の幅・長さが短めの「イトバタコノキ」や「ヒメタコノキ」などがある。つる状の低木で崖や樹木をよじ登る「ツルアダン」はアダンとは別属のツルアダン属。
中島みゆき作詞・作曲の歌に『阿檀の木の下で』がある。以下はその一部。「♪陽は焼きつける 阿檀は生きる 大地を抱いて阿檀は生きる 山の形は雨風まかせ 島の行方は波風まかせ 遠い昔にこの島は 戦軍(いくさ)に負けて貢がれた だれもだれも知らない日に決まった だれも知らない木の根の下は 主(ぬし)の見捨てた貝殻ばかり」。(写真は沖縄県恩納村の「万座毛」で)
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