【アジア南部原産、「文旦(ブンタン・ボンタン)」とも】
ミカン科ミカン属の常緑低木。原産地はマレー半島やインドネシアなどといわれ、中国南部や東南アジアで広く栽培されている。日本への渡来時期ははっきりしないが、一般的には江戸時代初期に中国から渡ってきたといわれる。日本での主な栽培地は四国の高知や九州南部の鹿児島、熊本などで、生食のほか砂糖漬け、ジャム、マーマレードなどに加工されている。
5月頃、径3~8cmほどの真っ白い花を付け周辺に甘い香りを漂わせる。花弁は肉厚で4~5枚。葉には光沢があり10~15cmと長い。果実は柑橘類の中で最も大きく、11~12月頃に収穫期を迎える。ザボンにも土佐文旦、阿久根文旦、平戸文旦、河内晩柑、安政柑など様々な品種があるが、その中でとりわけ大きいのが熊本県八代地方で栽培されている「晩白柚(ばんぺいゆ)」。2015年には県立八代農業高校で収穫されたものがギネスブックで世界最重量として認定された。その重さは4859.7gでバスケットボールよりも大きい。
ザボンの語源は一説によるとポルトガル語のzamboaで、初め「ザンボア」や「ザンボ」と呼ばれ、転じて「ジャボン」、さらに「ザボン」になったという。漢字表記の「朱欒」は漢名から。別名の「文旦」は江戸時代に鹿児島県阿久根市に漂着した中国商船の船主「謝文旦」の名前に由来する。この船主が薩摩藩に助けられたお礼に果物のザボンを贈ったという。ザボンという言葉自体もその船主名の前2文字「謝文」から来ているとの見方もあるそうだ。
鹿児島をはじめ九州ではブンタンではなくボンタンと呼ぶことも多い。鹿児島発の銘菓として有名な「文旦飴(ボンタンアメ)」は90年以上前の1924年(大正13年)に発売され、今も全国の駄菓子屋などで売られている。その飴菓子に果汁エキスとして使われているのが、鹿児島県阿久根市を主産地とする果肉が赤紫色の「阿久根文旦」。同市ではボンタンを市の木にも制定し、市民ランナーがボンタンの実る阿久根路を駆け抜ける「あくねボンタンロードレース」を開いている。昨年も12月3日に34回目の大会を開いた。
晩白柚の主産地、熊本県八代市も2008年に晩白柚を市の木と定めた。地元の日奈久温泉では大きな晩白柚を湯船にプカプカ浮かばせる〝晩白柚風呂〟が冬の風物詩になっている。2009年には市営日奈久温泉センターが「ばんぺい湯」の愛称でリニューアルオープンした。地元バス会社は八代市街と熊本空港を結ぶリムジンバス「すーぱーばんぺいゆ号」を運行している。ちなみに晩白柚の晩は晩生、白は果肉の色、柚は中国語でザボンを指すそうだ。「べつとりと昏(く)るる内海ザボン咲く」(山下淳)
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