く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ナンバンギセル(南蛮煙管)> ススキの根元に寄り添う〝思い草〟

2013年09月14日 | 花の四季

【光合成できない寄生植物、栄養分は全てススキの根から】

 実に個性的で不思議な植物だ。ハマウツボ科の1年草で、9月から10月にかけて主にススキの根元のそばで20cmほどの花柄を伸ばし、その先に淡い紅紫色の花を一つずつ付ける。寄生植物の代表格で、葉が退化し葉緑体を持たないため光合成ができない。そのため、栄養分は全てススキから吸収する。ススキのほかサトウキビやミョウガなどにも寄生する。

  大きなススキの株のそばにちょこんと生えるため、見つけるのはなかなか容易ではない。以前ある公園で「もう咲いているはず」と聞いて、懸命に探したが徒労に終わったこともあった。一風変わった名前は筒状の花の形が、南蛮人(外国人)の船員が口にくわえたマドロスパイプのように見えることから。「キセルソウ(煙管草)」や「オランダキセル」の別名もある。

 ややうつむき加減に物思いにふけるような花姿から「オモイグサ(思い草)」とも呼ばれる。万葉集にも1首だけ「思ひ草」の名前で登場する。「道の辺の尾花が下の思ひ草 今さらさらに何をか思わむ」(詠み人知らず)。道端の尾花の下に生えている思ひ草のように、今さら何を思い悩みましょうか(私が思っているのはあなただけです)――。この「思ひ草」についてはリンドウやツユクサなど諸説あったが、今では上の句の「尾花(ススキ)が下に」からナンバンギセルが定説になっているそうだ。

 同じ仲間に大型のオオナンバンギセルとやや小型のヒメナンバンギセル。オオナンバンギセルは「オオキセルソウ」「ヤマナンバンギセル」ともいわれ、ヒカゲスゲやヒメノガリヤスに寄生する。ヒメナンバンギセルの宿主は主にクロヒナスゲ。ナンバンギセルを県レベルでみると長野で絶滅し、山形、埼玉、石川など5県で絶滅危惧種または準絶滅危惧種になっている。オオナンバンギセルはさらに深刻で、愛知で絶滅し16県で絶滅危惧種に指定されている。「照り翳(かげ)り南蛮ぎせるありにけり」(加藤楸邨)。


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