【ロケ地はウクライナ南部のヘルソン州】
戦争で引き裂かれた新婚夫婦の悲哀を描いた古典的名画「ひまわり」(ヴィットリオ・デ・シーカ監督)が再び注目を集めている。この映画を象徴する場面が地平線まで広がる広大なひまわり畑。そのロケ地がいまロシアの軍事侵攻を受けているウクライナ南部のヘルソン州だったからだ。ロシア軍は3月15日、ヘルソン州全体を掌握したと発表した。映画の公開は1970年。東西冷戦時代に、西側の映画としては初めて旧ソ連でロケが敢行された(ウクライナの独立は1991年)。随分久しぶりにDVDを借りて視聴した。バックに繰り返し流れるヘンリー・マンシーニの切ないメロディーが切々と心に染みた。
第二次世界大戦中、ジョバンナ(ソフィア・ローレン)と結婚したばかりのアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)はイタリアからソ連戦線に送り込まれる。やがて終戦。ところがアントニオは戻ってこない。そのためウクライナへ探しに向かうが、そこで残酷な現実を目にする。夫は地元の女性と所帯を持って娘までもうけていた。それだけでは終わらない。しばらくしてアントニオは事情を説明するためイタリアでジョバンナに再会する。だがジョバンナは既に別の男性と新生活を始めていた。しかも二人の間には男児も。「名前は?」とアントニオ、それにジョバンナは「アントニオ」と答える。忘れられない元夫の名前を息子に付けていたのだ――。
ひまわりはウクライナを象徴する花で国花になっている。世界最大のひまわり油の生産国でもある。ウクライナの青と黄2色の国旗は青が青空、黄色は麦またはひまわりを表しているという。映画の中でひまわり畑での印象的な場面がある。そこに案内した男性がジョバンナに話しかける。「ひまわりやどの木の下にも麦畑にもイタリア兵とロシア人捕虜が埋まっています。そして無数の農民、老人、女、子ども……」。そして「あきらめなさい」と諭すが、ジョバンナは「いいえ、必ずどこかにいます」と答える。この映画がいま全国各地で上映されており、市民団体などによるものを含めると約80カ所に上るそうだ。公開からほぼ半世紀。監督や出演者はロシアによる侵攻というこんな状況下で再注目を集めるなど、とても想像していなかったに違いない。
【民族楽器奏者のグジー姉妹、支援訴え各地で演奏】
国内ですぐ思い浮かぶウクライナ出身者といえば、民族楽器「バンドゥーラ」の奏者で〝ウクライナの歌姫〟として知られるナターシャ・グジーさん(写真=公式サイトから借用)。6歳のときチェルノブイリの原発事故に遭い、2000年に日本に移住してから音楽活動に取り組んできた。伸びやかな透明感のある歌声と哀愁を帯びた弦の響きで人気を集めている。また妹のカテリーナ・グジーさんも姉を追うように来日し、同様に歌手・バンドゥーラ奏者として活躍中。3月21日には二人の母親が戦火を逃れ避難していたポーランドから来日した。カテリーナさんが空港で出迎えたときの様子は「涙の再会」としてニュースにもなった。その日、ナターシャさんは東京・代々木公園での反戦集会で、故郷に思いをはせながらきれいな日本語で「ふるさと」を歌ったそうだ。ナターシャさんのユーチューブでの演奏(さだまさしの「秋桜」「防人の詩」など)は何度聴いても心が打たれる。
ウクライナでヨーデルの天才少女として有名なのがソフィア・ニキチェンコさん。小さい頃から数々のコンテストに出場し、全ウクライナ少年芸術祭では大賞を受賞。2017年に出場したオーディション番組「ゴッド・タレント」はユーチューブ視聴回数が1000万回を大きく突破している。その歌声と可愛らしい容姿はまるでアニメの「アルプスの少女ハイジ」。日本からも「ソフィアちゃん、大丈夫かなあ?」と心配する声が出ているが、ネットには「今はポーランドに避難していて無事」という書き込みもあって一安心。なにはともあれ一刻も早い終戦を願うばかりだ。
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