【佐渡・大野亀に大群落。ニッコウキスゲも同じ仲間】
ユリ科ワスレグサ属の総称。中国産のホンカンゾウをはじめ、日本各地の山野に自生する一重咲きのノカンゾウ、八重咲きのヤブカンゾウ、赤みの強い黄花のベニカンゾウ、小型で庭植えに向いたヒメカンゾウ、海岸に自生するハマカンゾウなどがある。ゼンテイカ(禅庭花、通称ニッコウキスゲ)や夜咲きのユウスゲなども同じ仲間。同じ発音のカンゾウ(甘草)と混同されやすいが、これはマメ科の薬用植物。
カンゾウはユリに似た黄色の6弁花。その多くは朝咲いて夕方にしぼむ。このため欧米では「daylily(デイリリー)」と呼ばれる。「ヘメロカリス」ともいわれるが、これもギリシャ語の「hemera(一日)」と「callos(美)」に由来する。和名のカンゾウは漢名の「萱草」の音読み。中国の古書「文選」には「憂いを忘れさせる草」と記されており、「忘憂草」ともいわれる。それが日本に伝わって万葉の時代から「ワスレグサ」として歌に詠まれた。「萱草(わすれぐさ)我が紐に付く香具山の古(ふ)りにし里を忘れむがため」。大伴旅人は任地大宰府で故郷を偲んでこう詠んだ。
平安時代の「和名抄」には万葉仮名の「和須禮久佐」として登場する。萱草、忘れ草は夏の季語。俳句にも多く詠まれている。正岡子規の歌に「萱草やこゝに芽をふく忘草」「湯治場や黄なる萱草得て帰る」。その子規と大学の同窓生で親友だったのが夏目漱石。漱石は自作の俳句の批評を求めるため子規に句集などを送っていたが、その中に「生れ代わるも物憂からましわすれ草」という句も含まれていた。
カンゾウの国内最大の群落として知られるのが新潟・佐渡の景勝地、大野亀。「トビシマカンゾウ」と呼ばれる黄花で一面覆われ、毎年6月にはカンゾウまつりが開かれる。7月に入ると今度はヤブカンゾウが佐渡の野山で咲き誇る。カンゾウは佐渡市の市の花だ。トビシマカンゾウが最初に見つかって、その名の由来になっているのが秋田県酒田市沖の離島「飛島」。酒田市もトビシマカンゾウを市の花に制定している。カンゾウの仲間ニッコウキスゲは群馬県・尾瀬や長野・霧ケ峰高原などの大群落が有名で、夏の野山を鮮やかな黄色で彩ってくれる。
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