【圧倒的な存在感放つ大きな仏像・神像も】
「紀伊山地の霊場と参詣道」世界遺産登録10周年を記念し大阪市立美術館で開催中の特別展「山の神仏―吉野・熊野・高野」(6月1日まで)が8日から一部展示替えし後期入りした。後期の目玉展示の1つが奈良・如意輪寺の蔵王権現立像。彩色鮮やかな厨子(通期展示)の中でこの立像のお姿を拝見できるのは18日までの期間限定。高さが2mを超える金峯山寺の釈迦如来立像や金剛峯寺の不動明王立像も圧倒的な存在感を放っている。
蔵王権現立像は全部で4体展示中。如意輪寺の像(写真㊧)は運慶の弟子で平安後期~鎌倉前期に活躍した源慶の作。メラメラと燃え上がる背後の赤い炎が憤怒の形相により迫力を与えている。厨子は扉の内側や壁面に吉野の桜や紅葉を背景に役行者や子守明神、勝手明神などの神々が描かれている。像と厨子はともに国の重要文化財。奈良・櫻本坊蔵の役行者倚坐像(重文、写真㊨)は鎌倉時代14世紀の作。左手に経巻、右手に錫杖を持ち足には高下駄。口を大きく開け笑っているような穏やかな表情で、山岳修行者という厳しい雰囲気を感じさせない。
金峯神社蔵の「藤原道長経筒」は道長が1007年に金峯山(現在の山上ケ岳)山頂に参詣した際、写経した法華経などを本堂の前に埋納したもの。直径約16cm、高さ約36cmの銅製金メッキで、円筒の表面は今なお金色の輝きを放っている。展示物120点余の中で国宝に指定されているのはこの経筒と「熊野速玉大神坐像」の2つ。坐像は平安時代9~10世紀頃の作品で、高さ1mほどの重量感を感じさせる木像。頭に大きな冠を載せて真正面を見据える表情には威厳が満ち満ちている。
金剛峯寺の不動明王立像(重文、12世紀)は高さが2.8mと見上げるほど。空海が半身を彫刻したところ、春日明神より半身がもたらされ、合体したところぴったり合ったという。そのため「合体不動」とも呼ばれる。右手に持つ宝剣の輝きがひときわ目立つのは後世の補作によるものだろうか。金峯山寺の聖徳太子・二王子立像(重文、13世紀)や世尊寺の十一面観音立像(8世紀)、金峯山寺の釈迦如来立像(14世紀)などの存在感も圧倒的。
和歌山・海蔵寺の菩薩形坐像(14世紀)は熊野別当湛増が源平合戦の折、軍船に安置し戦勝祈願したという。大峯山寺の如来・菩薩坐像(重文、10~11世紀)の2体は純度の高い金製で高さが3~4cmほどのミニアチュア。本堂の解体修理に伴う発掘調査で出土した。他に和歌山・青岸渡寺の大日如来坐像(那智山経塚出土)、三重・善教寺の阿弥陀如来立像、京都・細見美術館蔵の熊野十二所権現懸仏(いずれも重文)なども展示されている。
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