く~にゃん雑記帳

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<近畿大学・里山学講座> シカ被害広がる奈良の森 稚樹の食害・樹皮剥ぎ

2012年11月26日 | メモ

 巨木が茂る春日山原始林に、亜高山帯針葉樹林が広がる大台ケ原や大峰山脈の弥山・八経ケ岳……。奈良は屈指の森林県だが、近年ニホンジカによって荒らされ、森林の〝更新〟が停止状態に追い込まれているという。近畿大学農学部(奈良市)で25日開かれた「里山学連続講座」で、講師の奈良教育大学教授・松井淳氏は「シカと森と人の関係を見直し、新たな折り合いを見出すため早急に行動を起こす必要がある」と警鐘を鳴らし、猟師歴25年の垣内忠正氏は「獣害対策には狩猟による個体数の適切な維持と肉の利活用の一体的推進が不可欠」と強調した。

【松井淳氏「新たな〝折り合い〟づくりへ早急に行動を」】

 松井氏の専門は植物生態学で、奈良県自然環境保全審議会委員や環境省大台ケ原自然再生推進計画評価委員会委員などを務める。この日の講演テーマは「奈良の森~その魅力と直面する課題」。まず古都奈良の文化財として世界遺産にも登録されている春日山原始林の現状に触れ、「低地に残された貴重な照葉樹林だが、最近シカが食べないナギやナンキンハゼなどがはびこってきた」と指摘する。

 

 健全な森林なら親木が寿命や自然災害で枯れ死して林間ギャップ(上に穴が開いて明るくなる)ができると、若木が育って森林の世代交代(更新)が進む。だが、春日山原始林ではそこに本来の自生種ではない樹木が侵食しているというわけだ。大台ケ原ではトウヒ林の立ち枯れが目立ち、弥山ではシラビソ林の縞(しま)枯れ現象(写真㊨)が拡大している。

 松井氏は「これらの地域に共通するのはニホンジカが高密度で生息するようになったこと。シカによる〝採食圧〟で実生の若木が食べられ、親木も剥皮によって枯れ死している。この状況が続くと草地化・裸地化が広がり、斜面崩壊につながる恐れもある」と指摘する。大台ケ原では一昨年から下草のササを取り除いてトウヒの稚樹を植樹し柵で囲む再生事業が試験的に始まった。

【垣内忠正氏「狩猟と肉の利活用一体的に!」自ら処理施設開設へ】

 垣内氏(写真㊧)は1961年生まれで京都府福知山市在住。田舎暮らしをサポートする不動産会社「ART CUBE」を経営する傍ら、京都府認定の「京の田舎ぐらしナビゲーター」も務める。この日は長年の猟師歴を踏まえ「有害獣を獲ることと食べることをどうつなぐか」の演題で講演した。猟師の役割は「鳥獣保護・管理の担い手であり森の番人」という。

 

 最近の里山の現状については「林業の不振もあって森林が荒廃し下草がない山ばかりになって、野生動物が急速に人里へ生息域を広げている」と指摘する。農林水産省の統計では2008年、シカによる被害額が初めてイノシシを上回った。それ以降、差は拡大中。こうした中で京都府は今年のシカ捕獲数を昨年の2倍の1万8000頭に引き上げた。今後、猟師の出番がますます増えそうだ。

 だが、垣内氏は①猟師の高齢化②若者の無関心③銃刀法の強化④狩猟のインセンティブ不足(あまり収入が見込めない)――などから担い手不足が深刻になっていると話す。2009年の環境省統計によると、全国の狩猟免許所持者約18万人のうち60歳以上が61.5%を占める。シカを狩猟で間引いても、その処理の問題も残る。

 垣内氏は「食肉としての調理法や加工品の開発、販路の開拓など課題が多い」と指摘する。来年1月には「捕獲したシカ・イノシシを地域資源として活用するため」、自ら肉処理施設「京丹波自然工房」を立ち上げる計画だ。「シカ肉はヘルシーで高蛋白」。すでにシカ肉のソーセージやカレー、シシ肉ハムなどのほか、ドッグフードアイテムも試作中という。


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1 コメント

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Unknown (名無し)
2013-01-31 11:31:02
鹿対策に狼の導入 日本オオカミ協会ホームページの"Q&A"参照
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