く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<ハス(蓮)> 水底の泥の中から穢れなき〝極楽浄土の花〟

2012年07月28日 | 花の四季

【2000年以上前の古代の地層から蘇った「大賀ハス」、今年で開花60周年】

 今からちょうど60年前の1952年7月、世界中を驚かす1つの〝花物語〟が生まれた。前年、千葉市の「落合遺跡」という古い地層から見つかったハスの種3粒のうちの1つが出芽、ピンクの大輪の花を咲かせたのだ。周りの地層の年代測定から2000年前の弥生時代以前の古代ハスと判明。栽培に成功した植物学者・大賀一郎の名前を取って「大賀ハス」と名付けられた。そのハスは友好のシンボルとして分根されて、今や国内外の多くの都市で大切に育てられている。

 ハスはインド原産といわれるが、大賀ハスの発見などもあって日本にもともと自生種があったともいわれる。万葉集など古くは「はちす」の名前で詠まれた。実が入った果托の姿がアシナガバチの巣に似ていることから「はちす(蜂巣)」と呼ばれ、それが略されて「はす」になったらしい。大別すると、花を観賞するための「花蓮」と地下茎の蓮根を取るための「食用蓮」。食用のハスは中世に中国からやって来たともいわれる。

 スイレン(睡蓮)が水面に葉を浮かべ、水面すれすれに花を咲かせるのに対し、ハスは葉と花を水上高く展開する。ハスの葉は円く、スイレンのような切れ込みがない。花は早朝に開花、午後になると閉じる。これを3日間繰り返して散っていく。通常1本の茎に1つの花をつけるが、まれに背中合わせで2個をつけることも。「双頭蓮(そうとうれん)」と呼ばれ、良いことが起きる吉祥の兆しとして珍重される。葉には撥水性があり、水は玉になってコロコロと転がる。その葉と空洞の茎を使って〝ハス酒〟を楽しむ風習がある。その形から「象鼻杯(ぞうびはい)」とも呼ばれ、中国では長寿・健康に効き目があるとして古代宮廷でも行われていた。日本でも奈良市の法華寺や宇治市の三室戸寺など毎年催され初夏の風物詩になっている。

 「極楽の花」ともいわれるハスは、開くと同時に実の入った果托も姿を表す。これが「因果倶時」という仏教の説く真理にも通じるということもあって、寺院の壁画や仏様が座る蓮台、軒瓦の蓮華紋など仏教文化の中に多く取り入れられてきた。瞑想する時の座り方「結跏趺坐(けっかふざ)」は「蓮華坐」とも呼ばれる。「一蓮托生」「泥中の蓮」「濁りに染まぬ蓮(はちす)」などハスに由来することわざも多い。

 それにしても2000年という気の遠くなるような時を経て、見事現代に蘇ったハスの生命力にはただ畏れ入るばかり。千葉市は1993年、その「大賀ハス」を市の花に制定にした。埼玉県行田市も今年4月、市制施行60周年に合わせ、従来のキクに加え「古代蓮」を市の花に加えた。滋賀県守山市の市花は「近江妙蓮」。平安初期、延暦寺の慈覚大師が中国から持ち帰ったと伝えられる。県の天然記念物にもなっており、近江妙蓮公園で栽培されている。


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