【別名「ツユアオイ」「ハナアオイ」「カラアオイ」「ホリホック」】
アオイ科ビロードアオイ属(アルテア属)の1~2年草。日本には古く中国から渡ってきたため、古名では「カラアオイ(唐葵)」と呼ばれた。ただ、渡来時期はよく分かっていない。原産地も中国説と小アジアなどの西方説があり、新牧野日本植物圖鑑(北隆館)も「小アジア(または中国ともいう)の原産」と併記している。最近ではトルコと東ヨーロッパ原産のものの雑種ではないかともいわれている。
太い茎をぐんぐん伸ばして背丈は2~3mにも達し、径10cmほどの大輪の花が下のほうから順々に咲き上がる。別名「ツユアオイ」。梅雨入り前後から咲き始め、花が茎頂部近くになると梅雨が明けることによる。また大きな花から「ハナアオイ」とも呼ばれる。英名は「ホリホック」。その名は12世紀頃、十字軍がシリアのキリスト教聖地からヨーロッパに持ち帰ったことに因むという。
学名は「アルテア・ロセア」。アルテアの語源はギリシャ語の「治療する」で、アルテア属に薬用植物が含まれることによる。とりわけ「アルテア・オフィシナリス」(ビロードアオイ)は古くから根や葉が胃腸炎などの治療に用いられてきた。種小名のロセアは「ローズのような」の意。バラのような花の華やかさから名付けられたのだろう。
花色は白、黄、橙、赤、ピンクなど多彩。一重咲きのほか半八重や八重咲きもある。最近は花びらが黒紫の「ブラックホリホック」(黒タチアオイ)が人気という。鉢植え向きの背丈が低い矮性種も出回っている。タチアオイは静岡市と福島県会津若松市の「市の花」。「呼ぶ子帰る子十二時の立葵」(広瀬直人)。
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