【野趣に富み茶花にも、果実は〝ひっつき虫〟】
タデ科の多年草。日本各地の山野で夏から晩秋にかけて、ごく普通に目にすることができる。細長い花穂に径3~4ミリの小さな花を付ける。花といっても花弁はなく、花びらのように見えるのは4枚の萼(がく)片。上半分は赤く、下半分は白い。「ミズヒキ」の名もその花穂の姿を祝儀袋などの水引に見立てて。
渋く野趣に富む佇まいで、名前も縁起がいいとあって、江戸時代から茶花として好まれてきた。庭の片隅に植えられ、生け花にもよく使われる。仲間に紅白交じりの花を付ける「ゴショ(御所)ミズヒキ」、白花種の「ギン(銀)ミズヒキ」、葉に白や黄の模様が入る「フイリ(斑入り)ミズヒキ」などがある。
別名「ミズヒキグサ(水引草)」。地方によっては花姿から「アカゴ」や「アカマンマ」「センコウハナビ」「ミズクサ」「ヤマタデ」「スジコバナ」などとも呼ばれる。花柱の先端は鉤形に曲がり、花後の果実にもそのまま残る。いわゆる〝ひっつき虫〟の1種で、その鉤でそばを通りかかった動物の毛や人の衣服に付着する。
全国各地で見られる野草だが、南国では野生種の減少が目立つ。沖縄県はごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高いとして絶滅危惧ⅠA類に指定、鹿児島県でも準絶滅危惧種になっている。ミズヒキは秋の季語。「水引草はびこり母をよろこばす」(山田みづえ)、「水引の耳掻きほどの花弁かな」(大橋敦子)。
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