【江戸時代から続く“日本一やかましい祭り”】
三重県桑名市の総鎮守桑名宗社(通称春日神社)の祭礼「石取祭(いしどりまつり)」(重要無形民俗文化財)が8月7~8日に執り行われ、市内は祭り一色に包まれた。“祭車(さいしゃ)”と呼ばれる山車の曳き回しは3年ぶり。この2年間は新型コロナ禍で神社での神事のみとなっていた。本楽(ほんがく)日の8日には祭車27台が旧東海道沿いにずらりと整列した後、列をつくって神社に向け出発した。クライマックスは神社楼門前での“渡祭(とさい)”。一台ずつ順番に乗り入れ、太鼓や鉦を打ち鳴らしてお囃子を奉納すると、大勢の観客から大きな拍手が送られた。
石取祭は江戸初期に始まったといわれる。祭り名は市内の町屋川(員弁川)の川原で白い栗石を拾って春日神社に奉納することに由来する。8日昼すぎ神社にお参りすると、拝殿の前に「献石 ○○町」と書かれた“献石俵”がいくつも並べられていた。俵の中には7月17日の「川原祓式」で集めた栗石が収められているという。渡祭会場となる楼門周辺にはまだ人影はまばらだったが、実況中継の準備か、テレビ関係者の姿が目立った。
祭車は小さな前輪1つと大きな後輪2つから成る3輪車。その上に組んだ櫓に下から6・4・2の提灯12張りが立つ。その提灯は電線などを避けるため、下の6・4の間で折れ曲がり、提灯柱全体を90度回転することもできる仕組みになっていた。提灯の代わりに作り物の人形を乗せた祭車も。6月6日の御籤占式(みくじうらないしき)で「花車」と呼ばれる1番くじを引き当てた「堤原」の祭車の上にも神功皇后が飾られている。
祭車は各地区に1台、計41台ある(このほか石取会館などの2台を含めると43台)。1つの神社の祭礼でこれほど多くの山車が出るのは全国でも珍しい。ただ今年は新型コロナへの感染懸念や人手不足などからやむなく参加を断念する地区も。それでも参加する祭車は27台に上った。直径が1m近い太鼓が祭車の真後ろに据えられ、その両側に直径40cmほどの鉦が4~6個吊り下げられる。
祭車はくじ引きの順番に従って整列するため、午後2時すぎ頃から所定の場所に向かった。これを“送り込み”と呼ぶそうだ。その光景は祭り情緒たっぷり。祭車を先導する人々は紋付袴姿の正装、綱を曳く人たちも涼しげな和傘とそろいの浴衣姿。長い伝統からの誇りもあるのだろう、格式を重んじる祭りという印象を受けた。祭車は神社での渡祭に向けて、午後4時すぎまでにほぼ整列を終えた。
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