【不動堂前で大護摩・火渉り式、奉納行事は全て中止!】
奈良・薬師寺で25日「修二会花会式(しゅにえ・はなえしき)」が始まった。「お水取り」として知られる東大寺の修二会とともに、奈良に春の訪れを告げる恒例の行事。薬師寺にとっては奈良時代から続く1年で最も重要な法要だ。結願(けちがん)の31日まで1週間にわたって本尊を祀る金堂で、練行衆により悔過(けか)法要が営まれる。例年は国家繁栄や五穀豊穣などを祈るが、今年は新型コロナウイルスが世界を震撼させていることから、薬師如来に一刻も早いコロナの終息を祈願する。
国宝薬師三尊像(薬師如来、日光・月光菩薩)の前には桜や桃、牡丹など10種の華やかな造花(つくりばな)が飾られていた。ここで「六時の行法」と呼ばれる法要が1日に6回執り行われる。期間中、雅楽や能楽、太鼓、ハープやチェロの演奏などの奉納行事が連日計画されていたが、全て取り止めになった。また稚児行列や野点、僧侶の法話、花活動家・志穂美悦子さんによる特別展「聖観世音菩薩に捧げる花展2020」も中止に。
ただ初日25日には秘仏不動明王像を祀る不動堂前で「柴燈(さいとう)大護摩・火渉(わた)り式」が薬師寺修験咒師(しゅし)本部によって予定通り行われた。午後1時すぎ、修験者たちが法螺貝を吹き鳴らしながら登場し、結界を張り巡らせた中央の護摩壇を周回。この後、上空に向け矢を放つ法弓の儀や法剣の儀などに続いて護摩壇に点火した。
もうもうと立ち上る白煙はやがて激しい炎に。周囲は熱気に包まれ結界の周りで見守っていた参拝者たちは一斉に後ずさりしていた。めらめらと燃え上がる火柱はまるで不動明王が背負う火炎光背。火の勢いが収まってくると、火床の灰が平らにされ「火生三昧(かしょうざんまい)」といわれる火渉りが行われた。修験者や僧侶の後には百人近い一般の参拝者の列。みな真剣な表情で煩悩を焼き払おうと素足のまま熱い灰の上を進んでいた。
玄奘三蔵院伽藍の大唐西域壁画殿の回廊では特別展「大和椿盆栽会」が25日から始まった。ただ、この催しも31日までの会期予定が29日までに短縮。会場には奈良県内の愛好家が丹精込めて育てた鉢植えが20鉢ほど並び、天理市の椿園「カメリア・岩屋」が栽培する多くの品種の切り花も展示されている。今年は長崎県五島市で「国際ツバキ会議・第30回椿サミット」が2月29日~3月1日に開かれる予定だったという。しかしコロナの影響で中止になったとのことで、出品者の一人も残念がっていた。薬師寺では5月初めに東塔の落慶法要を予定していたが、こちらも延期が決まっている。玄奘三蔵院伽藍の写経道場前ではそんな世情の混乱をよそに「薄墨桜」がソメイヨシノより一足早く満開を迎えていた。
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