【茎先に多数の白い小花、沖縄には薄紅色の花も】
北海道から沖縄まで全国の海岸に自生するサクラソウ科オカトラノオ属の2年草。波打ち際に近い岩場や砂地で、葉をロゼット状に広げて越年する。海浜植物には種子が海流によって遠くまで運ばれ、広大な分布域を持つものが少なくない。ハマボッスもその一つ。日本以外に中国や東南アジア、インド、太平洋諸島などにも分布している。
花期は主に5~6月。根元で茎が枝分かれし高さが10~40㎝になる。それぞれの茎先に総状花序を形成、直径1㎝ほどの白い5弁の小花をたくさん付ける。和名ハマボッスは漢字で「浜払子」と書く。払子(ほっす)は僧侶が法要などで手に持つ白いハタキ状の仏具。花の咲く様子が払子に似ているとしてこの漢字が当てられた。ただ「浜坊主」からの転訛とする説も。こちらは花後にできる丸い蒴果を坊主頭に見立てた。
学名は「Lysimachia mauritiana(リシマキア・マウリチアナ)Lam.」。属名のリシマキア属(=オカトラノオ属)は古代マケドニアのリュシマコス王への献名、種小名マウリチアナはインド洋の「モーリシャス島の」を意味する。その後ろの「Lam.」は学名の命名者が19世紀のフランスの博物学者ジャン=バティスト・ラマルク(1744~1829)であることを表す。モーリシャス島は当時フランス領だった。
ハマボッスの変種に小笠原諸島に自生する「オオハマボッス」がある。その名の通り、葉や花がやや大きいのが特徴。ただ父島ではノヤギの食害で個体数が減少しているという。ハマボッスの花色は圧倒的に白だが、薄紅色を帯びたものもあり「ベニバナハマボッス」と呼ばれている。沖縄ではそのベニバナの方が多いそうだ。
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