【名付け親は日本の〝植物学の父〟牧野富太郎博士】
野菜のナスやジャガイモと同じナス科ナス属の多年草。そう言えば、うす紫色の花もジャガイモの花にそっくり。しかも全草にジャガイモの芽と同じ有毒成分ソラニンを含む。茎や葉には鋭い棘。繁殖力旺盛で除草剤もほとんど効き目なし。そんなことから「悪茄子」という少し気の毒な名前を付けられた。「オニナスビ(鬼茄子)」とも呼ばれる。
6~9月ごろ、茎の途中から花茎を伸ばして径2~3cmの花を5~10個ほど付ける。花期は長い。花色が白いものもあり「シロバナワルナスビ」と呼ぶことも。果実は径1.5cmほどの球形で、初めの緑色が次第に黄橙色に熟していく。その色や形はまるで黄色のミニトマト。ただ有毒のソラニンはとりわけ果実に多く、誤って口にすると吐き気や嘔吐、腹痛などの中毒症状が現れるという。
北米原産で、今や世界中で草地や荒地にはびこる帰化植物になっている。日本には明治時代後半に牧草に混じって入ってきたらしい。牧野富太郎博士(1862~1957)は下総(千葉県)の印旛郡三里塚(今の成田空港)で植物採集中に繁茂するこの草を見つけた。1906年(明治39年)頃のことという。その後、昭和に入って関東以西を中心に各地に広まったといわれる。
名付け親はその牧野博士。根を採集し東京に持ち帰って植えたところ、地下茎が四方八方に広がり、いくら引き抜いても切れた根から芽を出した。手に負えない厄介者というわけで悪いナスビ「悪茄子」と名付けた。その名前について牧野博士は著書『植物一日一題』でこう自賛している。「打ってつけた佳名であると思っている。そしてその名がすこぶる奇抜だから一度聞いたら忘れっこがない」。博士が生涯に命名した新種や新品種の植物は1500種以上に上る。その中にはオオイヌノフグリ、ノボロギク、ハキダメギクなども。
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