く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<尾道> 〝文学のこみち〟に不思議な自然の造形!

2019年07月20日 | 旅・想い出写真館

【〝海辺の美術館〟には原節子の「東京物語」も】

 久しぶりに広島県尾道市を訪ねた。今回で3回目。過去2回は眼下に尾道の町並みや尾道水道を一望できる千光寺公園を訪れておらず、それだけがずっと心残りだった。人気の尾道ラーメンで腹ごしらえした後、千光寺山ロープウェイで山頂に向かい360度の眺望を堪能。その後、尾道ゆかりの作家や詩人の作品が刻まれた文学碑が点在する〝文学のこみち〟を辿って下山。その途中、犬のような動物の形をした不思議な松の枯れ木に遭遇した。

 〝文学のこみち〟はロープウェイ山頂駅のすぐ脇から下り、千光寺の本堂を経て千日稲荷まで続く約1キロの遊歩道。その間に自然石に刻まれた徳富蘇峰や正岡子規、志賀直哉、林芙美子、山口誓子、柳原白蓮、吉井勇らの文学碑25基が立つ。頭上にロープウェイ、眼下に市街地と尾道水道を望む一等地には林芙美子の『放浪記』の一節が刻まれた石碑。「海が見えた。海が見える。五年振りに見る尾道の海はなつかしい。汽車が尾道の海へさしかかると、煤けた小さい町の屋根が提灯のように、拡がって来る……」。江戸後期の医師・蘭学者の緒方洪庵や思想家・漢詩人の頼山陽の石碑もあった。

 

 松の不思議な形の幹は〝文学のこみち〟を下り始めてまもなく左手に突然現れた。長い鼻や目、脚などはまるで犬か狼のよう。ただ地元では「イノシシ松」と呼ばれているそうだ。尾道観光協会のHPによると、10年前の2009年に枯れて通行の妨げになっていた松の幹を伐採する際、根元側を少し残して切った結果、時間の経過とともに偶然こんな形になったという。今年の干支は亥年。昨年のHPには「来年の年賀状用に撮影してみてはいかがでしょうか」とあった。

 

 千光寺にお参りする前、JR尾道駅からすぐそばのシーサイド遊歩道を散策した。〝おのみち海辺の美術館〟と名付けられ、尾道の四季を描いたグランプリ作品のレプリカがタイルの壁面に展示されている。そこに原節子・笠智衆主演、小津安二郎監督の映画『東京物語』(1953年)の陶板も埋め込まれていた。今年4月、尾道ライオンズクラブの創立60周年記念事業として設置されたばかり。尾道に住む老夫婦が子どもを頼って上京する。しかし長男長女は多忙を理由にかまってやらない。そんな中、戦死した次男の嫁だけが2人を温かく迎える――。原節子の代表作の一つ、この『東京物語』は2012年、英国映画協会主催の映画監督が選ぶ「映画史上最高の作品ベストテン」で第1位に輝いた。

 

 『東京物語』は尾道のシーンで始まり、尾道のシーンで終わる。香川京子は21歳のとき大ファンだった原節子と『東京物語』で初めて共演した。香川は原節子の当時の人気ぶりをこう語っている。「原さんの人気はものすごくて、尾道にいらっしゃる日には尾道駅に人が殺到。ちょっと危ないというので、ひとつ先の駅まで行ってそこから自動車で旅館の裏口に向かったそうです」(週刊朝日2018年6月29日号)。尾道市出身で後に『時をかける少女』など〝尾道三部作〟を制作した映画監督大林宣彦も15歳のとき『東京物語』の尾道ロケを見学していたそうだ。


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