【ハート形の葉は京都・葵祭の必需品、徳川家の紋所にも】
ウマノスズクサ科カンアオイ属の多年草。日本固有種で、本州・四国・九州の山地の樹下に自生する。春、円心形の葉を2枚ずつ対に付けることから双葉葵(二葉葵)の名がある。花は淡紅紫色で径1cmほどのお椀形。ただ大きな葉の下に隠れるようにして下向きに咲くため目立たず見過ごしやすい。花びらのように見えるのは萼(がく)で花弁はない。
フタバアオイの葉には光沢があり葉脈の模様も美しい。その葉を図案化したものが京都・賀茂神社(上賀茂神社/下鴨神社)の神紋になっており、フタバアオイは例祭の葵祭(5月15日)に欠かせない。その日は社殿から行列の牛車、冠や装束、桟敷に至るまであらゆる所にフタバアオイが飾られる。フタバアオイに「カモアオイ(賀茂葵)」の別名があるのもそのため。「カザシグサ(挿頭草)」や「ヒカゲグサ(日陰草)」「フタバグサ(双葉草)」といった別称もある。
かつて上賀茂神社周辺や賀茂川上流一帯に多く自生していたが、今では激減してしまったという。そこで一般社団法人「葵プロジェクト」が中心になって上賀茂神社の「葵の森」再生プロジェクトを推進中。地元小学校をはじめとしてフタバアオイの栽培・保護活動に取り組むところも増えており、3年前からは「葵里帰り」と銘打って「葵の森」でフタバアオイの奉納式も開いている。
フタバアオイは徳川将軍家・徳川御三家の「葵の御紋」としても知られる。この紋所「丸に三つ葉葵」はフタバアオイの葉を3つ組み合わせて図案化したもので、ミツバアオイという植物があるわけではない。「地に落ちし葵踏みゆく祭かな」(正岡子規)、「弟が枯葉を分けて見よというフタバアオイは鈴形の花」(鳥海昭子)
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