定年退職後の生き様

定年退職後、残された人生を如何に意味有るものに、しようかと悩んでいます。

諸星大二郎特選集

2014年01月18日 23時57分00秒 | まんが
先週の日曜日、一年間で比較的大きな仕事である来年度予算の編成作業が無事に終わった。

自分が働いている職場は、管理職を含め課員総数11人であり、わが社の中でも小さな職場の部類に含まれる。
うち、自分を含む実質4人の兵隊で約20億円の予算を組まなければならなかったため、9月過ぎからの準備期間から4か月余り、結構精神的なプレッシャーとなっていた。

そこで、OLのように自分へのご褒美として、本日5000円の自由使用を妻に許されたため、近くの書店に寄り、表題の書籍全三巻4,500円也を大人買いし、半日余りで読破した。今はまだ彼の作風独特な緩やかな退行の余韻に浸っているところである。

筆者との出会いは今から40年前に遡る。

当時少年ジャンプに「侵蝕惑星」と言う短編読み切りに度肝を抜かれた。
遠い未来。人口の増えすぎた地球において、食糧を確保するため、地球の土地までも科学的処理により食糧に替えていた。月は当の昔に食糧に換えられて既に一部分しか残されていなかった。人間の死体も例外でなかった。ある日地球のあらゆる材料を食糧に換えていくプラントに迷い込んだ主人公は、プラントののぞき窓から、最近亡くなった祖父の遺体がプラントを転げ落ちるのを目撃して衝撃を受けた。
後のストーリーは忘れてしまったが、ケレン味の全くない、ジワジワと心の深奥部に「侵蝕」してくる不気味さがとても新鮮であった。

当時、ドーベルマンデカ、アストロ球団などの華々しい連載の陰で、全く目立っていなかった。しばらくして「妖怪ハンター」を何回か連載するものの結局鳴かず飛ばずで、以降少年誌を飾ることは無かった。

次に彼の名前を聞いたのは、今から30年余り前になる。

当時東京の大学にいた自分は、大学のアニメサークル主催による宮崎駿氏の講演会を聞きに行った。
講堂のスクリーンを使って「カリオストロの城」を放映した後、大学のアニメ関係サークル作成による自主短編作品をいくつか放映し、宮崎駿氏の講演が始まるという趣向であった。
講演を始めた宮崎氏は、まず各大学サークル作成の短編作品について、どれもマスターベーション以外の何物でも無いと酷評して、会場を凍り付かせた。
その後、質疑応答の時間となり、「尊敬するアーティストは誰ですか」との問いに、唯一名前が上がったのが諸星大二郎氏であったのだ。
好きな理由が、奇をてらわず、世間に媚びず、かつ自分にも媚びていない点だということであった。

以降「スーパーアクション」(今は廃刊)において、西遊妖猿伝において連載していたのを目撃して以降、30年近く彼の作品を全く目にしていなかったため、とても新鮮であった。