妻と別れた夢を見た。
場所はどこか都会のJR駅前広場。
妻はスーツ姿。真矢みきのように凛と立っていた。
妻はいつもの笑顔で「それじゃあ、もういくね。」と言って立ち去ろうとしたが、急に残念そうな表情になり 「あ、そうだ。自転車がパンクした時のムシの交換方法をあなたに教えていなかった・・マニュアルを作っておいてあげようと思っていたのに・・・」
「そんなことはもういいから、早く行けよ」
「うん・・じゃあ・・・ さよなら」
彼女は大きく手を振ると踵を返し、駅のホームに向かっていった。
私はもう一度彼女に声を掛けようとしたが、思いとどまった。
声を掛けても今更何も変わらない。
彼女が見えなくなる前に、私も向きを変えて家路に向かった。
これから、妻のいない生活をどのようにしていけばよいのだろう。
全く想像がつかないので、うろたえた。
目が覚めた。
闇目に、妻が横向きで寝息を立てているのが見えた。 安心した。
しかし、どのような形であるにせよ、いつか、必ず妻との別れはやってくる。
定年を迎えてしまうと、「死」という感覚がより身近になるため、こんな夢を見るようになったのだろうか。