自分が良き父親で無い事は自分自身が一番良く知っている。
あつこうが小さいころには、自分の方が体力的に勝っていることを良いことに、仕事で嫌なことがあったときなどに、感情的に叱咤をすることもままあった。
自分が子供の立場だったら、絶対に慕うことが出来ない、最悪の父親像であった。
あつこうが小学生低学年と幼稚園の際に、家族旅行で海遊館に行った。
往路は関西汽船の夜行便で、帰路はJRとすることとしたが、経費を安く上げるため、大阪から岡山までは新幹線を使わず、在来線を乗り継ぐことにした。
あいにく休日の競艇が終わった時間と重なったためか、座席がまばらにしか空いていなかった。
これから何時間かの間、子供たちに少しでも楽をさせてやりたいと思い、自分と妻は通路に立ち、あつこうを通路側のボックスシートに相席で座るように指示した。
しかし、こどもたちは、居心地が悪いのか、いつまでもモゾモゾして座ろうとしない。
そのうち、中年男性達が席に座ってしまい、結局、こどもたちは姫路まで立ちっぱなしであった。
後で、どうしてあのとき座らなかったのかと尋ねたところ、お父さんやお母さんたちと一緒の方が良いと言ってくれた。
ああ、私のようなダメ父親でも、子供たちは愛を感じてくれている。
そのとき、タイガーマスクのエンディングテーマの最後のフレーズが頭の中で、混奏したことを記憶している。