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東日本大震災後の福島に暮らす家族の喪失と再生をテーマに、現地に赴いて
被災者に取材したエピソードを基に、「スープ・オペラ」の青木研次がオリジナル
脚本を書き、ドキュメンタリー作品で実績がある久保田直監督のメガホンを取っ
た作品です。
立ち入り禁止区域に指定されたため、先祖代々から受け継いだ家や田畑から
離れ、仮設住宅で暮らしている母(田中裕子)と長男(内田聖陽)は、やり場のな
い怒りを抱えながら先の見えない毎日を送っています。
そんなある日、20年近く音信不通だった次男(松山ケンイチ)が帰郷し、警戒区
域となった生家に住み着いているという連絡が入るのです。
立ち入り禁止区域のため無人となった村に戻った弟は、ある思いに突き動かさ
れて、一人で苗を育て田んぼを復活させようとしていたのですが・・・。
福島オールロケを行い、絶望的な状況下でも希望に向かって踏み出す家族の
姿を描き出そうという、製作側の意図は実に素晴らしいと思いますので、それ
は評価したいと思います。それに出演陣も前述の松山ケンイチ・田中裕子・内
田聖陽の他、安藤サクラ・山中崇・田中要次なども加わり、それぞれ好演です。
監督は数々のドキュメンタリー作品で実績を積んで来た人だそうですが、劇映
画はそんなに簡単に誰でも出来るものではなく、正直言うと劇映画の体をなし
ていないと思います。
被爆覚悟の帰郷をはじめ、本当に実体を把握しているのかと疑問を感じる挿話
もいくつかありますし、主軸になる人たちの境遇などが判り辛いので、見る前に
ある程度の知識があった方がいいとも言えます。
主婦のデリ・ヘルの挿話など、必要とは思えない挿話もいくつかあるのですが、
製作意図が素晴らしいだけにとても残念な出来ばえとしか思えません。