読書三昧(28年2月)
私の抗がん剤の副作用は、信じられないほどのだるさがきて、加えてお腹が必ずこわれます。だから5日間ぐらいは完全ダウン。普段だとそれから徐々に回復するのですが、何故か今月は長期化。楽しみにしていた外出も控え、ベッドにいる時間が長く続きました。その分本もたくさん読めましたが、やはり散歩位はしたいですよね。
2月に読んだ本
滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』
恩田陸『消滅』
柚月裕子『孤狼の血』
伊坂幸太郎『陽気なギャングは三つ数えろ』
米澤穂信『真実の10メートル手前』
西尾維新『掟上今日子の推薦文』
大野和基編『知の最先端』(カズオ・イシグロの章のみ)
能村研三随筆集『飛鷹集』
富川明子句集『菊鋏』
大矢恒彦句集『風船』
☆滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』
第153回芥川賞候補作。
定義は良く知らないけれどこういうのを「私小説」と言うのだろうか。今は妻と小さな娘がいる私が「思い出せない」「わからない」といいながら、それでいて過去の出来ごととその時の心情を連綿と書いている。書かれた出来ごとの一つ一つはそれなりに心に残るのだが、この小説がいいのか悪いのか私にはわからない。
作者は今回『死んでいない者』で第154回芥川賞を受賞した。
☆恩田陸『消滅』
長編であるが最初から最後までずっと緊迫感の持続する面白い小説である。ただ結末は意外性がありスケールも大きなものなのだけど、まっとう過ぎて肩すかしの感じなのが惜しい。けれどお薦め。
☆柚月裕子『孤狼の血』
2016/2/14ブログで紹介済。
☆伊坂幸太郎『陽気なギャングは三つ数えろ』
陽気なギャング4人組とハイエナ記者の一騎打ち。伊坂幸太郎らしいハイテンポでかつうんちくやギャグが散りばめられた軽くて面白い話。病院の待ち時間などに読むには最適かも。
☆米澤穂信『真実の10メートル手前』
昨年読んだ長編『王とサーカス』の主人公でフリージャーナリスト「太刀洗万智」が活躍する短篇六編からなる。それぞれ推理の部分が余りにうまく進み過ぎて、いささか現実味にかけるが、作者の視点がジャーナリストの立ち位置にあるとすれば納得もいく。ただ取材後に主人公がどういう記事を書いたかは読者にゆだねられるのだが、私にはイメージが浮かばないままで、いささか未消化の部分も。
六編の中で面白いのは「正義感」、作者の意図を強く感じるのは「ナイフを失われた思い出の中に」か。
☆西尾維新『掟上今日子の推薦文』
記憶が一日ごとにリセットされる忘却探偵掟上今日子(おきてがみきょうこ)と元美術館警備員の親切守(おやぎりまもる)が事件を解決する話。なんとなく文章はまだるっこい。親切守が掟上今日子の心の内を推測する同じような話が何度も出て来るせいか。と言ってもこの文体が作者の個性だから仕方がない。
そんな不満はあるのだが、すべては付記の微笑ましさで解消。
☆大野和基編『知の最先端』
知性の最先端にいる天才7人に大野和基がインタビューしたもの。中の一人がカズオ・イシグロ。現在テレビドラマで放映中の『わたしを離さないで』の作者。小説を書くための自身の工程を包み隠さず話している。ドラマも違った目で見られそう。
他の天才のインタビューは余り興味ない分野だったので読むのを省略。
☆能村研三随筆集『飛鷹集』
筆者は俳句誌『沖』主宰で、市川市役所で文化部門の要職にあったこともある。随筆202編に俳句時評が少し加えられている。俳句の主宰としての苦悩や役所で文化面を担当した自信などが素直に語られていて、中々興味深い。
☆富川明子句集『菊鋏』
遠足のしんがり風がそつと押す
気に入つてくれしや巣箱ことことす
どんど火のうしろで闇が伸びちぢみ
ふんばれり午前十時の霜柱
カレンダー十二枚目の寒さうな
☆大矢恒彦句集『風船』
草刈つてをりぬ蛍を守る会
口論に負けて海鼠となつてゐる
休校の子とおはじきの春炬燵
本閉ぢるやうに本屋の閉ぢて夏
清水の舞台押し上げ花吹雪
酢豚さまの紹介文を面白く読みました。
kazuo ishiguroの記事と
能村研三さんの随筆集を
読んでみたいなと思いました。
ありがとうございました!
コメントありがとうございます。
kazuo ishiguroの小説はまだ1冊しか読んでいませんが、
独特の味わいがありお薦めです。
「わたしを離さないで」も買ってあるのですが、テレビドラマを見終わってから、読むことにしました。