『この国の空』 原作:高井有一、脚本・監督:荒井晴彦
出演:二階堂ふみ・長谷川博己・工藤夕貴・富田靖子・利重剛・上田耕一
・石橋蓮司・奥田瑛二
高井有一原作の谷崎潤一郎賞受賞作品の映画化。
平日の昼に新宿テアトルでこの映画を見た。観客は80~90%が男性でそのほとんどが60歳代か70歳代でまずまずの入り。
この人たちはこの映画に何を求めてきたのだろう。泣けるシーンも笑えるシーンもあるわけでない、戦時下という非常時の設定ではあるが、はらはらどきどきする場面もなく、住人達に悲愴感もそれほど感じない。強く反戦が訴えられているわけでもない。主演の二階堂ふみや長谷川博己は演技派ではあるが人を呼べるほどのスターではない。(私は長谷川博己フアンに無理やり連れてこられたのだけれど)不倫が特に強調されるわけでもなく、話はあっけないほど淡々と進む。
何故これほどの人が集まるのか、映画を見ながらずっとそんなことを考えていた。
といっても映画の出来が悪いわけではない。自分に正直に生きている19歳の里子を演じる二階堂ふみには目の力のすごさで引き込まれるし、一見さわやか風な銀行員市毛を演じる長谷川博己は徐々に中年のいやらしさが見えてくる演技が絶妙である。
焼け出され無理やり里子の家に居座る叔母役の富田靖子の執念、娘の嫁ぎ先へ疎開しようと思うが、娘に断られそれを淡々と受け入れる近隣住民役の石橋蓮司の無念。脇役それぞれの演技も素晴らしい。
ラストの二階堂ふみが読む、茨木のり子の詩を聞きながら、厳しい時代を力まず一途に生きている姿を見ることで、人は心の癒やしを感じるのだろうかと一応結論を出して映画館を出た。
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