小説の孵化場

鏡川伊一郎の歴史と小説に関するエッセイ

小島毅『増補 靖国史観』を読む

2014-08-16 10:59:12 | 読書
 終戦記念日の8月15日に小島毅『増補 靖国史観』を読んだ。その前日に別の本を求めたついでに買った本だから、終戦記念日に読むことを意図したわけではないが、なにかの因縁だろう。
 著者は平成の儒教思想研究者である。靖国神社の思想的根拠が、神道ではなく儒教にあるという切り口がおもしろい。「檄文」と著者みずからが、この本を評していてるが、たしかに挑戦的な内容を軽口でカモフラージュしている。だが私なんかは、随所で著者の見解に同意するところが多かった。とりわけ、次の箇所などは、まるで日頃の私の気持ちを代弁してもらったような気分になった。

<……薩摩藩や長州藩の系譜を引く平成の御代の首相たちが、近隣諸国の批判をよそに参拝するのは彼らの勝手だが、私は中国や韓国が批判するからではなく、一人の日本国民として個人的感情・怨念からこの施設への「参拝」はできない。(略)ある人たちが「東京裁判」を認めないのと同様に、慶喜追討を決めた小御所会議の正当性を認めたくないからである>

 小御所会議の正当性を認めない、と言明した学者に、私ははじめて出会ったような気がする。
それが靖国史観とどうかかわるか、幕末維新史を見直していただければわかることだ。
増補 靖国史観: 日本思想を読みなおす (ちくま学芸文庫)
小島 毅
筑摩書房


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