昔、この島には人がいなかった。あるとき、三神人が地面から出現した。ヤンウルナ(良乙那)、コウルナ(高乙那)、プウルナ(夫乙那)といい、狩猟をし、皮衣を着て肉食をしていた。
ある日、東側の海浜に紫泥で封をした木函が漂着した。開くと、なかにもうひとつの石の函があって、冠帯紫衣の使者が出てきた。石函には、青衣の処女三人、子馬と子牛、五穀の種とが入っていた。
使者は「私は日本国の使者である。王が生んだ三人の娘を遣わし、まさに開国をしようとしているが配偶者のいない三神人に娶らせ、大業をなせとのことである」と述べ、たちまち雲に乗って去ってしまった。三神人は弓を射って、互いの居住区域をを定めた後、農牧を始め、子孫を育んだ。
・・・このようにして、その後島は繁栄していった、というのが済州島の建国神話のあらましである。
この神話は『高麗史』地理志に全容が紹介されているほか、その他の史料にも記載されているが、内容はほとんど同じである。ただ、三処女は日本ではなく、「碧浪国」という架空の国から来たとする文献もあるにはある。碧浪国ははるか東方の海上にある美しい国という意味であろう。
いずれにせよ、この神話には歴史的な体験の事実がかくされていると思われる。ハンラ山の爆発によって壊滅状態になった島の窮状を救うべく日本国から救援物資のほかに、女性までも送りこんだということである。王女というのは神話的変容であろう。そして、かっては、この島を通じて輸入した家畜や、そして穀物の種を恩返しのように届けたのだ。
この島とわが列島との古代における濃密な関係がうかがい知れる神話なのであるが、奇妙な暗合がある。神話に出てくる石の函は、例の貨泉が出土した丹後半島の函石浜となにやら関係ありげではないか。私は貨泉は中国との交易というよりも、済州島との交易で使用されたのではないかと考えている。だから、よけいにこういう暗合は気になる。
ある日、東側の海浜に紫泥で封をした木函が漂着した。開くと、なかにもうひとつの石の函があって、冠帯紫衣の使者が出てきた。石函には、青衣の処女三人、子馬と子牛、五穀の種とが入っていた。
使者は「私は日本国の使者である。王が生んだ三人の娘を遣わし、まさに開国をしようとしているが配偶者のいない三神人に娶らせ、大業をなせとのことである」と述べ、たちまち雲に乗って去ってしまった。三神人は弓を射って、互いの居住区域をを定めた後、農牧を始め、子孫を育んだ。
・・・このようにして、その後島は繁栄していった、というのが済州島の建国神話のあらましである。
この神話は『高麗史』地理志に全容が紹介されているほか、その他の史料にも記載されているが、内容はほとんど同じである。ただ、三処女は日本ではなく、「碧浪国」という架空の国から来たとする文献もあるにはある。碧浪国ははるか東方の海上にある美しい国という意味であろう。
いずれにせよ、この神話には歴史的な体験の事実がかくされていると思われる。ハンラ山の爆発によって壊滅状態になった島の窮状を救うべく日本国から救援物資のほかに、女性までも送りこんだということである。王女というのは神話的変容であろう。そして、かっては、この島を通じて輸入した家畜や、そして穀物の種を恩返しのように届けたのだ。
この島とわが列島との古代における濃密な関係がうかがい知れる神話なのであるが、奇妙な暗合がある。神話に出てくる石の函は、例の貨泉が出土した丹後半島の函石浜となにやら関係ありげではないか。私は貨泉は中国との交易というよりも、済州島との交易で使用されたのではないかと考えている。だから、よけいにこういう暗合は気になる。