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準備

 息子が入学式で着るスーツを買いに名古屋のデパートに出掛けた。第一志望だった国立大学に合格したら息子の好きなブランドのスーツを買ってやると、妻は約束していたようだが、私立大学進学となってしまい、本来なら約束は反故にしてもよかった。しかし、女親の息子に注ぐ愛情はやはり特別なものがあるようで、結局は息子の望むスーツを買うことになった。成人式と兼用にするという新たな約束をして、念願のブティックでスーツから靴まで一揃えを選び始めた。と言っても、店員さんがあれこれ見つくろって息子の好みを引き出してくれるのを私と妻は横で見守っていただけだが、テキパキとした動きをする店員さんの的確なアドバイスは、見ていて頼もしかった。3つボタンと2つボタンでは、3つボタンの方がシルエットが細身となり若々しく感じられるとか、靴は足の横幅を基準にして選ぶべきだとか、ネクタイは紺系のものは日本人の肌の色との関係から避けた方がいいとか、なるほどと感心ばかりしていた。私が普段スーツなど着ない生活を送っているせいもあるのだろうが、「餅は餅屋に聞け」である、コーディネートしてくれたスーツ・シャツ・ネクタイ・靴は、ものすごくかっこよかった。身長が175cmほどの息子が細身のスーツをピシッと身に着けてフィッティングルームから出てきた姿は別人のような感さえした。長い受験勉強に奮闘努力した褒美のようなものであるから、これくらいの出費は我慢しなければならないだろう。少しずつ、丈やら裾やらを直さねばならないが、息子が上京する28日までには出来上がるそうだ。
 
 早いもので、息子が家にいるのも後2週間を切った。先日来帰省していた娘は、火曜日に京都に戻っていった。にぎやかだった家の中がかなり静かになった。その上息子までがいなくなっては・・・、などと寂寥を感じなくはないが、あれこれ新生活の準備もあって感傷に浸っている暇も余りなさそうだ。
 電化製品は、地元の電気店が東京まで無料で運んでくれる手はずとなっている。パソコン・TV・冷蔵庫・洗濯機・DVD録画機・レンジ・・と一式そろえて運んでもらう。東京まで運ぶのに掛かる費用を考えたら、利益など出ないじゃないか、とこちらが心配になったが、あっけらかんと「大丈夫ですよ」と答えてくれたので、すべて任せることになった。アパートを決めるために上京した折に、布団と自転車はアパート近くの店で注文してきたそうだ。後は、服や日用品などをこちらから送る予定になったいるが、引越し便などを使うとかなりの輸送料をとられるらしい。困ったなと思っていたら、私の親戚の陶器会社では商品を宅配便でまとめて送るため、輸送料が割引されているという話を妻が聞きつけてきた。それを利用して少しでも安く安全に送り届けることができるよう、手筈を整えている。割れ物の陶器と一緒に運ばれるなら、手荒な扱いは受けないだろうと安心感もある。
 何にしても、地方の者が東京の大学に進学するにはかなりの費用がかかってしまう。切り詰めてなるべく出費を抑えねばならないと思う気持ちと、少しでも不便のないようにしてやりたいと思う親バカな気持ちとが交錯して日々悩ましい。3年前に娘で経験済みのこととは言え、娘よりも随分精神的に幼い息子だけに、どうしても余計な心配もしてしまう。実際の話は、息子の親離れと私達の子離れのどちらの方が先に可能か分からないほどだ。
 などと思っていても、息子が新しいスーツに身を包む日は否応なしに近づいてくる。その晴れ姿を何とかしてこの目で見てみたいとは思うが、難しいかもしれない。ナマ佑ちゃんや、ナマ愛ちゃんを見かける絶好の機会なのに・・。
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