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卒業!

 昨日、わが息子が高校を卒業した。「来なくてもいいから」という息子の言葉に従って妻は式に参列しなかった。その後ホテルで謝恩会が開かれたようだが、息子はそれには参加せず、2時頃には帰って来た。それでは少し寂しすぎるだろうと、私が駅まで迎えに行き、息子を連れてささやかな卒業祝いにケーキを買ってやった。

 

店内のショーケースの一番目立つところに並べてあった「ひなまつりケーキ」。息子に「これにするか?」とたずねたら、「おもしろいね」と賛成してくれたので買ってみた。ひし形のケーキ地にイチゴがたっぷりと乗っていておいしそうだ。このケーキ屋はロールケーキが10種類近くも売っていて、みなそれぞれおいしくて息子のお気に入りの店だ。定期的に買いにいくので、その店の奥さんも私の顔を覚えていてくれるようで、「合格祝いですか?」と声をかけてくれた。「いえ、卒業祝いです」と私が答えると、「おめでとうございます」と息子にお祝いを言いながら、ケーキを渡してくれた。息子と同い年の子どもさんがいるらしく、前回行った時は、推薦で進学が決まったと嬉しそうに話してくれたそうだ。時節柄、同じ年頃の子どもを持った親の会話は、どうしても子どもたちの進路先が中心になる。
 家に帰ると、息子が卒業証書を見せてくれた。私のときは、証書は筒に入れられていたが、今では立派な装丁の中に鎮座ましましている。一生の記念だから、これくらいにしてもいいのかもしれないが、ちょっと羨ましい。

 私は高校の卒業式に参列していない。大学受験の前に卒業式があって、そんなものに出るくらいなら家で勉強していたほうがずっと役に立つと、母に卒業証書を高校まで取りに行ってもらった。母が持ち帰った証書の筒を部屋の片隅に放り投げたような記憶がある。私は在学中、自分の通う高校が大嫌いだった。身体も弱くて長期間入院していたため、2年生の時は半分くらいしか出席できず、一時は退学届けまで出した。大検を受けて高校卒業資格さえ取れれば大学進学もできるから、と簡単に考えていた。その後考え直して出した復学届けが受理され、何とか卒業までこぎつけたので、本来ならもっと感慨を深めてもいいはずなのに、その時は高校を卒業できた清々した思いしか感じなかった。何が不満だったのか、今となっては忘れてしまったが、高校に行くのが億劫だから病気になったのか、病気にかかったから通学が億劫になったのか判然としない。まあ、半分以上は不登校みたいなものだったのかもしれない。
 
 そんなバカな男を父に持つわりには、息子は大した文句も言わずにバスと電車を使って、ほとんど休むことなく中学・高校6年間を無事終えることができた。買ってきた「ひなまつりケーキ」を切って祝おうとしたら、すぐに名古屋に出かけてクラスの皆と打ち上げをやるんだと教えてくれた。なんだ、そんな素敵な約束があるのなら、私が気を回してケーキなど買ってこなくてもよかった。ちょっと残念、と思いはしたが、「無事卒業できてよかったね」という私の思いは伝えることができたかもしれない。私にしては上出来だったと思う。
 「羽目を外して飲んだりしてると、警察に通報されて合格が取り消されてしまうから、注意してよ」と妻に念を押されていたが、卒業した日に気持ちを抑えるなんて無理な相談だろう。案の定、ほろ酔い加減で帰って来たのは終電1本前の電車だった。12時過ぎに駅まで迎えに行った私は、親バカなんだろうか・・・。そうだよね、やっぱり。
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