ゆきてかえりしひび――in the JUNeK-yard――

読書、英語、etc. jesterの気ままなおしゃべりです。(映画は「JUNeK-CINEMA」に引っ越しました。)

自分を愛する力 乙武洋匡 ハワイで読んだ本  その3

2013-06-03 | My Hawaii


ハワイに到着して、ココナツ・ツリーの梢から降り注ぐ光にキラキラ輝く街を歩いて、どこまでも青い空と海を見て・・・

いつもならどっと解放感があふれてくるはずなのに・・・

ふと感じる違和感。

・・・・(今までハワイで感じたことのない、不思議な気分・・・?)


ここはなんて平和で明るくて不安がなくて、歩く人たちの表情が幸せに満ち足りているように見えるのだろう。

それに痛みを感じる自分・・・? 
なんだか・・・泣けてくる・・・・?



そっか。311の時、ここはな~~んにもなかったのだな。

いまだって、避難とか放射能とか余震とか、ないのだな。

日本の暮らしはだいぶ普段の生活が戻ってきたけれど、それでも引き続き日本人が対処を迫られている、
「止められない放射能汚染」
「核に頼らないことを求められるエネルギー問題」
そして・・・「これから来る大地震」

被災地から離れた東京にいるわたしだけれども。
それでも地下鉄に乗っていても、「今地震が来たらどうしよう」
家族と離れていても「今地震が来たらどうしよう」
ニュースを聞いては「あの汚染水はどうしたらいいのだろう」
「さらなる賠償金を東電が払うって、結局電力料金に乗せるのかな」
いつも頭の片隅にそんなポップアップが絶えることなく出ている。

そんな心配のかけらもないところにきて、ポップアップが消えて、初めてどれだけそれらのことが毎日自分に重くのしかかってきていたかに気づく。

311の後、海外には何回か出たのに、こんな違和感を感じたのは初めてだった。

それだけハワイが絶対的な平和な気に満ちていたということ。

そして、311の後、私の中でもそれなりに時が流れ、少しは自分を客観視できたということだろうか。




         



さて、空港で衝動買いした本シリーズ第二弾はこちら。

自分を愛する力 (講談社現代新書)
自分を愛する力 (講談社現代新書)

乙武さんの題名をつけるセンスは「五体不満足」からわかっておりますが、「自分を愛する力」というのもすごいなと思いました。

タイトル買いしてしまいました。

何があっても自分を信じ、自分を愛し続ける力。
自分を否定したり自己嫌悪にならず、ふてず、淡々と生きていく力。

手足がないという障害を生まれたときから背負っているのに、乙武さんの変わらぬあの明るさ、あの自己肯定力はどこから来るのだろう? 

『自分に自信を持ち、自分の頭で考え、自分の判断にもとづいて行動する――― そういうことができる人になるには、やはり他者から認められ、受け止められることが必要なのだ。』p105

ではどうして彼は自己肯定力を身に着けたのか。
悩み苦しむ青春時代だってきっとあっただろうに。

その辺に興味を持って買ったのですが。


詰まるところが

『振り返ってみれば父は「愛を伝える」ことに長け、母は「ありのままの僕を受け入れる」ことに長けていた。そのふたりのスペシャリストによって、僕はちょっとやそっとのことではびくともしない、頑強な自己肯定感をはぐくんでもらうことができた。だからこそ、いまこうして幸せな人生を送ることができているのだろう。』p203

ということで、親の育て方になってしまうのですね。

つまりこの本は、自分を肯定できない大人が、どうしようと悩んで読んで答えを得られる本ではない。

けれども、これから子供を育てようという親にはヒントになることがたくさん書いてあるのかも。

ま、ちょっと私の期待していたテーマとは外れておりました。


一番面白かったのは、巻末にある精神科医の泉谷閑示との対談だった、なんていうと怒られるかもしれないですが、

『日本には古くからある「ムラ社会」というか「ムラ的な共同体」意識が残っている。これが問題のベースにある。自己肯定感が持てないのもそこと関係がある。経済大国になってもメンタリティは「ムラ社会」のままで、「ムラ」のなかに「個人」がない。いるのは「個人」ではあく「構成員」であって取り替え可能な存在。だから個性が突出していたり、新しいことを試したりする人は好まれない。日本はもはや「ムラ社会」ではいられない時代になってきている。多種多様な価値観が海外からも入ってくる中で、いまだ日本の学校では『協調性のある子に育てる」という大義名分を掲げて個性を抑える教育をしている。』P218(途中略あり)

うむうむ、よく聞く話ではありますが、かなりうなずけてしまいます。

田植えのために一斉に働けるよう「協調性のある子に育てる」

このこと自体はある意味日本社会のいい側面でもあると思うし、要はバランスということなんでしょうけれど、鎖国を解いて国際社会の一員としてやっていく現代では、まず自分のアイデンティティを持たないと、いっくら協調性があっても生き残れないと思います。




それにしても乙武さんの御両親が、「五体満足な子供」のみが幸せであるというパラダイムに縛られていなくて、ほんとに幸いでした、洋匡君。







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2 コメント

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Unknown (くっちゃ寝)
2013-06-04 15:01:01
う~ん、被災地、関東、関西で微妙に温度差があるとは思いますが、
今や日本人誰もが「放射能汚染」や「いつくるかわからない大地震」の不安を抱いてますよね。
それって日本に住んでいるからなんだ、と改めて思い知らされました。
それから逃れるには、日本脱出しかないのか・・・
せめて、これ以上不安の種をふやしてほしくないんだけど。

以前、乙武くんがご両親のことを話しておられるのを聞いたことがあります。
確かに肝っ玉のすわったご両親なのだという印象を受けました。
親として本人には言えない苦労や思いもあったと思いますが、
乙武くんがこんなふうに育ってくれて、亡くなられたお父様も喜んでおられるでしょうね。
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くっちゃ寝さん♪ (jester)
2013-06-05 10:56:01
くっちゃ寝さん、いらっしゃいませ♪ いつもコメント、ありがとうございます♪

>う~ん、被災地、関東、関西で微妙に温度差があるとは思いますが、
今や日本人誰もが「放射能汚染」や「いつくるかわからない大地震」の不安を抱いてますよね。


>毎日の生活で、不安の中で生きるのが当然のようになってきて、この生活にいつのまにか適応していたらしく、それにハワイに行ってやっと気が付きました。
えらく重い不安を抱えていたのだな、自分は、と。。


>それって日本に住んでいるからなんだ、と改めて思い知らされました。
それから逃れるには、日本脱出しかないのか・・・
せめて、これ以上不安の種をふやしてほしくないんだけど。


じ、実は(汗
ハワイ移住を真剣に考え始めました(汗


>以前、乙武くんがご両親のことを話しておられるのを聞いたことがあります。
確かに肝っ玉のすわったご両親なのだという印象を受けました。
親として本人には言えない苦労や思いもあったと思いますが、
乙武くんがこんなふうに育ってくれて、亡くなられたお父様も喜んでおられるでしょうね。


初めて乙武君を見たとき、お母様は「かわいい~」といったそうですが、もちろん母としてそれだけではなかったはずです。
この子をどうやって育てるか、生きる力を身に着けさせるか…

それでもそれに負けず、一緒に背負っていくものとして、いつも息子のそばで明るくしていく強さがあったから、乙武君が自己肯定力をしっかり身に着け、自分を愛して暮らせるという、普通の人でも持てない力を身に着けたのだから、すごいことだと思います。

普通の親と普通の子でも、たとえ子が有名校に行けなくても、一流企業に入れなくても、幸せを感じられる人間に育てれば、それで親の仕事は100%終わりじゃないかと思います。


>乙武くんがこんなふうに育ってくれて、亡くなられたお父様も喜んでおられるでしょうね。

ほんとですね~

乙武君が何をしても、例えばツイッターでちょっといったこととかが大きな反響を呼び、彼を叩く人も出てくるようですが、持ち前の「自己肯定力」で乗り切ってほしいと思います。
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