上記期間の観劇記録をまとめると、以下の通り。
◎は大満足、○満足、△まあ満足
<>内の出演者はあえて一般的な知名度のある方に絞っています。あしからず
3月 テアトル・エコー「病院ミシュラン」(恵比寿エコー劇場)
「病院あるある」ものとしては笑えるのだが、病院を舞台にするならもっと色々作り方があったのではないか、という気がしてならない。これではアンジャッシュのコントではないか、という感想を払拭するには、例えば「良い医師とは何か」といった方向性での膨らみが欲しい。元文学座俳優の某弁護士は、大変楽しく鑑賞されたとのことなので、私が欲張りすぎなのかも知れないが。
○新国立劇場「アルトナの幽閉者」(新国立劇場小劇場)<岡本健一、辻萬長、美波>
非常に緊張感のある対話劇。サルトル原作というので身構えたが、むしろ父子を中心とする家族の関係から戦争犯罪の問題を身近に感じさせる作品だった。戦争がいかに人を傷つけ、その関わった責任を長い時間にわたって突きつけていくものなのか実感させられる。再演を見て鑑賞を深めたいと感じた。
○東京芸術劇場「おそるべき親たち」(東京芸術劇場シアターウエスト)<麻実れい、中嶋朋子、佐藤オリエ、満島真之介>
ジャン・コクトーの作品。佐藤オリエさんの存在感が素晴らしい。二つの家の明と暗を対照させる舞台芸術も印象的。冒頭のやや不自然な母子関係から、ある程度結末が予測されるのが難点か。
パンフレットには、法務監修・福井健策と書かれている。
劇団銅鑼「女三人のシベリア鉄道」(六本木俳優座劇場)<鈴木瑞穂>
あんなに面白い原作本(森まゆみ)を、こういう風に戯曲化すると台無しになります、という見本のような作品。特に前半は、原作者に脚本を委ねた場合のマイナス面がもろに出ている。「女三人」と銘打った以上は全員出さないといけないのだろうが、説明台詞が多く人物が膨らまない。与謝野晶子は、本人が十分規格外なんだから、あんなにエキセントリックに演じる必要は無い。それこそ、企画の谷田川さほさん(色んなちょい役で登場)が、演じれば良いのに。幽霊形式もありはありだろうが、それなら主人公である筆者自身の人生の分岐点に、幽霊がからむ形等に再構成すべきではないかなあと感じた。
◎加藤健一事務所「あとにさきだつうたかたの」(下北沢本多劇場)<加藤健一、加藤忍>
文学座の女優山谷典子さんが書き、自らが主宰する演劇集団Ring-Bongで上映した作品。一昨年にたまたま小竹向原のスタジオで観劇し、ずっと心に残っていた作品で、翻訳劇中心の加藤健一事務所が上演すると知って、大いに驚き、観劇することにした。加藤健一事務所のホームページを見ると、ラストシーンの加藤健一さんの「がんばれ」という叫びに感動したという声が多いようだが、私と妻は、逆にこのラストに少しひいた。父のようには生きまいと思った科学者が、別の形で「罪」を背負ってのラストなのだから、こんなに大見得を切られると違和感があるのだが。
山谷典子さんの「才気」は、再度鑑賞して舞台のそこここに感じることができたので(ラジオに登場人物が相づちをうつシーンなど)、今後の一層のご活躍を期待したい。