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略奪、放火…「天国に一番近い島」で暴動 背景に中国の存在も

2024-05-21 | 先住民族関連

毎日新聞2024/5/20 09:32(最終更新 5/20 12:11) 有料記事 1631文字

宮川裕章

ニューカレドニアの独立推進派の旗を持ち、デモを行う市民ら=パリで16日、AP

 南太平洋にあるフランスの特別自治体ニューカレドニアで選挙制度をめぐる暴動が起き、仏政府が軍を派遣する事態になっている。背景には、政府に対する先住民の不満のほか、南太平洋で影響力を広げる中国の存在がある。

 発端は仏国民議会(下院)で15日に可決されたニューカレドニアの投票権を拡大する憲法改正案だ。ニューカレドニアでは1970年代から続く独立派と残留派の対立の末、2007年の改革で、98年以前から住む住民にのみ地方選挙の投票権が与えられていた。今回の憲法改正案は、投票権を現地に10年以上居住する住民に拡大する内容。これにより、新たに約2万5000人が地方選の投票権を獲得する。今後、上下両院の合同会議での承認を経て、7月に施行される見通しとなっている。

 ニューカレドニアでは人口約27万人のうち先住民「カナク」系が41%、欧州系が24%を占める。18~21年に実施された独立の是非を問う3回の住民投票では、いずれも残留派が上回った。だが21年の住民投票は新型コロナウイルスの感染拡大などを理由に独立派が不参加を呼び掛け、投票結果を認めていない。

 先住民を中心とする独立派は、今回の憲法改正案で欧州系住民の投票が増え、地方選挙で不利になるとして猛反発している。

 暴動は、仏国民議会で憲法改正案が可決する直前の13日に始まった。最大都市ヌーメアなどで店舗の略奪や家屋、自動車への放火が相次ぎ、治安部隊と衝突。これまで憲兵2人を含む6人が死亡、数百人が負傷し、約240人が拘束された。アタル仏首相は15日、港と空港の安全を確保するため、軍の派遣を発表した。

 暴動の背景には太平洋での勢力圏争いもある。ニューカレドニアを含む南太平洋地域では近年、中国が影響力を拡大している。島しょ国のソロモン諸島は19年に台湾と断交し、中国と国交を樹立。22年4月には中国と安全保障協定を結んだ。中国はその後、島しょ部住民に残る、かつてのフランスや英国などの植民地支配への反感を追い風に、ソロモン諸島、パプアニューギニア、フィジー、バヌアツの各政府とニューカレドニアの独立推進派「カナク社会主義民族解放戦線」(FLNKS)などで構成する「メラネシア先鋒グループ」と連携を深めている。

 これに対し、マクロン仏大統領は23年にパプアニューギニア、バヌアツを訪問し、関係強化を呼び掛けるなど、中国への警戒を強めている。ニューカレドニアは仏海軍基地があり、フランスの太平洋での海洋利権を守る要だ。今回の憲法改正案は、ニューカレドニアに対し、仏政府が管理を強めようとする流れの中で生まれた。

 だが、治安部隊や軍の派遣など仏政府の強権的な姿勢が、地域住民に植民地支配を想起させ、中国を利するとの批判が出ている。

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https://mainichi.jp/articles/20240520/k00/00m/030/016000c

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