毎日新聞 2024/5/21 15:30(最終更新 5/21 15:30) 726文字
写真展には、台湾の民主化運動の歴史的瞬間が映し出された作品が並ぶ=港区虎ノ門の台湾文化センターで2024年5月15日、鈴木玲子撮影
台湾で民主化の歩みを撮り続けてきた台湾人写真家、宋隆泉さん(67)の写真展「台湾の自由風景 宋隆泉写真展 シャッターに収めた真実の記録」が、東京都港区虎ノ門の台湾文化センターで開かれている。民主化運動の歴史的な瞬間を記録し、社会のうねりを伝える貴重な作品が並ぶ。
戦後の台湾は長らく国民党の独裁体制が続き、言論や表現の自由が奪われた。1980年代後半に民主化運動が活発化し、87年に戒厳令が解除され、民主化へとかじを切る。
宋さんは出身地の台湾北東部・宜蘭県を中心に伝統文化などを撮影していたが、86年から民主化運動を最前線で撮影するようになり、運動の中心人物もカメラで追った。
同展では、戒厳令に対する抗議デモや民進党の結党(86年)、47年の民衆弾圧事件「2・28事件」に対する抗議デモ(87年)、言論の自由を求めた活動家の鄭南榕(ていなんよう)氏の逝去(89年)など、民主化運動の歩みが克明に写し出されている。他にも先住民族の風習、漁港の風景や伝統歌劇など、魅力あふれる作品約100点が並ぶ。
開幕式で宋さんは「歴史の真相は簡単に忘れられてしまい、簡単にねじ曲げられてしまう。私は写真を通して記憶を呼び起こしたい。歴史は語り続けなければならない。私は写真で忘却にあらがう」と語った。作品の脇には当時の状況についての説明と撮影当時の思いも書き添えた。
作品の中には、台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表(駐日大使に相当)が仲間と共に民主化運動に突き進んでいた若かりしころの姿も。謝代表は「民主化の成果は多くの人の努力によるものだ」と語った。