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<ウポポイとわたし>12 アイヌ民族文化財団職員の思い

2020-07-15 | アイヌ民族関連
北海道新聞 07/14 10:13
 12日に胆振管内白老町に開業したアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」を運営するアイヌ民族文化財団(札幌)の職員はそれぞれの思いを胸に、この日を迎えた。
■文化は人生 違いを尊敬し合う社会へ 山田美郷さん(54)
 「このアットゥシ(樹皮衣)は木の内皮で作った糸で織ったんです」。12日、ウポポイの工房で来場者から「へー」と感嘆の声が上がると、アイヌ民族の財団職員山田美郷さん(54)は内心、「直接伝えると反応があって楽しい」とほほ笑んだ。内皮を採取して糸をより、アットゥシを織るまで全てこなしてきただけに「達成感」もひとしおだ。
 厳しい偏見や差別を感じてきた母から「美郷は毛が濃くてかわいそう」「アイヌとは結婚しちゃ駄目」と言われて育った。幼心に「アイヌであることは駄目なこと」と思い、隠れて毛をそり、身体測定やプールの授業も休むようになった。
 転機は東京で絵画の勉強をしていた20代、米女優シャーリー・マクレーンの著書「アウト・オン・ア・リム」を読んだこと。輪廻(りんね)転生をテーマの一つとした本で、「自分は何のためにアイヌの両親から生まれたのか、アイヌとは何なのか知りたいと思った」。
 既に大学生になった長男が子どもの頃には「おじいちゃんのアイヌ舞踊はすごかったよ」と教えて育てた。自分も2008年から財団の前身のアイヌ文化振興・研究推進機構のアイヌ文化の伝承者育成事業で3年間学んだ。白老町の旧アイヌ民族博物館に就職してアイヌ伝統の織物などの伝承を続け、ウポポイ建設に伴い18年3月に旧博物館が閉館して財団に転籍した。
 「文化は衣食住や言葉など社会の全てに通じるもので、人生そのもの。ウポポイでアイヌのことを知り、民族の違いを尊敬し合う社会になってほしい」と願っている。
■無関心は刃 「共に生きる」考える場に 木村和沙さん(32)
 伝統儀礼「イヨマンテ」(クマの霊送り)をアイヌ語と踊りで表現する舞台「イノミ」。12日、ウポポイの目玉演目の初公演を終え、財団舞踊グループの木村和沙さん(32)は涙が止まらなかった。「みんなで積み上げてきたものを凝縮したような時間だった」
 アイヌ民族ではないが、世界各地の民族音楽への興味から大学ではアイヌ文化を専攻し、その担い手を育てる「札幌大学ウレシパクラブ」にも入った。
 クラブの合宿で訪れた釧路市の阿寒湖アイヌシアター「イコロ」では伝統芸能を見学し、輪唱の幻想的な響きや踊りの力強さに鳥肌が立つほど感動した。それまで心のどこかでアイヌ文化を「過去のもの」と考えていた自分にも気づき、心の底から「アイヌ文化は生きている」と思えた。
 11年の卒業後、憧れのイコロで働き、舞踊などを担当した。充実した日々を過ごす一方、来場者が「どれ(誰)が本物のアイヌ?」「山で暮らさないなんて偽物か」と心ない言葉をつぶやくのを耳にし、心を痛めた。「無関心や無知からくる何げない一言が時に鋭い刃になると知ってほしい」
 18年に財団に就職した後もその思いは変わらず、アイヌの友人、その文化との出会いは自分自身の人生も豊かにしてくれるとの思いを強くしている。「単なる興味心から一歩踏み出し、先住民族アイヌと共に生きるとはどういうことか考える場になってほしい」(斉藤千絵)
★「アットゥシ」の「シ」、「ウレシパ」の「シ」、「イコロ」の「ロ」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/440293
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