先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

「ISS史上最も深刻な事故!」ソユーズ冷却水漏れ、フライトコンピュータに影響のおそれ

2022-12-24 | 先住民族関連
ニューズウイーク12/23(金) 18:05配信
──冷却不良によって徐々に熱が蓄積し、クルーの帰還に使われるフライト・コンピュータが正常に稼働しないおそれがある
ロシアが運用し、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングしている有人宇宙船「ソユーズMS-22」において、冷却水漏れが発生した。
12月15日に起きたこの事故について、米技術サイトのアーズ・テクニカが、現在までに判明している事態と影響を解説している。フライト・コンピュータに影響が及ぶおそれもあり、同サイトで宇宙関連を担当する編集者のエリック・バーガー氏は、ISS史上「最も深刻なインシデントのひとつ」だと見る。
■ 船体を冷やす冷却水、ほぼ完全に失われたか
漏洩は15日、ソユーズの居住区画外部で発生した。機材を収容しているスペースの外装が破損し、その際にセンサーが冷却システムの圧力低下を検知した。ソユーズの冷却水漏れは人の手で止めることができず、現在までに冷却水はほぼ完全に失われたとの見方がある。
冷却水漏れの原因として、外部から飛来した物体により冷却水ラインが損傷したと考えられている。米CBSニュースは、スペースデブリあるいはマイクロメテオロイド(ごく小さな天然の流星物質)が衝突した可能性があると報じている。ISSの船外カメラの映像からは、小さな穴が確認された。
現在、NASAおよびロシア国営宇宙開発企業のロスコスモスは、事故の影響を評価している。
米テックサイトのアーズ・テクニカは、冷却水の喪失により、ソユーズが帰還する軌道を計算するためのフライト・コンピュータが過熱するおそれがあるとする独自の分析を示している。
記事は「宇宙ステーションに滞在中の7人の宇宙飛行士にただちに危険が及ぶことはない」と前置きしながらも、「これは四半世紀近く使用されているこの軌道上のラボの歴史において、最も深刻な事故のひとつだ」と指摘する。
■ クルー帰還時の軌道計算に影響のおそれ
折しもISSは現在、軌道面と太陽との角度を示す「太陽ベータ角」が大きい時期にある。これはISS全体の日照時間が長いことを意味しており、船体が過熱しやすい状況だ。アーズ・テクニカは、「このことから、時間が経つにつれフライト・コンピューターがオーバーヒートするおそれがある」と分析している。
また、フライト・コンピューターは船体の深部に設置されているため、どこかのハッチを開けて冷気を送り込むのも難しい状況だという。さらに、現在確認されている問題は冷却水漏れのみだが、スペースデブリやマイクロメテオロイドがほかの装備を貫いた可能性も否定できない。
フライト・コンピューターは、ソユーズがカザフスタンの着陸地域内に帰還できるよう、再突入の軌道を正確に計算するために使用されている。仮にこのコンピューターが動作不良に陥る危険性があると判断されれば、現在ISSにドッキング中のソユーズによって宇宙飛行士を帰還させることはリスクとなる。
手動で計算をおこなう方法も残されてはいるが、着陸予測エリアが広くなるおそれがある。着陸後のクルーたちの回収に手間取ることが予想され、最適解ではないと同記事は指摘する。コンピュータの温度の推移次第では、予定を繰り上げて一部の宇宙飛行士を早期に帰還させるなど、何らかの対応が求められる可能性もあるという。
■ 一時は「室温50度」の誤報も ロシア当局は否定
事故後は一部、誤報も出回った。冷却に問題が生じたことから、ソユーズの船内温度が50度にまで上昇したとの情報が「関係筋」の話として一部で報じられた。
ロシアのタス通信によると、ロスコスモスは16日、これを否定した。居住区画の温度を測定したところ、通常よりは上昇が見られたが、約30度であったという。ロスコスモスは「些細な変化だ」と強調している。同社はまた次のように述べ、安全性を強調した。
「現時点で温度変化は、機材の使用やクルーの快適性にとって致命的なものではない」
「状況は許容範囲内であり、宇宙飛行士たちの生命や健康に対する脅威とはなっていない。ソユーズ宇宙船MS-22の居住区画に求められる温度は、ISSのロシアセグメントのリソースによって維持されている」
■ ソユーズ不調なら、クルーの輸送はバックアップなしの単機体制に
事故の影響を受け、NASAは12月21日、幹部職員らが電話会議を通じて対応を協議すると発表している。
一方、ISSの現場では、事故前から計画されていた船外活動を予定通り実施する。NASAの宇宙飛行士2名が船外にて、ロールアウト式太陽電池アレイ増設のための活動に当たる。船内では、米先住民族として初めて宇宙へ飛び立ったNASAのニコール・マン宇宙飛行士と、日本のJAXAの若田光一宇宙飛行士が共同でロボットアームを操作し、船外の飛行士らをサポートする。
宇宙ポータルのスペース.comによると、ロスコスモスは現在、冷却水を失ったソユーズがミッションに耐え得るかを評価している。
飛行に耐えないと判断された場合に懸念されるのが、クルーの輸送体制だ。同記事は、「このソユーズは、SpaceXの『クルー・ドラゴン』カプセル型宇宙船と並び、ISSへ宇宙飛行士たちを輸送しているわずか2台の宇宙船の1つである」と指摘している。
ソユーズが使用不可と判断されれば、2023年4月にボーイング社の「スターライナー」カプセル型宇宙船が加わるまで、クルー・ドラゴン1機体制での運用となる。
輸送機はクルーの生命線でもあるだけに、今後の動向が注視される。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2fffd359c51eb7b2fd6df32ad8e5dbe12fb00044

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マンガ家・板垣巴留が「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター 」鑑賞

2022-12-24 | 先住民族関連
映画ナタリー2022/12/23
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」が全国で公開されている。
2009年公開作「アバター」の続編であり、ジェームズ・キャメロンが監督を務めた本作。前作から約10年が経った神秘の星パンドラを舞台に、元海兵隊員ジェイク・サリーと先住民ナヴィの女性ネイティリ、そしてその子供たちが森を追われ海の部族に助けを求めるさまが描かれる。前作に続きジェイク役でサム・ワーシントン、ネイティリ役でゾーイ・サルダナが出演し、シガニー・ウィーバー、スティーヴン・ラング、ケイト・ウィンスレットもキャストに名を連ねた。
映画ナタリーでは「BEASTARS」「SANDA」で知られるマンガ家・板垣巴留に映画を鑑賞してもらい、インタビューを実施。海洋学者を志望していたキャメロンの海への愛、ナヴィと人間という異種族間の絆、板垣いわく“逆にコスパがいい”という3時間超えの映像体験について語ってもらった。
取材・文 / 小澤康平撮影 / 清水純一
「俺の海への愛を受け取れ!」という感じがすごくよかった
──前作「アバター」は2009年12月公開だったので、「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」は13年ぶりの続編となります。まずは率直な感想を教えてください。
いい意味で「アバター」とは方向性が変わったなと思いました。前作は立て続けにいろいろなことを起こして展開を作っていく感じでしたが、今作ではキャラクター同士の心の揺らぎや、関係を築いていく過程が描かれていて、登場人物の感情に重点を置いているのかなと。なんでもすぐにコロナと結び付けるのは失礼ですが、コロナ禍を経験したジェームズ・キャメロンが、心のつながりや家族というものをより深く描きたいと思ったのかもしれません。
──確かに1作目よりも内省的な物語であるように感じました。一方で、映像の迫力は他に類を見ない出来栄えになっていると思いますが、映画体験としてはいかがでしたか?
3Dで映画を観たのは久しぶりなんですが、すごかったです! ジェイクら家族がどうやって海と触れ合い、海の一族であるメトカイナ族になじんでいったかがセリフなしの映像で紡がれていましたが、ドキュメンタリーのように思えて没入感がありました。海に入った直後は寒いですけど、徐々に暖かくなっていくじゃないですか。それと同じように、自分も少しずつ海になじんでいく感覚になりました。

──海の描写はどう思いましたか?
自分がマンガで海がメインの回を描いたとき、ずいぶん早く描き上げたことを思い出しました。マンガだと、パースに正確にならなくていい分、人工物より自然物を描くほうが自由で楽です。でもCGでは逆に自然物をいかに自然に作るかが大切で、そこに心血を注いでると感じました。どこかで読んだのですが、ジェームズ・キャメロンって地球最深のマリアナ海溝へ潜航したんですよね?
──「ジェームズ・キャメロン 深海への挑戦」としてドキュメンタリーになっていて、2012年に記録となる世界最深単独潜航を達成しました。もともとは海洋学者志望でもあったそうです。
そういう人が作ってるんだから、それはすごいものになりますよね。何かに対する愛情が大作として上映されるというのは、巨匠だからこそできることだと思いますし、「俺の海への愛を受け取れ!」という感じがすごくよかったです。
──まさに海への並々ならぬ愛を感じました。アクションシーンについてはいかがでしたか?
前作はアバターとメカの戦いが中心だったと思うんですが、今回はアバターと人間の肉弾戦が多くて楽しかったです。私はナヴィが好きなので、本領発揮して人を圧倒するシーンが観られたのでうれしかった。ヒロインのネイティリが大暴れするシーンもよかったです。
ネイティリとクオリッチが好き
──「アバター」は公開当時にご覧になっていましたか?
観ました。このインタビューのお話をいただく少し前に、週刊少年チャンピオンの作者コメントに「高校時代に『アバター』の仮装をしたのを覚えてる」と書いたんですよ。高校生ってハロウィンの日の放課後にお菓子を持ち寄ったりするじゃないですか。私は美術学科だったので、そのときに友達と青く塗って仮装していましたね。それくらい高校時代にハマっていた作品でした。
──そうだったんですね! ツイートで拝見したのですが、2021年に観た印象に残っている映画として「ターミネーター」を挙げられていて。ジェームズ・キャメロンの作品は好きですか?
「ターミネーター」は初見だったんですが、すごく面白くて。人形をうまく使っていたり、若いジェームズ・キャメロンが試行錯誤して作っている情熱が伝わってきて、キラキラした映画に思えました。あとは「タイタニック」も好きです。
──「アバター」はどんなところに惹かれたんですか?
ナヴィのビジュアルですね。人よりもちょっと大きいサイズ感がリアルでよくて、NBA選手だったらこれくらいの人いそうだなみたいな。手足が長くて頭は小さいというスタイルなんですが、それをCGで作ったら気持ち悪くなりそうなのに、ちゃんとかっこよく思えたんです。ネイティリは人間の自分からしても美人なことがわかりますし。あとパンドラの植物が夜に光るように、体の斑点が光るじゃないですか。彼らもパンドラの一部なんだなという一体感を味わえたのもよかったです。「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」では海の部族であるメトカイナ族が出てきますが、ヒレのようなものが付いていたり、ちゃんと泳ぎに特化した体になっているのが面白かったです。今後も火や植物などいろいろな部族が考えられますよね。少年マンガ的に言うと、長期連載する見通しが付いているなと。
──続編の製作はすでに決定していて、2024年、2026年、2028年に1本ずつ公開されていきます。
あと3作あるってすごいですよね。ジェームズ・キャメロン、もう70歳近いのにめちゃめちゃ元気だなと(笑)。今作はシリーズ2作目でありつつ、世界観を広げる序章のような役目もあったと思います。今後もっといろいろな部族のデザインが見られたらうれしいです。
──ちなみに好きなキャラクターはいますか?
ネイティリとクオリッチがめっちゃ好きです。今回大活躍でうれしかったですね。
──それぞれどのあたりが好きなんでしょうか?
ネイティリはまず顔が好きで、泣き方があまりかわいくないところも好みです(笑)。静かに女の子っぽく泣くのではなくて、叫ぶように号泣しますよね。そういうときってあるよなと思いながら観ていました。クオリッチは偉そうに指令ばかりするタイプかと思いきや、自分でちゃんと前線に行くところが好きです。前作では肩に炎が燃え移るシーンがあったんですが、それを冷静にはたくのがかっこよくて印象に残っています。1つの動作だけでキャラクターの魅力ってアップするんだなと。
美談だけでは美談にならない
──「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」ではネイティリらオマティカヤ族とメトカイナ族の交流に加え、ナヴィと人間であるスパイダーの絆も描かれます。板垣さんはマンガ「BEASTARS」で異種族の友情、恋、対立などを描いていましたが、今作をどう観ましたか?
子供たちがスパイダーと仲良くしている一方で、ネイティリはスパイダーを認めていないのがよかったです。ネイティリが抱いている人間へのトラウマが、子供たちの交友関係に影響しているのは家族の呪縛という感じで。やっぱり美談だけでは美談にならないと言いますか。
──ネイティリはスパイダーにあることをしてしまいますが、それについて謝らないですよね。
ネイティリはいまだに人間に対して差別意識があって、それを描いているからこそナヴィの子供たちとスパイダーの友情が美しく見えると思います。現実世界の問題といくらでも結び付けられるデリケートなテーマですが、だからこそフィクションでも触れていかなければいけない。綺麗事ばかりを描いていたら、触れてはいけないタブーな題材になってしまう気がします。
──なるほど。異種族間の交流のほか、家族のあり方もテーマの1つになっています。「家族が一番大事」という価値観はアメリカ映画でよく描かれますが、板垣さんの家族観はどのようなものになりますか?
国民性の違いもあると思いますが、私は家族に関しては淡白な考え方かもしれません。ただ今おっしゃっていただいたようにコロナ禍で変化もあって。昔は家族というものから早く独立したいと考えていて、ずっと家族に育てられてきたはずなのに、なぜか天涯孤独でいたいと思っているような人間でした。でも30歳を前にして、身近な人との間で発生する化学反応にこそ価値があり、そこからいいものを見出だせるという考え方になってきたんです。外からダイレクトに降りかかる影響より、グラデーションで変わっていく関係性の変化のほうが、自分にとって刺激になっているんじゃないかという。新しいものよりも時間を掛けて構築してきたものからのほうが、影響を受ける度合いが大きいかもしれないと今は感じています。
人生というスパンで考えるなら映画館に行くほうが逆にコスパがいい
──今作はどんな人にお薦めしたいですか?
平凡な答えになってしまいますが、子供がいる方には響くと思います。子供は親に対する愛情や敬意を日々意識的に抱いているわけではないかもしれませんが、親は子供の成長や気持ちを日常的に感じているじゃないですか。私も子供がいてもおかしくない年齢だからこそ、親子関係のシーンではグッと来ました。
──「アバター」は世界歴代興行収入1位の映画ですが、公開は13年前ということもあり、今の若い世代で観ていない方はいると思います。劇場で3D映画を観たことがない方はいるでしょうし、映画は配信で観るものと考えている人もいるかもしれません。
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」は3時間12分あるじゃないですか。「3時間超えか」と思うかもしれませんが、だからこそ映画館で自分を没入させないともったいない気がするんですよね。家で観る3時間と映画館で観る3時間は、体験として確実に別物だと思うので。倍速で映画を観る人もいるそうですが、それって時間を有効活用しているようで、プロが考えた時間、間、タイミングを全部逃しているということ。人生というスパンで考えるなら映画館に行くほうが逆にコスパがいいし、ぜいたくに3時間を使うことができると思います。
──映画館はそういった意味で非日常を味わえる場所であり、「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」はそれを最大限に体験できる作品だと感じます。ジェームズ・キャメロンもきっとそういう思いで作ってますよね。
絶対そうだと思います。今年「トップガン マーヴェリック」が公開された際、トム・クルーズが「絶対に映画館で観て」と言っていましたし、映画が全盛期だった頃を知るベテランたちが今、劇場で観るべきものを作っている。それはすごくいいことと言いますか、ありがたいなと思います。あとは配信という文化が進んでいるからこそ、映画館ではポップコーンやジュースを買って観るというカルチャーを体験してほしいですね。
板垣巴留(イタガキパル)
2016年3月、週刊少年チャンピオン(秋田書店)にて4号連続の読み切り作「BEAST COMPLEX」でデビュー。読み切りの好評を受け、同年9月に「BEASTARS」を連載開始した。「BEASTARS」「BEAST COMPLEX」ともに、草食動物と肉食動物が共生する世界を描いている。2017年、「BEASTARS」で宝島社が刊行する「このマンガがすごい!2018」オトコ編で第2位を獲得。2018年には同作が第11回マンガ大賞、第21回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞、第22回手塚治虫文化賞新生賞、第42回講談社漫画賞少年部門を受賞した。2021年7月より週刊少年チャンピオンで、「SANDA」を連載中。単行本が6巻まで刊行されている。
https://natalie.mu/eiga/pp/avatar2

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ミネソタ通信②】当選知事が語った「デモクラシー健在!」

2022-12-24 | 先住民族関連
InFact2022年12月23日
アメリカの中間選挙は連邦議会の上院で決選投票となったジョージアで民主党の現職が勝利し、100議席のうちの51議席を獲得。その直後に民主党議員1人が離党し無党派となったが、結果的に50対49という民主党勝利の結果となった。仮に無党派となった議員が共和党の側についたとしても、副大統領のハリス氏が上院議長としての1票を行使できる。
連邦議会下院は予想通り共和党が過半数を制する結果となったが、民主党としては最小限に食い止めることができたというのが受けとめで、民主党が予想外に健闘したというのが今回の選挙の受けとめだろう。メディアが競って共和党の勝利を予測する中、なぜこうした選挙結果となったのか。それを考える上で各州の選挙結果に注目する必要が有る。ミネソタ通信の2回目は、州の選挙について伝える。(柏木明子)
中間選挙では、アメリカの各州で様々な選挙が行われている。アメリカの各州では、連邦議会と同様に二院制が採られている(一州を除く)。私の住む中西部のミネソタ州では、これまでは、上院(67議席)は共和党が、下院(134議席)は民主党が過半数を占めていた。事前の予想では、物価高や治安悪化への懸念などが追い風となって共和党が上下両院共に奪うとの見方が強かったにも関わらず、結果は、知事選、州議会上下両院ともに民主党が過半数を制するものとなった。その結果は驚きを持って受け止められている。上院については、州民主党議員のトップリーダーが「ミネソタ州上院の奇跡」と表現したほどだ。
州議会では、公共投資、教育、福祉保健、労働、商工業、農業、環境政策、治安、財政、税制等、州民の生活に直接関わる多くの法案が審議・制定され、州予算が承認される。今回の選挙結果によってねじれ議会が解消され、州民主党議員が推進する多くの法案が成立しやすい環境が生まれることになる。民主党が州知事と両院を制したのは10年ぶり(議会としては2013-2014年以来)だ。何が有権者を動かしたのか。
「ミネソタの皆さん、この州に民主主義は健在です。よくやってくれました。(“Minnesota, democracy is alive and well in this state. Well done.”)。」 現職のティム・ウォルツ知事は、投票日の夜に開かれた民主党の祝賀パーティで、集まった支持者に向かって、笑顔でこう述べ拍手した。一方、8ポイント差で敗れた共和党知事候補のスコット・ジェンセン氏は同じ頃、「赤い波(レッドウェーブ)は来なかった。来たのは青い波(ブルーウェーブ)だった」と、共和党・民主党のシンボルカラーに例えながら、率直に敗北を認めた。
ウォルツ知事が「民主主義は健在」と強調したのは、ここミネソタ州でも民主主義の危機が懸念されるような動きがあるからだ。象徴的なのが、共和党からの立候補者の顔ぶれだ。今回の中間選挙では、トランプ前大統領の根拠のない主張に同調し2020年の大統領選挙の結果を否定、または疑問視する多くの立候補者が州議会選挙に出馬していた。その数はMPR(ミネソタ公共ラジオ)の調べによると、共和党立候補者の4人に1人、43人にも及んでいた。しかも、選挙を管轄する共和党の州務長官(The Secretary of State)候補までもが、いわゆる「選挙否定論者」だった。この州務長官は主な任務として、大半の州で、州内で実施される郡や市などローカルなレベルも含めた選挙の最高責任者の役割を担う。ミネソタ州もそのひとつだ。有権者の選挙人登録(voter registration)から、公正な選挙の実施、選挙結果の認証に至るまで、選挙に関わる業務全般を統括する。過半数の州では、州務長官も選挙で選ばれる。因みに、今回の選挙では、ミネソタも含め共和党からの州務長官立候補者の過半が「選挙否定論者」、または「選挙疑問視論者」だったことが注目されていた。そしてミネソタ州では、民主党候補が前述の共和党候補を、9ポイント差で破った。
知事選は僅差を予想させる世論調査も一部では出ていたが、再選を目指していたウォルツ知事の圧勝となった。ジェンセン氏と当州務長官候補は、選挙直前になってトランプ氏からの一方的な支持を受けたが、連邦議会の状況に似てトランプ氏の支持は勝利にはつながらなかった。
とはいえ選挙結果全体で見れば、民主党の一方的な勝利とも言えない。民主党は、州議会選で、今選挙で都市部に加え、郊外の選挙区で予想以上の強さを示した。しかし都市部、郊外以外では、共和党がむしろ勢力を伸ばしている。ミネソタ州における民主党と共和党の勢力は、州の都市部と地方で対照的だが、今選挙でその傾向がいっそう強まった格好だ。
「最も多様性のある州議会」の誕生
注目されるのは当選者の顔ぶれだ。今回の州議会選挙(上院67議席/下院134議席)は、ベテラン議員の多くが退職を表明し、現職の約4人に1人が出馬しないという異例の選挙になった。退職議員47人の議会経験年数の合計が600年にも達し、ベテラン議員の経験値が一挙に失われることが懸念されたほどだ。
結果として、大きな変化がもたらされた。MPRによると、州議会選では上下院合わせ57人もの新人候補が当選。人種、民族、ジェンダーの面から見て、地元メディアがこれまでで「最も多様性のある」と形容したが議会が誕生した。例としてまず挙げられるのが、州上院初の黒人女性議員の誕生だ。しかも1人でなく一挙に3人が当選した。その1人が、幼い時にソマリアから家族と共にミネソタに移住した25歳のゼイナブ・モハメド氏だ。コミュニティオーガナイザーとして、これまでNPOで黒人の移民女性の政治参加・市民活動参加の向上を目指す活動や、地域政策のアドボカシー活動を続けてきた。当選の知らせを受けて、真っ先に、若い人、有色人種の人、先住民の人、女性に向けて「これはみなさんの勝利です(This is your victory)」とツイートしている。さらに彼女の当選は、州の最年少議員の記録を塗り替え、初のZ世代議員の誕生となった。ソマリア系議員は、すでに連邦議会及び州上下院を合わせると4人が現職だ。
州下院においても多様性が高まった。初当選者の中には、黒人、ラテンアメリカ系アメリカ人のほか、アジア系アメリカ人の中では州で最も人口の多いモン族、日系人、そして初のトランスジェンダーの議員が含まれる。国勢調査によると、この20年でミネソタ州の白人以外の人口割合は約1割から2割に増加した。一方、選挙前の州議会の同比率は約13%にとどまっていた。報道によると今回の選挙結果、この非白人の比率が、人口比には及ばないものの17%にまで高まった。
「『最も多様な州議会』の意義についてどう考えますか。」 再選直後の記者会見で、質問されたペギー・フラナガン副知事は次のように答えた。「地域を代表する議員が、地域の多様性をより正確に反映するようになり、議会に新しい声が届くようになれば、民主主義がよりよく機能するようになるでしょう。それは私たちみんなにとってよいことです」。フラナガン氏は、アメリカ史上、「選挙で選ばれた(行政府の中で)最も高い地位にあるネイティブアメリカン女性」でもある。因みに、ミネソタ州では副知事は知事の”running mate” として、大統領選と同様にペアで選挙を闘う。
当選した人種的マイノリティ議員の多くは、民主党選出だ。共和党からも、女性や多様な背景を持つ候補を擁立する動きが顕著にみられた。
Z世代の政治参加     
民主党勝利の要因として、今年6月の人工妊娠中絶の権利に関する最高裁の判決が大きかったと言われている。この歴史的判決も対して、もっとも強い反発の声を上げたのがZ世代を含む若い女性だった。本稿執筆時点で、世代別の投票率は明らかになっていない。ただ。ウォルツ知事は、選挙から4ヶ月以上前の判決について、「誰も忘れていなかった。(選挙に)大きな影響を与えたと思う」と話している。
さらに、若者の恒常的に低い投票率に触れながら「今回は違うように感じる。若い人たちは単に投票しただけではない。選挙イベントにも参加し、政治に対して何を求めているのかを訴えていた」と、若者の果たした役割について評価する。
Z世代は1990年後半以降に生まれた世代で、上述のようにミネソタ州が急速に多様化した時代に育った世代だ。一般的に、他世代よりもインクルーシブ(他者の多様性を尊重する)で、民主党支持派が共和党支持派を大きく上回ると言われている。
ウォルツ知事は、選挙全体を振り返り、「市民の民主主義への強い思い」が示されたこと、さらに、多くの若者が選挙活動に参加し、また投票所での暴力的行為も見られなかったことなどを挙げながら、「非常に勇気づけられる(”super encouraging”)」と選挙を総括した。
一方、地元紙の報道によると、州共和党は今回の惨敗を受けて、ジェンセン氏のほか、党関係者からも、これまでの戦略を再考する必要があるとの声が出ているという。
https://infact.press/2022/12/post-21201/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする