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函西高文芸部誌が全道最高賞、2年連続全国へ アイヌ語用いた俳句や民話特集

2022-12-20 | アイヌ民族関連
北海道新聞12/19 16:00

来夏、鹿児島市で開かれる「2023かごしま総文」に出場する函館西高文芸部の湊谷颯大部長(右)と坂井伶衣さん
 アイヌ民族と文学に着目した特集をはじめ、部員の作品などをまとめた函館西高文芸部の部誌「kanto(カント)」第3号が北海道高校文化連盟第20回全道高校文芸研究大会文芸部誌部門で最高賞を獲得し、2年連続同部門での総文祭出場を決めた。短歌部門でも坂井伶衣さん(2年)が2年生以下での最高位を受賞、2部門で来年7月31日から鹿児島市で開かれる総文祭に出場する。
 全学年の生徒が稜北高と統合後の入学生になった昨年度に創刊した「kanto」。タイトルは「天空」を意味するアイヌ語で、昨年度末からアイヌ民族と文学に関する第3号の特集掲載を目指し、準備を進めてきた。特集には口頭で伝えられてきた物語の一つ「アイヌ神謡集」の書評をはじめ、函館市北方民族館資料から読み解くアイヌ民族の一年間、アイヌ語を用いた作品(俳句)作りと句評などを掲載した。
 同誌の編集も手がけた湊谷颯大部長(2年)は「雨が降る小さな町やカムイチェプ」とアイヌ民族にとって特別な魚サケ(カムイチェプは神の魚の意味)とアイヌ民族が暮らす日々を想像して詠んだ。湊谷部長は「身近だが、触れる機会がなかったため作品作りは大変でしたが、言葉の一つ一つを調べ、発見も多かった」と振り返る。「頑張って作った部誌が評価されてよかった。全国の高校生との交流で有意義な時間を過ごしたい」と来夏を心待ちにする。
 一方、この春、文芸部に入部した坂井さんは、女生徒が向かい合う場面を描いた短歌「ローファーが向かい合わせで反射する靴越しの君何を見てるの」が支部大会で「青春を感じる」、全道大会で「ユーモアがある」とそれぞれ評された。
 小学1年から続けたバレーボールから一転、小説を書きたくて入部した文芸部。例年、句会などが予定される総文祭に「頭が追いつかない状態。今後、作品を増やし、目標の小説も書いてみたい」と話す。また、全国の高校生が一堂に会する大舞台にも「方言が好き。また、作品から分かる人の価値観をいろいろ発見できたら」と胸を高鳴らせる。(野長瀬郁実)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/777192/

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アイヌ語で「展示室」どう表現? 白老・ウポポイで「舞台裏」展示会 案内表示や開業までの経緯紹介

2022-12-20 | アイヌ民族関連
北海道新聞12/19 22:35

開業までの歴史を資料とともに紹介する第1章の展示コーナー
 【白老】アイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が2年前に開業した舞台裏を紹介する展示会「ウポポイのことばと歴史」が、ウポポイ内の国立アイヌ民族博物館で来年2月12日まで開かれている。開業までの経緯のほか、施設内の案内表示をアイヌ語でどのように表現するのか検討過程などを解説。3章構成で展示し、資料計約60点が並ぶ。各章の内容を紹介する。
■第1章 ポロトの歴史と、ウポポイができるまで
 ウポポイが立地するポロト湖畔は1984年に開館した旧アイヌ民族博物館を中心にアイヌ文化を発信し、ポロト湖でのスケートやワカサギ釣りなど観光地としてもにぎわっていた。同館の年間来場者数は91年に最多の87万人を記録。近年は世界の先住民との交流も活発になっている。こうしたポロト湖畔の歴史を年表形式で、同館の開館記念ポスターや先住民との交流イベントに関する冊子などの資料31点とともに紹介している。
■第2章 ウポポイのアイヌ語
 ウポポイ内の案内表示はアイヌ語を第1言語としている。「展示室」や「シアター」などは既存のアイヌ語になく、アイヌ語に詳しい研究者やウポポイ職員らが検討を重ねた。展示では検討過程をパネルで紹介。実際に施設内で使われている115のアイヌ語表示と、対応する日本語のリストも公開した。佐々木史郎館長は「いろんな議論をへて一つの言葉に決まったが、これが標準ではない。議論はまだ続いていると理解してほしい」と話す。
■第3章 博物館設立準備室での試み
 国立アイヌ民族博物館の設立準備室は2015年に東京と札幌に立ち上がり、その後白老にも設置された。博物館を一からつくり上げる流れを体感してもらおうと、展示室の検討に使った図面やサンプル、第1回特別展のレイアウトの模型などを並べた。担当者は「現在の展示室がどのようにできあがったのか、イメージしてほしい」と話す。(佐藤圭史)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/777622/

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アイヌ語に関する情報を総合的に集めた英語のハンドブック出版

2022-12-20 | アイヌ民族関連
NHK12月19日 19時08分

日本の先住民族、アイヌの人たちが使う言語「アイヌ語」のこれまでの研究成果をまとめた英語のハンドブックが出版されました。執筆した研究者は英語でこうした本が出版されるのは初めてだとしていて、アイヌ語に関する知見を世界に発信したいとしています。
アイヌの人たちが使うアイヌ語は、日本語だけでなく世界中の言語とのつながりがほとんどみつかっていない珍しい言語として知られていますが、研究論文の多くは日本語で書かれ、英語の文献が数少ないのが現状です。
国立国語研究所はアイヌ語研究の裾野を海外にも広げようと、アイヌ語についての研究を網羅した英語版のハンドブックを7年がかりで編さんし、このほどドイツの出版社から出版されました。
本は、東京理科大学のアンナ・ブガエワ准教授ら17人の研究者が執筆し、アイヌ語の文法構造や歴史、それに各地域に伝わる昔話などの口承文学や方言までこれまでの研究成果がおよそ700ページにわたって解説されています。
ブガエワ准教授は、アイヌ語という言語について体系的に解説した本が英語で出版されるのは初めてだとしていて、「アイヌ語に関わる情報を総合的に集めたいわば図鑑です。言語学に貢献するとともに日本には日本語だけではなくアイヌ語もあるということを世界に発信して関心を高めていきたい」と話しています。
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20221219/7000053516.html

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Makuakeにて、アイヌ文様ストールのクラウドファンディングを開始!伝統的な文様と現代的なデザインの融合で、アイヌ文化を全国へ発信。

2022-12-20 | アイヌ民族関連

PRタイムス2022年12月19日 15時00分
刺繍家 早坂ユカ
北海道札幌市在住のアイヌ民族の刺繡家・早坂ユカが、12月16日(金)よりクラウドファンディングサイト「Makuake」にて、アイヌ文様をデザインしたストールを販売開始しました。
伝統的なアイヌ文化と現代的なファッション感覚の融合に挑戦し、アイヌ文化を全国に発信することを目指しています。
【販売ページ】https://www.makuake.com/project/sapporo_ainu/
このストールは、2020年に札幌市が立ち上げた「SAPPORO AINU PRODUCTS」事業の一環として、試作品を制作したものです。この事業では、「現代の暮らしの中に息づくアイヌ文化を。」というコンセプトのもと、様々なアイヌプロダクトが生み出されました。
今回は、「SAPPORO AINU PRODUCTS」事業で試作したストールを実際の商品として、多くの皆様のもとにお届けしたいと思い、クラウドファンディングを立ち上げました。

●アイヌ文様ストール/18,000円(税込)
サイズ: W170cm×H90cm
カラー:オレンジ/ネイビー
素材 :ポリエステル
刺繡家である私は、アイヌ文様の刺繍がもつ美しさをもっと一般の方に知っていただきたいと考えていました。
しかし、アイヌ民族の女性たちがつくり出す伝統的なアイヌ文様の刺繍品は、とても美しい工芸品であると同時に、すべてが手仕事でつくられるため高価なものです。
そこで、その伝統が持つ美しさをそのまま活かしつつ、普段の暮らしの中で使っていただくために、よりお求めやすい価格で提供することを目指しました。
ストールの半分にあしらわれたアイヌ文様は、単なるグラフィックとしての模様ではなく、実際のアイヌ刺繍の味わいを感じられるよう、刺繍のステッチの風合いを活かして図案化しています。
このストールをたくさんの方々が手に取って、アイヌ文様の美しさや意味を知っていただけたら嬉しく思います。
【早坂ユカ】
北海道・旭川にてアイヌ民芸品店を営む両親のもとで、幼い頃からアイヌ文化に触れて育つ。
母から受け継いだアイヌ刺繍の作品制作をはじめ、「アイヌ・アート・プロジェクト」の一員として音楽活動に参加するほか、国内外でアイヌ古式舞踊を伝える舞台に立つなど、幅広く活動を行っている。
北海道アイヌ協会認定「優秀工芸師」。北海道アイヌ協会主催「北海道アイヌ伝統工芸展」、アイヌ民族文化財団主催「アイヌ工芸作品コンテスト」などで受賞多数。
所属:アイヌ・アート・プロジェクト、アンコラチメノコウタラ、札幌ウポポ保存会、札幌アイヌ協会
■アイヌ民族とは?
アイヌ民族は、東北北部から北海道、サハリン、千島列島に及ぶ広い地域に暮らしてきた、日本の先住民族です。自然界をはじめあらゆるものに魂が宿ると考え、生きとし生けるもの、万物との共生を大切にするなど、独自の文化や信仰、言語を持ち、周辺の民族と交易を行い、暮らしてきました。明治以降さまざまな苦難を経験しながら、現在もその伝統を受け継ぎ、さらに発展させ、新しい文化を生み出そうと多くのアイヌ民族が活動しています。
■札幌アイヌデザイン認証について
本プロジェクトで販売するストールは「札幌アイヌデザイン認証」商品です。
※札幌アイヌデザイン認証とは・・・札幌アイヌ協会とその協力者が望む未来を構築できるプラットフォームとして、商品開発の背景・本質や製品・サービスにアイヌ民族の声が反映されていることを保証し、他商品との差別化を図るための制度です。多岐にわたるアイヌ民族の文化的財産を世界に向けて幅広く発信し、北海道の地域資源としてのブランディングを目指しています。
<本件に関するお問い合わせ先>
早坂ユカ syun.yuni@gmail.com
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000113360.html

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小樽市総合博物館本館でアイヌ伝統舞踏公演開催

2022-12-20 | アイヌ民族関連
小樽ジャーナル2022/12/19
 小樽市総合博物館本館(手宮1)で開催中の2022(令和4)年度アイヌ工芸品展「アトゥイ海と奏でるアイヌ文化」に関連し、12月18日(日)閉館後の17:00から、アイヌ伝統舞踏公演「白糠のフンペリムセ(クジラの踊り)」が同館しずかホールで開催され、物語の読み聞かせや白糠アイヌ文化保存会(磯野惠津子会長)によるむっくりの演奏とクジラの踊り等が披露された。
 沢山の恩恵を与えアイヌの生活に欠かせない海とアイヌ文化をテーマに、今回の展示に合わせて図録にも特集し白糠町におけるアイヌ文化と海を紹介した。
 白糠アイヌ文化保存会(1984年9月設立)は、アイヌ文化の保存伝承活動が認められ、1994年(平成6)年には国の重要無形民俗文化財に指定された。
 現在、2歳の子どもから大人まで約30名が会員となり、日々踊りなどの練習に励み、道内外でもアイヌ文化の伝承に尽力している。白糠町はすべての学校で踊りを披露している。

 踊りを分かりやすく説明した絵本「白糠フンぺクジラ伝説」の朗読や、アイヌ民族に伝わる竹製の楽器“むっくり”の演奏も披露され、小樽の会場では、白糠の海の踊りで漁に出た家族の無事を祈る「アトゥイソーリムセ」と、代表的な踊り「フンぺリムセ(クジラの踊り)」の2つを、保存会メンバー11名が演舞。参加者約50名が、アイヌ文化に触れる貴重な時間を過ごした。
 磯部会長は、「最初にむっくりの名士による演奏があり、踊りはもっともっと長いものではあるが、今日は皆さんに披露できて快かった」と満足していた。
 参加した清水道代さんは、「むっくりの演奏に感動した。小さな子どもも会員となり、皆さんのアイヌ文化を受け継いでいこうとする気持ちが凄い」と話した。
https://www.otaru-journal.com/2022/12/post-88895/

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「チシポの会」作品展 アイヌ文様の刺しゅう紹介 白老

2022-12-20 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2022/12/19配信
 白老町のアイヌ文様の刺しゅうサークル「チシポの会」(石井シゲ代表)の作品展が、同町のしらおいイオル事務所チキサニで開かれている。会期は来年1月24日まで。  同会メンバー5人がアイヌ文様の刺しゅうを施したバッグ12点、小銭入れ6点、…
この続き:209文字
ここから先の閲覧は有料です。
https://www.tomamin.co.jp/article/news/area2/95651/

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人気漫画を彷彿 函館市北方民族資料館、展示資料入れ替え

2022-12-20 | アイヌ民族関連
函館新聞12/19(月) 10:12配信

資料の一部を入れ替えて展示している函館市北方民族資料館
 函館市北方民族資料館(末広町)は11月下旬から展示資料の一部を入れ替えた。アイヌ民族をはじめとする北方諸民族の民族衣装や装飾品、民具など約70点を新たに並べた。
 同館の展示資料は市立函館博物館の旧蔵資料や函館の考古学者、馬場脩、児玉作左衛門らのコレクションが中心。11月19~26日の館内の薫蒸作業に合わせて、一部資料を入れ替えた。
 木戸忍館長は明治末期の北海道などを舞台にしてアイヌの風俗なども描いた野田サトルさんによる人気漫画「ゴールデンカムイ」(集英社)に触れ、「民族衣装や装飾品など、『ゴールデンカムイ』の作品に登場するような資料を並べた。ファンの心に刺さるのでは」と話す。
 アイヌをはじめとする北方諸民族の衣装や装飾品を並べる1階の展示室では壁面側の展示品をほぼ入れ替えた。同作に登場するアイヌの女性占い師「インカラマッ」のイメージも重なる樺太アイヌの刺しゅう衣は、黒地に赤や青、白など色鮮やかな糸で文様が施され、美しさが際立ち、同館人気の展示品。花びらが描かれた円形の真ちゅう製装飾が施された頸飾帯も見ることができる。
 また、アイヌ語が和名として定着している動物トナカイ関連ではウィルタ民族の愛らしい木偶や、イテリメン民族が着用した極寒地域ならではの暖かそうな毛皮の冬服が目を引く。
 2階の展示室にある占いに使う「キムン・シラッキ」はキツネの頭骨で、このほか、占う対象によって使い分けたという魚やアホウドリの頭骨も並ぶ。「ストゥ」と呼ばれる木の棒はいさかいを制裁するときに用いられ、3種類を展示。形状が異なり、1本は八雲由来の椎久コレクションのもの。キセル入れなどの喫煙具はきめ細かな木彫を楽しむことができる。
 開館時間は冬期間(11~3月)は午前9時~午後5時。4月以降は午後7時まで。12月31日~1月3日は休館。入館料は一般300円、学生150円。問い合わせは同館(0138・22・4128)へ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2956622d97680a70dfa95ea8c05c47f1bfa1f494

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ヘイトへの「お墨付き」=大治朋子

2022-12-20 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2022/12/20 東京朝刊 有料記事 1042文字
 <ka-ron>
 「発言は撤回させた。辞職ドミノと言われたくないので更迭はしない」。差別的発言を繰り返す杉田水脈総務政務官をかばう岸田文雄首相のホンネを想像してみた。
 杉田氏といえば2018年に月刊誌「新潮45」(新潮社)への寄稿で性的少数者について「生産性がない」などと記し、同誌が休刊に追い込まれた。16年には国連女性差別撤廃委員会に出席し、アイヌ民族衣装をまとった人々を「コスプレおばさん」「品格に問題」とブログに書いて批判を浴びた。
 差別的な発言であることは言うまでもないが、そもそもこうした政治家の言動は市民社会にどのような影響を及ぼすのだろうか。
この記事は有料記事です。 残り762文字(全文1042文字)
https://mainichi.jp/articles/20221220/ddm/002/070/092000c

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日本経済支えた北海道のニシン漁と「国鉄岩内線」

2022-12-20 | アイヌ民族関連
東洋経済2022/12/20 

蒸気機関車時代の国鉄岩内駅の様子。木箱に詰められた水産物が駅に運ばれ鉄道貨物で各地に出荷された(写真:岩内町郷土館)
北海道岩内町は、小樽市から北海道中央バスの高速いわない号で1時間半、北海道新幹線の新駅の建設が進む倶知安町からはニセコバスで45分ほどの場所に位置する日本海沿岸の港町で、1985年までは函館本線小沢駅より分岐する国鉄岩内線の終着駅があった。
岩内町の歴史は古く、すでに室町時代から和人の村があったと伝えられているほか、江戸時代後期に群来したニシンによってニシン漁の街として大きく栄えた。筆者の母方の祖先も、江戸時代後期から蝦夷地と呼ばれていた北海道のニシン漁に携わり、青森県となった津軽藩の鰺ヶ沢から岩内へと移住したニシン漁師の1人で、その後、鮮魚卸商に転身した尾崎和次郎という。
現在でも岩内町内には和次郎の長男が漁師だった父を偲び、海の安全を願って大正時代に建立した地蔵が現存している。
江戸時代からニシン漁で栄えた北海道岩内町
岩内町が大きく発展を始めたのは江戸時代後期にあたる1700年代後半、町が接する日本海にニシンが群来し漁獲量が急増したことによる。ニシンはそれまでの食用に加えて、魚油なども生産されるようになり、油をしぼった後に残るニシン粕が肥料として有用であることがわかると、瀬戸内地方の綿花栽培の肥料として飛ぶように売れた。ニシン粕は、さらにミカンや藍などの肥料としても使用され日本の農業生産力の向上に貢献した。
江戸時代には、すでに樺太・北海道と大阪との間を日本海と瀬戸内海経由で結ぶ北前船による交易ルートが整備されており、北前船の寄港地の1つであった岩内のニシンは日本各地へと出荷されていった。
食品としてのニシンは、日数のかかる船舶輸送でも保存が利くように干物に加工された干し数の子や身欠きニシンとして北前船の各寄港地に出荷され、京都では身欠きニシンを活用したニシンそばの文化をはぐくんだ。さらに、糠ニシンは食欲を掻き立てるスタミナ源として郷土の味となり漁師や鮮魚店の家庭ではお茶漬けとしても親しまれた。
ニシン漁には多くの人手を必要としたことから漁期に合わせてヤン衆と呼ばれる多くの漁師が東北などの国内各地から岩内にも集まった。筆者の祖先となる尾崎和次郎も江戸時代後期から北海道のニシン漁に携わり、その後、青森県となった津軽藩の鰺ヶ沢から岩内へと移住した漁師の1人だった。津軽藩は度重なる飢饉に見舞われたことからニシンの豊漁に沸く新天地を求めて移住をしてきたと伝えられている。
このように江戸時代からニシン漁と北前船の交易によって栄えた岩内町であるが、それ以前の北海道の歴史についても知る人は少ない。
近畿地方に政権を置いた古代日本がその勢力を東北以北に拡大するために行われた蝦夷征伐は北海道にも達しており、飛鳥時代の605年には、阿部比羅夫の蝦夷征伐で後方羊蹄(しりべし)に郡領と呼ばれる行政官を置いた。函館本線比羅夫駅がある後志(しりべし)地方の倶知安町比羅夫の地名はこれにちなんだものだ。さらに札幌市に隣接する江別市には飛鳥時代から奈良時代にかけて築かれたとされる江別古墳群が現存しており、飛鳥時代にすでに道央地域まで和人が達していた痕跡がある。
平安時代後期からアイヌ文化が登場
稲作ができなかった北海道では本州以南で稲作が普及した弥生時代以降も縄文時代の生活様式が継承された続縄文時代が続き、飛鳥時代から鎌倉時代にかけては北海道独自に普及した擦文土器を使用した擦文文化が栄えていた。一方で、北海道東部のオホーツク海沿岸では、これとは異なる文化を持った海洋漁猟民族のオホーツク人が居住していた。アイヌ文化が登場するのは和人との交易によって鉄器が普及し土器が消滅した平安時代後期から鎌倉時代後期頃となる。
道南地域の渡島半島には平安時代後期までに多くの和人が定住し、1135年には北海道最古の神社となる船魂神社が函館に創建された。鎌倉時代から室町時代にかけて和人の居住地は、太平洋側は鵡川方面へ、日本海側は岩内・余市方面へと海岸線沿いに広がった。
室町時代の1457年に函館の和人鍛冶屋が口論の末、アイヌ男性を刺殺したことがきっかけとなり発生したコマシャインの戦いでは「岩内にあった和人の村も襲撃され犠牲者が出た」という逸話も地元のお寺に言い伝えられている。
江戸時代に入ると、徳川家康から蝦夷地の統治者として認められた松前藩が成立した。松前藩は、米の取れない無石の藩であったことから「商い」が藩財政の支えとなっており、北海道はもとより樺太や千島列島各地に商場(あきないば)を開き、漁業やアイヌとの交易拠点を整備する。それぞれの商場では、ニシンや昆布などの漁が行われたほか、アイヌとの物々交換により入手したラッコ皮や鷹などを北前船による交易を通じて本州各地へ販売した。樺太と北海道各地と大阪との間を日本海と瀬戸内海経由で結んでいた北前船は、ただの運送船ではなく寄港したそれぞれの港で北前船自体が各地の特産品を売り買いしていたことから、海の総合商社としての機能も持ち合わせていた。
松前藩成立当初は藩主自らが各地に交易船を送り、松前に支店を置いた近江商人が実務を支えていた。しかし、次第に交易の仕組みが複雑化してくると「商い」が武士の手には負えなくなってきたことから、各商場の交易権そのものを商人に代行させて藩は運上金という金銭による租税を得るという場所請負制へと移行した。
岩内もこうした松前藩直轄の商場の一つとして藩の出先機関が置かれ、ニシンなどの特産品と米や味噌などの日用品の交易が行われ住民の生活を支えていた。
江戸時代後期の1800年代に入ると不凍港を求めて南下政策を進めるロシア艦による樺太や利尻の和人地の襲撃事件がたびたび発生する。ロシアに対する警戒心を高めた江戸幕府は1807年に北海道と樺太、千島列島を幕府直轄地として東北諸藩に警備を命じ開拓を推し進める。明治維新を迎えた1869年には岩内に新政府の役場が置かれた。
岩内線の開業とニシン漁
明治維新後も岩内と各地を結ぶ北前船による交易はしばらく続くことになる。しかし、1872年に新橋―横浜間で開業した鉄道は、1891年には上野―青森間が全通するなど全国への延伸を続け、北前船はその役割を鉄道に譲る形で徐々に姿を消していった。
岩内での鉄道開業は比較的早く、函館本線函館―小樽間が開業した翌年の1905年に民間の手により岩内港と函館本線小沢駅との間を結ぶ岩内馬車鉄道が開業。その後1912年に岩内馬車鉄道を置き換える形で国有鉄道の岩内線岩内―小沢間14.9kmが開業した。岩内のニシン漁は1960年代初頭まで豊漁が続き、鉄道もこうした海産物の輸送に活況を呈した。国鉄貨車の争奪戦は苛烈で、貨車については当時の魚場では5トン車や15トン車とは言わず、ワフやワムなどの形式称号で通用していたという。
国鉄岩内線は、相次ぐ国鉄の労使闘争やサービスの悪さなどにより荷主や旅客の信用を失い貨物輸送はトラックに、旅客輸送も便数が多く小樽経由で札幌を直結する高速バスに客を奪われ1985年に廃止されてしまう。しかし、かつてのニシン漁により育まれた伝統の食文化は今も脈々と岩内に続いている。
(櫛田 泉 : 経済ライター)
https://article.auone.jp/detail/1/3/6/7_6_r_20221220_1671478402317863

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「ひとりで食べることもできない」ブラジルのアマゾンで先住民の子どもたちに広がる健康被害

2022-12-20 | 先住民族関連
TBS12/19(月) 12:38配信

シリーズ「現場から、」。南米ブラジルのアマゾンで、先住民の子どもたちに神経系の障がいなど健康被害が広がっていて、現地の医師らは詳しい調査の必要性を訴えています。
アマゾン川の支流をボートで5時間ほど遡った奥地に、先住民「ムンドゥルク族」の集落があります。8歳のアレックスくんは出生時に異常はみられなかったものの、成長とともに障がいが明らかになってきました。
父 アオド・カロさん
「物をつかめず、ひとりで食べることもできません。いろいろなことができません、座ることもできません、少ししか話すことができません。(医師の診療でも)アレックスのどこに問題があるのか、今まで何も答えが出ていないのです」
異変が起きているのは彼だけではありません。先住民集落の訪問診療を20年にわたり続ける医師は…
州立病院 ジェニングス医師
「私が最も懸念しているのが、脳の異常とともに生まれてくる子どもです。この地域では実際、多くの子どもがこのような症状を持っています」
さらに、医師は死亡例にも着目しています。
州立病院 ジェニングス医師
「私が把握しているだけでも、この地域全体で100人以上が神経系の異常で亡くなっています、そのほとんどが子どもでした」
いったい、何が原因なのでしょうか。国立の研究機関による検査で、アレックスくんの毛髪から検出されたのは国際基準を大きく上回る高濃度の「水銀」でした。
州立病院 ジェニングス医師
「水銀は母親の胎盤を通して胎児の脳に異常を引き起こします。先住民地域には、歩けない子どもや脳性麻痺の子どももいます。おそらく水銀中毒によるものと考えられ、体系的に研究することが必要です」
地域の医療環境では精密な検査が難しく、明確な要因は未解明であるものの、「水銀の可能性が高い」とみられています。
記者
「あちらに停泊している、あの船が金の違法採掘船です。作業の過程で水銀を大量に使用していると指摘されています」
拡大を続ける金の違法採掘。その際、使われる水銀が川に流入し、汚染された魚を食べることで健康被害が起きているのではと指摘されているのです。
違法採掘を進める業者が匿名で取材に応じました。
記者
「子どもに影響があるということで、水銀の使用をやめるつもりは?」
金の違法採掘業者
「水銀は使ってはいるが、外部に流さないような仕組みにしている」
これに対し、先住民側は…
ムンドゥルク族 ジュアレス・サウ首長
「金の採掘業者が言っていることは事実ではありません、川に捨てられる水銀の量も増えています。今、私たち先住民は自分たちの健康をとても心配しています」
“ブラジルの水俣病”と呼ばれ始めている先住民の健康被害。実態の解明が求められています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/336910e3210874835a1bcc9b0163db071254f4cf

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アングル:ペルー前大統領逮捕、社会的弱者の怒りと深まる亀裂

2022-12-20 | 先住民族関連
ロイター2022年12月19日1:37
[リマ 18日 ロイター] - 農民のレオポルド・ウアマニさん(60)は、ペルーの南部・チャルウアンカから3日間かけて首都・リマにやって来た。そして、反逆容疑で逮捕・拘束されたカスティジョ前大統領を支援するデモに加わった。

12月18日、 農民のレオポルド・ウアマニさんは、ペルーの南部・チャルウアンカから3日間かけて首都・リマにやって来た。写真はリマで15日、「議会を閉鎖せよ」と書かれた紙を持つ女性(2022年 ロイター/Sebastian Castaneda)
ウアマニさんはカスティジョ氏が心を寄せようとした、地方に住む、社会から取り残された「忘れられた人々」の1人。カスティジョ氏の試みは実を結ばないことが多かったが、にもかかわらずカスティジョ氏逮捕でこうした人々の怒りに火が付き、不安定な新政権や非難の的である議会は、危機に直面している。
ペルーは過去5年間で6人の大統領が登場するなど、この数年、政局が混迷。有権者の怒りが噴火寸前になっていた。過去の指導者のほとんどは、汚職のために収監されるか捜査を受けている。
この2週間で状況は爆発的に悪化した。7日にカスティジョ氏が弾劾回避のため国会を無理やり解散しようとして罷免されると、その数時間後にデモ隊は高速道路を封鎖し、建物に火を放ち、空港を占拠。少なくとも18人が死亡した。
デモ参加者にはカスティジョ氏支持者もいれば、単に怒っているだけの者もいる。しかし、多くが政治指導者に無視されていると感じていると心情を語った。元教師で農民の息子のカスティジョ氏は問題が多かったが、それでも少なくとも自分たちの側に立っていたという。
「もう私のことを考えてくれる人は、いなくなった」と嘆くウアマニさんは、デモ参加者に死者が出たことについて、議会とボルアルテ新大統領を非難した。ウアマニさんのような人々の多くがボルアルテ氏を「殺人者」と呼び、辞任を求める横断幕を掲げている。
警察と軍隊は、殺傷力のある銃器を使用し、ヘリコプターから発煙筒を投下したとして、人権団体から非難を浴びている。軍によると、デモ参加者にはアンデス地方南部からやって来た人々が多く、手製の武器や爆発物が使われているという。
ペルー初の女性大統領でアンデス先住民族のケチュア語に堪能なボルアルテ氏は、冷静になるよう呼びかけ、選挙の前倒し実施を議会に求めるとともに、辞任を拒否している。
ウアマニさんは「ボルアルテ氏は死者を代表しているだけだ」と言い切る。「私たちは貧しい人々が権力を握る革命を求めて、自分たちと同じ質素な、農村の教師を選んだ」とカスティジョ氏を支持する心情を述べた。
<ネズミの巣窟>
カスティジョ氏は、現状とリマを根城とする腐敗した政治エリートにうんざりしている地方有権者からの支持の波に乗り、昨年の大統領で下馬評を覆して勝利した。
カスティジョ氏は刑務所からの手紙で「私はペルー奥地の忘れられた人々、200年余りも放置され、奪われてきた人々に選ばれた」と訴えた。反逆容疑の捜査を受け、拘束されているが、容疑を否認している。
政治家としては素人だったカスティジョ氏は、憲法を改正し、銅が生む膨大な富を再分配し、社会から疎外された先住民族に実権を与えるとの公約掲げ、支持を得た。だが、これらの公約の多くは実現せず、罷免される前には既に支持に陰りが出ていた。
カスティジョ氏とその側近は、相次いで汚職容疑で捜査を受け、カスティジョ政権はわずか1年5カ月の間に何度も内閣改造を行い、閣僚が80人余りも交代した。
しかし、カスティジョ氏逮捕で人々の失望は一部が帳消しになった。森林地帯や山間部、農村部から何百人もの人々がリマに押し寄せ、カスティジョ氏が拘留されている刑務所などに集結した。
カスティジョ氏を支持するメリナ・チャベスさんは「国民は立ち上がり、投票を守るだろう」と述べ、怒りの矛先を議員に向ける。「議会はカスティジョ氏に仕事をさせなかった」と訴えた。
カスティジョ氏は社会主義政党のペルー・リブレ(自由ペルー)から立候補したが、その後、右派にシフト。3回も弾劾を受けた。
それでも国民の多くは政治的混乱の責任は、議会にあると考えている。世論調査会社・データムによると、議会の支持率はわずか11%。カスティジョ氏の罷免前の支持率は24%だった。
最近の世論調査では国民の約44%が、カスティジョ氏が憲法の規定を逸脱して議会を解散させようとしたことを支持すると回答した。
リマの刑務所近くでカスティジョ氏支持の抗議行動を行っていたカテリナ・アストさんが、かぶっている白い帽子には「議会を閉鎖せよ。ネズミの巣窟だ」というスローガンが書かれていた。
(Alexander Villegas記者、Marco Aquino記者)
https://jp.reuters.com/article/peru-politics-idJPKBN2T306S

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ネタバレ考察『アバター2』/『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のジェイクはなぜ家父長的態度を見せるのか

2022-12-20 | 先住民族関連
ヴァーチャルグロリア2022.12.19

©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2009年に公開されたジェームズ・キャメロン監督のCGI映画の金字塔『アバター』。13年の時を経て『アバター2』として制作された『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』はこれから始まる「アバター」シリーズの5部作の起承転結における“起”にあたる作品だ。
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の中では海と家族が中心に描かれるが、多くの視聴者にとって主人公のサム・ワーシントン氏演じるジェイク・サリーのヘテロ中心の家父長制が心にひっかかってしまうポイントになっている。その理由は何なのか。それについて考察していきたいと思う。
なお、本記事には『アバター2』にあたる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』のネタバレが含まれるため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。
ネタバレ注意
以下の内容は、映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の内容に関するネタバレを含みます。
ナヴィの部族内構造
惑星パンドラの先住民族であるナヴィたちのコミュニティは家父長制に近いが、一方でそうとも言い切れない独特な部族内の階級を持つ。まず、族長は基本的に男性であり、彼らがその部族を取り仕切る政治的な指導者の立ち位置にある。そして、その妻に選ばれる女性はツァヒクと呼ばれる惑星パンドラの自然神エイワの意志を汲み取る巫女として位置づけられている。
このツァヒクという立場が特殊であり、族長はその部族の戦士階級から選ばれるが、ツァヒクは族長の第一子の娘が母親から薬草などの伝統的な知識を受け継ぎ、呪術医的な側面を受け継いで就任するのである。ある意味でいえば、ツァヒクの方が貴族などに近い血統で選ばれる存在なのだ。
ジェイクが族長を務めていたオマティカヤ族では、元々はCCH・パウンダー氏演じるモアトがツァヒクの立場を務め、その娘でありジェイクと結婚したゾーイ・ザルタナ氏演じるネイティリがツァヒクの跡を継ぐことが示唆されていた。『アバター』でジェイクを受け入れる際や族長のウェス・ステュディ氏演じるエイトゥカンが死亡した後は、モアトが部族を仕切っているような描写も見受けられた。
戦争による家父長制化
そのような文化を持つはずのナヴィやオマティカヤ族がどうして『アバター2』にあたる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』では強いヘテロ中心の家父長制になってしまっているのか。それにはジェイクの持つ家族の喪失への恐怖が関係していると考えられる。
そもそも、『アバター』で元海兵隊の退役軍人であるジェイクが惑星パンドラへと来訪した理由は、実の兄であるトミーが、軍人年金では賄いきれないジェイクの戦争による半身不随の治療費を稼ぐために惑星パンドラに向かうはずが直前で強盗に殺害されたことにある。この時点でジェイクは家族の喪失に内心で恐怖心を抱いているように思える。
『アバター2』として『アバター』から約10年後を描いている『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の冒頭では過度な家父長制は顔を出さず、ジェイクとネイティリはオマティカヤ族として幸せな家庭を築いているように見えた。しかし、それは人類(スカイ・ピープル)の再来で一変する。
一度は捨てたはずのライフルを再び手に取り、殺人に手を染めることになるという矛盾した立場に置かれるようになったジェイクはオマティカヤ族のジェイク・サリーから“海兵隊”部族と称されたジェイク・サリーへと戻ってしまっているのだ。それを表すように人類との戦いの中では息子たちに「集合」「解散」「任務」「命令の遂行」「謹慎」と軍隊的な指示を下し、連絡時にはデビルドッグとイーグアイというコードネームで呼び合うなど完全に海兵隊と同じ手法をとるようになっている。
息子たちも軍隊的な返事をするようになり、オマティカヤ族の戦士というよりも“海兵隊”部族の戦士という印象だ。長男のネテヤムが怪我をしても軍隊的な対応をしており、ロアク(ローク)に対しても「謹慎処分」を下す姿は海兵隊そのものである。更には戦いの後に逐一ライフルの整備を行い、ネイティリも『アバター』での姉と父の死からその海兵隊的行動を受け入れている上、ジェイクは彼女だけに「息子を喪うかと思った」と恐怖心を吐露するなど、完全に家族の喪失の恐怖心に支配されている。
メトカイナ族とのやり取りの中で見える家族像
ジェイクは家族の喪失への恐怖心からネイティリの反対も強引に押し切り、オマティカヤ族のハイ・キャンプを離れ、数多の部族を束ねる名誉ある戦士の称号であるトゥルーク・マクトの座すら捨ててメトカイナ族に身を寄せる決断を下す。このときの恐怖心からの行動は家父長的態度が極まっている描写だ。ネイティリら家族の「家はここ(ハイ・キャンプ)だ」という反対すらも耳に入らないほどに恐怖心に取りつかれている。
メトカイナ族に身を寄せるようになっても、その家父長制的な強引さは続き、子供たちに対する態度などは観ていて顔をしかめてしまうような演出も見られる。ジェームズ・キャメロン監督はNetflix制作のドキュメンタリー『ボクらを作った映画たち』の『エイリアン2』(1986)を取り扱ったエピソードの中で家族像へのこだわりについて語られているが、そこでは家父長制ではなく母親への強い愛情について語られていた。
アバター」シリーズでも共演しているシガニー・ウィーバー氏とタッグを組んだ『エイリアン2』だが、その主軸はシガニー・ウィーバー氏演じるエレン・リプリーとエイリアン・クイーンとの母親対決である。彼は当初、映画のタイトルを『Mother』としていたなど、自身の創作の源流にはアマチュア画家で意志の強かった母親の存在をあげている。それを反映するように『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』には母親に執着するキリなどのキャラクターが登場する。そのようなジェームズ・キャメロン監督がなぜ家父長的態度の強いジェイク・サリーを描いたのだろうか。
「アバター」シリーズの起承転結の“起”の『アバター2』
それを考えるためには『アバター』をエピソード0と考えたときに、『アバター2』である『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は「アバター」シリーズ5部作の起承転結の“起”にあたる作品であることを考慮すべきである。この構造はある意味で最初の作品を前日譚のような扱いにした「マッドマックス」シリーズに近いかもしれない。
ジェイクは何かと「父親の役割」「父親として自分が家族を守らなければ」と口にする。その一方でネイティリも家族を守るためのオマティカヤ族で反人類的な戦士としての一面と、人々の心に寄り添うツァヒクの一面を見せる。ジェイクは家族を守るためにレジスタンス活動から手を引いたとはいえ、何かと危険から守るために家族を束縛しようとする。この性格は完全に“海兵隊”部族のジェイクだ。
それに反発するかのように子供たちはメトカイナ族の子供たちや、トゥルクン(タルカン)のパヤカンと絆を結んでいく。そしてスティーヴン・ラング氏演じるマイルズ・クオリッチ大佐の率いる捕鯨船S-76シードラゴンとの戦いで長男ネテヤムを喪い、更にその口から「家に帰りたい」という言葉を聞くことで家族の本音と向き合うことになる。クオリッチ大佐は息子であるジャック・チャンピオン氏演じるスパイダーとの間のぎくしゃくした関係性が家父長制的なジェイクの鏡映しの関係になっているようにも思える。
そしてメトカイナ族たちナヴィは辛勝を収めるも、ジェイクは父親の役割について再び考え始める。この作品が『アバター2』/『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』という名の「アバター」シリーズの起承転結の“起”であると評したのはこれが一因だ。ここからジェイクの家族像と父親像をめぐる物語がはじまり、シガニー・ウィーバー氏演じるグレイス・オーガスティン博士のアバターが出産した父親不明のキリといった家族全体の物語がはじまるのだ。
「アバター」シリーズのはじまり
『アバター3』をはじめとして、『アバター4』や『アバター5』まで既に制作に着手しているという「アバター」シリーズ。『アバター2』である『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は素晴らしい海の描写と映像美と共に「アバター」シリーズの13年ぶりの再始動となった。3時間近い大作ではあるが、これはまだほんの序章に過ぎないと感じさせてくれる。
シガニー・ウィーバー氏は『エイリアン2』に関するインタビューの中で、ジェームズ・キャメロン監督らとの仕事によって、ハリウッドがセクシー服を着てぴったりと主演俳優に抱き着き、同情を誘い、泣き叫ぶような女性像から、どこにでもいる強い女性像を描く転換点になったと語っている。それを考えれば、ジェームズ・キャメロン監督は「アバター」シリーズの新たなはじまりである『アバター:シェイプ・オブ・ウォーター』で従来のハリウッドが描きがちな男性像に訴えるものを作ろうとしているのかもしれない。
しかし、これはまだ憶測の域を出ない。なぜならば、すべてはまだ始まったばかりであり、これから約2年に一本のペースで「アバター」シリーズは新たな作品を公開していく過程にあるのだ。環境問題など、社会問題に関して熱心な活動家としても知られるジェームズ・キャメロン監督。彼がジェイク・サリーを通して何を訴えかけたいのか、その今後に期待していきたい。
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は2022年12月16日(金)より劇場公開。
https://virtualgorillaplus.com/movie/avatar-the-way-of-water-patriarchy/

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COP15 生物多様性協議: 「30×30」保全計画に各国を登録

2022-12-20 | 先住民族関連
KENMIN SOUKO12月 20, 2022 Nakanishi Jun
ケベック州モントリオール — ほぼ 190 か国が、2030 年までに地球の陸地と海の 30% を保護し、生物多様性の損失に対して他の多くの行動をとるという包括的国連協定に月曜早朝に合意しました。放っておくと、地球の食料と水の供給だけでなく、世界中の無数の種の存在が危険にさらされます。
この合意は、生物多様性が人類史上前例のない速度で世界的に減少している中で行われました。 研究者は、100 万の動植物が数十年以内に絶滅の危機に瀕していると予測しています。 この規模の最後の絶滅イベントは、6500 万年前に恐竜を絶滅させました。
多くの学者や活動家がより強力な措置を求めてきたが、以前の合意に欠けていた検証メカニズムを含むこの合意は、この問題をめぐる機運の高まりを明確に示している.
「これは自然にとって素晴らしい瞬間です」と、保護を求めてロビー活動を行うグループの連合であるキャンペーン・フォー・ネイチャーのディレクター、ブライアン・オドネル氏は、この合意について語った. 「これは、これまで見たことのない保護措置です。」
全体として、この協定は 23 の環境目標のセットを設定します。 30×30 として知られるこれらの中で最も顕著なものは、陸地と海の 30% を保護下に置きます。 現在、地球の陸地の約 17% と海洋の約 8% が 、漁業、農業、産業などの活動から保護されています。
米国は、世界で生物多様性条約に加盟していない 2 つの国の 1 つにすぎません。その主な理由は、通常は条約への加盟に反対する共和党員が米国の加盟を阻止したためです。 これは、アメリカの代表団が傍観者として参加する必要があることを意味しました。 (条約に加盟していない唯一の国は聖座です。)
バイデン大統領は、同様に米国の土地と海域の 30% を保護下に置く大統領令に署名しました. しかし、その目標を支援するための立法上の努力は、共和党が 1 月に下院を支配するときに強い反対に直面することが予想されます.
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カード 1/5
CBD。 カナダで開催された約 190 か国の代表者が A を承認 包括的な国連合意 2030 年までに地球の陸地と海の 30% を保護し、それに対して多くの他の行動を取る 生物多様性の損失. この合意は、生物多様性が人類史上前例のない速度で世界的に減少している中で行われました。
新しい時代の始まり? 科学者のパネルは、地質時代の新しい期間を発表する一歩を踏み出しました: 人新世、または人間の寿命。 地球の歴史の改訂されたタイムラインは、地球に対する人類の影響が前の地質学的期間の終結に非常に重要であったことを公式に認めます.
小国の外交の動き。 海面上昇は、人口 30 万人強の太平洋の島国バヌアツの存続そのものを脅かしています。 現在の国家元首 彼は国際最高裁判所がそれを検討することを望んでいる 州が他の国を気候の危険から保護する法的義務を負っているかどうかについて。
再生可能エネルギー源への移行。 世界的に、再生可能エネルギー容量の増加は 2027 年までに 2 倍に設定されており、国にかなりの量の再生可能エネルギーが追加されます。 過去20年間と同様に、今後5年間国際エネルギー機関によると。 同機関は、再生可能エネルギーが 2025 年初頭までに最大の発電源として石炭を追い抜く態勢にあることを発見しました。
各国はまた、地球の残りの 70% を管理して、生物多様性の重要性が高い地域を失うことを回避し、大企業が事業による生物多様性のリスクと影響を確実に開示することにも合意しました。
問題は、合意の高い目標が達成されるかどうかだ。
10年間の以前の契約 グローバルレベルで1つの目標を完全に達成することはできません生物多様性条約を監督する機関によると、古くて新しい合意を支える国連条約が月曜日にここに達した. しかし、交渉担当者は、自分たちの過ちから学んだ、と述べており、新しい合意には、目標を測定可能にし、各国の進捗状況を監視するための規定が含まれています。
交渉の共同議長を務めたカナダ人のバジル・バン・ヘイバー氏は、「これで通知表を手に入れることができる」と語った。 今回は「お金、監視、目標」が違いを生むだろうと彼は言った.
生物多様性の損失には複数の原因がありますが、それぞれの原因の背後には人間がいます。 地球上で最大の原動力は農業です。 海では乱獲です。 その他の要因には、狩猟、採掘、伐採、気候変動、汚染、および侵入種が含まれます。
この合意は、これらの要因に対処することを目的としています。 たとえば、ターゲット 17 では、農薬や毒性の高い化学物質による全体的なリスクを少なくとも半分に削減すると同時に、肥料の流出にも対処することを約束しています。
自然保護団体は、絶滅と野生生物の個体数に関連するより強力な対策を推進してきました。
IPBESとして知られる生物多様性に関する政府間科学プラットフォームの生態学者で事務局長のアンヌ・ラリグデリーは、省略を後悔したが、野心的で限定的なものとして包括的な合意を称賛した.
「これは妥協ですが、悪くはありません」と Lariguderie 博士は言いました。
協定の野心と各国の支払い能力とのバランスをどのようにとるかについての質問は、新しい世界的な生物多様性基金の要求とと もに、交渉で鋭い意見の不一致につながりました. 会談を主導した中国と、会談を主催したカナダは微妙な妥協案をまとめた。
欧州連合は、より強固な保全目標を追求してきました。 インドネシアは、自然をどのように利用するかについて、より多くの余地を望んでいました。
世界の生物多様性の多くは、グローバル サウスの国々に住んでいます。 しかし、これらの国々は、生態系を回復し、有害な農業、水産養殖、漁業、林業の慣行を改革するために必要な巨額の財源を欠いていることがよくあります。 および絶滅危惧種の保護。
開発途上国は、より多くの資金提供を強く求めており、ラテンアメリカ、アフリカ、東南アジアの数十カ国の代表が水曜日に、意見が聞かれないことに抗議して会議から退出しました。
DRC は激しい反対を表明し、月曜日の早朝まで最終承認を遅らせました。 会談の議長がコンゴの反対を覆したとき、アフリカのいくつかの国からの代表者は大声で不平を言った。
月曜日に合意された合意は、政府、民間部門、慈善活動など、あらゆるソースからの生物多様性への資金提供を年間 2,000 億ドルに倍増させるものです。 富裕国から貧困国に流れ込むために、年間最大 300 億ドルを割り当てています。 金銭上の義務は法的拘束力を持ちません。
開発途上国の代表は、このお金は慈善団体と見なされるべきではないと述べた。
ナイジェリア自然保護財団を運営する生物学者のジョセフ・オヌガは、かつての植民地支配者が世界中の天然資源を搾取することで豊かになったと指摘した. 「彼らはやって来て、私たちの資源を略奪して自分たちを発展させました」と彼は言いました。
開発途上国が自国の成長のために天然資源を利用しようとしている今、彼は、地球規模の保護の名の下にそれらを保存しなければならないと言われた.
保全生物学者であるオヌガ博士は、自然保護を信じているが、先進国が過去の行動に責任を持つことを望んでいると語った。
研究機関であるポールソン研究所の調査によると、2030 年までに生物多様性の減少を逆転させるには、閉鎖が必要になることがわかりました。 年間約7,000億ドルの資金不足.
主要な資金源は、特定の農業慣行や化石燃料など、自然を害する補助金に現在費やされている年間数千億ドル以上を再配分することから得られる可能性があります。 目標 18 では、2030 年までに世界でこれらを年間少なくとも 5,000 億ドル削減する必要があります。
先住民族の権利は、30×30 のアイデアをめぐる争点でした。 この措置がコミュニティに取って代わることを懸念する人もいれば、土地に対する先住民族の権利を確保する手段として目標を擁護し、より高い割合の土地を保護下に置くよう求める人もいた.
生物多様性に関する国際先住民フォーラムの代表であり、非営利団体である Nia Tero のポリシー担当マネージング ディレクターである Jennifer Corpuz 氏は、条約に先住民族の権利に関する文言が盛り込まれたことを称賛しました。 「彼女はパイオニアです」と彼女は言いました。
チリの環境大臣で気候学者のミサ・ロハス・コラディ氏は、生物多様性の危機の深ささえ認識していなかったと語った。 2019年のこの件に関する主要な政府間報告書. 家に帰って、彼女は自分の計画が他の閣僚を評議会に連れてくることだと言いました。 彼女は、ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた食料安全保障の問題のために、農業問題が現在特に困難であることを認めたが、前進することが重要であると述べた.
「生物多様性がなければ、この地球上に食物は存在しないことを理解する必要があります。」
https://kenmin-souko.jp/cop15-生物多様性協議-「30x30」保全計画に各国を登録/

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再開された日本観光への期待と課題

2022-12-20 | アイヌ民族関連
ニッポン•コム12/19(月) 15:03配信高坂 晶子
新型コロナウイルスの感染拡大で国境を超える移動が厳しく制限され、2020-21年の世界は同時鎖国を強いられた。2019年に3188万人だった訪日外国人客も20年は411万人、21年は24万人と急減した。日本総研の高坂晶子主任研究員は、ポストコロナのインバウンド政策の立て直しには、「高付加価値化」が必要だと指摘する。
リスタートする日本観光
コロナ禍の下、わが国政府は国内での移動・交流の自粛要請と国際往来の大幅制限を続けてきた。しかし、2022年春以降、観光を含む移動・交流の再開に舵を切り、10月に至って本格的な観光振興策に踏み切った。具体的には、国内旅行の費用を公費で助成する「全国旅行支援」と、訪日外国人旅行者(インバウンド)に対するビザおよびコロナ陰性証明の免除などの大幅な規制緩和である。
こうした取り組みにより、国内外における人の往来は活発化している。足元のデータでは、9月の日本人延べ宿泊者数は3832万人で前年同月比71%増、7-9月期の日本人国内旅行消費額は5.3兆円で前年同期比2.3倍となった(観光庁調べ)。インバウンドについては、10月の入国者数が前月比2.4倍の49万人に上った(政府観光局調べ)。ただし、2019年同月と比べると、日本人の延べ宿泊者数は▲5%、国内旅行消費額は▲20%であり、回復したとはいえコロナ前の水準には達しておらず、インバウンドの延べ宿泊者数に至っては▲80%と大幅減のままである。
人の流れの増大に伴い、消費者や事業者の動きも活発化している。全国旅行支援については、問い合わせが殺到して早々に当初予算が尽きたため、適用を受けられなかった消費者から不満の声が挙がった。インバウンドについては、一時9割減まで落ち込んだ国際旅客便数がコロナ前の4割程度にまで回復し、大型クルーズの運行再開も日程に上っている。小売業でも、円安効果が顕著に現れる高額商品の売り上げが好調に推移していることから、百貨店等が免税カウンターの増設や多言語対応の強化、買い上げ品のホテル配送といったサービスの充実に努めている。現状、かつては最大の旅行者送り出し国であった中国との往来再開のめどが立っておらず、また、コロナの第8波などの懸念材料もあるものの、わが国観光のリスタートの構図は堅固となりつつある。
ポストコロナの課題 : 観光の高付加価値化
目下、政府は観光立国推進基本計画(2023年~25年)の改訂を進めるなかで、コロナ以前からの目標である「2030年にインバウンド6000万人、関連消費額15兆円」を堅持する方針を明らかにしている。しかし、コロナ禍を経て観光の事業環境や消費者ニーズには変化が生じている。今後の観光振興策を考える場合、単純に従前への回帰を目指すのではなく、ポストコロナにおける諸課題を見極め、対応していく必要がある。なかでも急務なのは、量から質への転換、すなわち観光の高付加価値化である。
観光の高付加価値化が求められる理由として、大きく2点を指摘できる。
第1は、従来のマスツーリズムを脱し、観光客一人当たりの収益を高める必要性である。ポストコロナの観光では、安全安心対策への消費者ニーズが高まるなか、密を回避するため、ツアーや施設見学は小規模化しており、稼働率の低下は避けられない。このため、従前の売り上げを確保するには、一人当たり料金の引き上げが必要となり、料金に見合ったサービスや体験価値の提供が課題となる。
第2は、収益を確保し、それを事業環境の改善、具体的には雇用条件の見直しや設備投資に投じる必要性である。まず、雇用については、移動・交流の長期自粛期間中、観光関連ビジネスから多くの雇用が流出した。例えば、宿泊業では、2022年8月の就労者は51万人と、2019年同月比▲20%となっている(総務省調べ)。
一方、人手不足企業の多い業種のランキングを見ると、春以降、宿泊業と飲食業は上位にとどまっており(帝国データバンク調べ)、事業者の求人活動は実を結んでいないことが分かる。背景として、宿泊・飲食業の給与や休暇の少なさ、拘束時間の長さ等がネックとなっており、雇用条件の改善が急務である。次に、設備投資については、コロナ禍では観光DX、すなわち受付け機による自動チェックインやキャッシュレス決済、AIによるQ&Aなどが急速に普及した。こうした技術は、非接触を求める新たな消費者ニーズに応えるだけでなく、人手不足対策としても有効であり、その本格導入には相応の設備投資が不可欠である。
人手不足割合が高い業種(2022年10月/帝国データバンク調べ)
  正社員    / 非正社員
1 情報サービス / 飲食店
2 旅館・ホテル / 旅館・ホテル
3 飲食店    / 人材派遣・紹介
4 建設     / 娯楽サービス
5 運輸・倉庫  / 各種商品小売
付加価値の高い観光商品とは
では、付加価値の高い観光商品とはどのようなものであろうか。わが国の定評あるサービスのさらなる磨き上げはもちろんであるが、現状は手薄なコンテンツの強化に、急ぎ取り組む必要がある。具体的には、短期ツアーやコト消費と呼ばれる各種体験、アクティビティ等の充実である。ポストコロナの観光では、有名観光地をめぐって名所旧跡を見物する従来の旅行スタイルから、一カ所でリフレッシュする長期滞在型が好まれる傾向に転じている。このため、滞在期間中の過ごし方が誘客の決め手となり、地域性に富んだ個性的な内容が求められる。
一例として、近年、観光庁が力を入れているアドベンチャーツーリズム(AT)を見てみよう。ATは自然、アクティビティ、文化体験のうち2つ以上の要素を含む観光を指す。旅行者は深い感興や学び・気づき、視野の広がりを得ることを期待しており、物見遊山に止まらない啓発的な観光体験といえる。こうした期待に応えるには、ユニークで中身の濃いコンテンツや、旅行者の興味・関心に即して臨機応変にエスコートするガイドの存在が欠かせない。観光商品を開発するハードルは高いが、地域の自然や歴史・風習、伝統産品等を観光資源化することで、地元経済への寄与が期待できる分野である。
現在、観光庁等の支援を受け、各地でATの実証事業が行われている。なかでも北海道は早くからこの分野に注目し、先導的な役割を担っている。2017年には北海道経済産業局が主導してATのマーケティング戦略を策定し、2019年にはアイヌ文化と先端技術を組み合わせたデジタルアートの体験型商品を開発した。2021年には世界最大級のATの国際イベントをオンラインで開催し、来年度には同イベントの現地開催も予定されている。
ATの具体的な内容を紹介すると、冬季の阿寒湖周辺の森や湖上を散策し、氷を割って釣ったワカサギをその場で調理・試食するスノーシューツアー、アイヌ人が案内役となって森や湖のほとりを歩き、自然や地域にまつわる民族の伝承や伝統楽器の演奏を披露するツアー等がある。
こうしたATの愛好者は欧米豪に多いため、アジアからの来訪客が7割以上を占め、送り出し国の多角化が課題であるわが国にとって、有望な注力分野といえる。また、受け入れ側コミュニティにとっても、観光客に地域の個性を訴求してファンやリピーターを獲得すると同時に、住民に地元への愛着や誇りを抱かせ、まちづくりや観光地経営への参画意欲を刺激する効果も期待できる。
ATのような活動は、各地域の自然・生活環境を保全しつつ、観光開発に活かす取り組みといえる。ポストコロナにおける世界の状況をみると、観光地の持続可能性を重視するサステイナブルツーリズムや、節度ある振る舞いを観光客に求めるレスポンシブルツーリズムに対する関心の高まりが顕著である。観光立国を目指すわが国としては、こうした世界の趨勢を押さえつつ、観光振興策に取り組むことが重要と思われる。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b10a5584924e1ef12d75a2bd9d1a0a6727b8e83c?page=1

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