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アイヌの暮らしに触れたくて…北の大地「阿寒摩周国立公園」を旅する

2022-04-05 | アイヌ民族関連
アイヌの暮らしに触れたくて…北の大地「阿寒摩周国立公園」を旅する
現代ビジネス2022.04.05
古から自然とともに暮らしていたアイヌに会いに、北の大地「阿寒摩周国立公園」を旅しました。冬の世界は白銀で、カラフルで、温かいところでした。
神の湖に迎えられて

約7000年前の火山の噴火でできたカルデラ湖・摩周湖。右奥に見える山はカムイヌプリ(神の山)。雪のなかの青が、その鮮やかさをさらに際立たせる。
釧路空港から広がる世界はどこまでも雪景色。キレイに除雪整備された国道391号線を北上し、阿寒摩周国立公園の東端、摩周湖へ向かった。旅の行程で快晴予報は初日だけ。澄んだ空と湖に出合えるかは運次第の“霧の”摩周湖だが、1時間半ほどで第一展望台に到着すると、深いブルーが迎えてくれた。世界でも一級の透明度を誇るこの湖は、アイヌ語でカムイトー。神の湖の意味だ。この地に来たことを歓迎されたようで心が躍る。アイヌの人々の世界に触れたくて、この国立公園にやってきたのだ。
阿寒、開かれたアイヌの町

弟子屈町屈斜路(てしかがちょうくっしゃろ)コタンアイヌ民族資料館は、屈斜路コタン地域に伝わるアイヌの生活、風習、文化を紹介する施設として1982年に開館した。江戸時代に6回蝦夷地を探査し、アイヌの人びとと交流した松浦武四郎についての展示が充実している。
大自然とアイヌ文化はこれまでも北海道を象徴するものだったが、近年はとくに『ゴールデンカムイ』をはじめ、2019年に直木賞を受賞した『熱源』、2020年に白老町にオープンした国立アイヌ民族博物館を含む〈ウポポイ(民族共生象徴空間)〉など、アイヌへの注目度は高い。一方で、いまだに社会的な差別や偏見が根強いのも事実だ。
北海道は蝦夷地と呼ばれ、古くからアイヌ民族が暮らしていた場所である。独自の言語をもち、文字ではなく歌や踊りで文化を受け継ぎ、狩猟、漁労、植物採集と自然に依拠した暮らしを営んできた。しかし江戸時代から和人(アイヌ以外の日本人)が本格的に進出。明治初期には日本の領土化、同化政策を行ったことで、アイヌの文化は急速に失われていった。
アイヌについては二風谷や旭川、白老など北海道でもさまざまな場所で知ることができるが、阿寒湖のほとりに広がる〈阿寒湖アイヌコタン〉はとくに開かれたアイヌの地だ。ここには、自分たちについて語ってくれるアイヌの人たちがいる。
1935年以降アイヌの人々の工芸が盛んに生まれていた阿寒湖畔。ここ一帯の土地を所有していた前田一歩園の3代目園主・前田光子が1959年、アイヌの工芸家たちに土地を無償提供したことから現在の阿寒湖アイヌコタンが誕生している。

〈民芸喫茶 ポロンノ〉のカウンターに立つ郷右近富貴子さん。
そのなかにある〈民芸喫茶 ポロンノ〉は、本格的なアイヌ料理をいただける店だ。両親が始めたこの店を受け継いだ郷右近富貴子さんは、アイヌクラフトを現代に活かすクリエイターとしても活躍している。

上から時計回りで、冬の間、雪の下で眠っていたジャガイモを春に自然発酵させたポッチェイモ。キハダの実を煮出したシケレベ茶。カボチャ、トウキビ、ニコロ豆、イナキビなどを混ぜたほんのり甘いラタスケプ。どれも野性みと優しさのバランスがちょうどいい味。
「阿寒湖アイヌコタンは、北海道中からアイヌが集まったコタン(集落)です。ここで生まれ育った人もいるけれど、観光旅行ブームのときに多くの旅人で賑わったので、各地からアイヌが働きにやってきたんですね。だから間口が広いというのかな。積極的に発信し、新しいことに挑戦する。自分たちの文化を切り売りした“観光アイヌ”なんていう人もいるけれど、私たちは見せることでアイヌの文化を守ってきました。アイヌの先人たちに恥ずかしくないように、いまのアイヌ文化を紹介しながら生きている、ハイブリッドなコタンだと思うんです」

郷右近さんのエムシアッのブレスレットとチョーカー。
郷右近さんの活動は多岐にわたる。姉とのユニット〈Kapiw&Apappo〉でアイヌ音楽や、エムシアッという刀さげ紐をブレスレットにする手仕事も。踊りを教えてくれたのはコタンにあったアイヌ文化保存会のおばあちゃんたち、そして手仕事は家族だった。
「子どものころ、夏休みになると阿寒湖は観光シーズンで忙しかったから、浦河町に暮らす祖母(アイヌ文化の伝承者・遠山サキさん)のところで過ごしていたんです。夜になると手を動かしていて、何してるのと聞くと、お前もやってみっかって。だから私にとってアイヌの手仕事は、いつでもそこにありました。覚えなさいと言われたことはありません」
では、本格的にやろうと思ったのはいつだったんですかと聞くと、まだぜんぜん本格的ではないんですけど、と笑う。

オヒョウの樹皮でつくられたアットゥシ織。(弟子屈町屈斜路コタンアイヌ民族資料館)
「あらためて学ぼうと思ったのは、祖母と叔母が講師として阿寒に来てくれたときですね。エムシアッをつくる講座だったんですが、子どもが1歳になる前だったのでおんぶしながらでもできると思い習いに行きました。オヒョウなどの樹皮や草の茎から糸をつくり編み上げる本格的なもので、細かく大変な作業でした。講座が終わった後も、忘れないよう自分なりにできるものをと、小さなブレスレットやチョーカーにアレンジしてつくり始めたんです」
手を動かすことで、あのとき、ばあちゃんが言っていたのはこういうことだったんだと思い出す。手仕事は気づけばいつもそばにあり、やろうと思ったときには先生が身近にいた。それは阿寒に育ったアイヌならではの環境かもしれない。
若いアイヌの希望

アイヌ舞踊や着物を学ぶ西山知花さん。より深く着物のことを学ぶため、いい先生のいる札幌に今年から通う。向学心にあふれ、師匠の西田さんも「教えたことを素直に受け止められる子」と太鼓判。
外の町から阿寒にやってきたアイヌの若者がいる。阿寒湖アイヌコタンにある、〈アイヌシアターイコロ〉で、アイヌ古式舞踊などに出演している最年少の踊り手、西山知花さん(24歳)だ。標津町で育った西山さんは、母親が受講していた西田香代子さんのアイヌ刺繡講座についていき、そこでできた縁がきっかけでこの世界に入った。
「私は覚えていないんですが、アイヌの着物で踊る人たちの儀式を初めて見せてもらったときに、『キレイ』と口にしたんだそうです。西田さんがそれに気づいて、(踊りを)やるかって。踊りはじめたら今度は、着物を縫おうって(笑)」

阿寒湖は、標高1370mのピンネシリ(雄阿寒岳)、1499mのマチネシリ(雌阿寒岳)に囲まれた、大きなカルデラ湖。マリモの群生地としても有名。冬には氷上のワカサギ釣り体験、レンタルサービスも。
西山さんはアイヌをルーツにもつが、子どもの頃は「アイヌ」という言葉も口にすることができなかったという。
「今でこそアイヌってアニメや漫画で話題になっていますが、以前は北海道の地名の多くがアイヌ語に由来するといった程度のことしか知りませんでした。社会的に“アイヌ差別はいけない”とされていることもあり、知ろうとしてはいけない、触れずにうまくやりすごすもの、と思いこんでいたんです」

硫黄山を熱源とする川湯温泉。川湯温泉街には、名前のとおり、温泉の川が流れている。昨今閉館してしまった大型宿泊施設も多いが、この地を再び盛り上げていこうと国や自治体、地域団体が連携し、足湯や川沿いの遊歩道など環境整備を行っている。
阿寒でアイヌ舞踊に携わるようになったことを、仲のいい友だちにもなかなか言えなかったそうだ。勇気を出して口にしたとき、「へえ、そうなんだ」とあっさりした反応で拍子抜けした。最近は、SNSでも自分のアイヌ刺繡などを発信できるようになったと西山さん。
「自分が思うほど、みんながアイヌに対して悪い印象を抱いているわけじゃないんだなって気づきました」

阿寒湖アイヌコタンの入り口にはフクロウの守り神。アイヌの人々の民芸品店などが二十数軒立ち並ぶ。店と工房、住まいが一体となっているところが多く、店先で作品づくりに勤しむ工芸家も。
舞踊と同時に刺繡や着物を習う西山さんだが、背負い袋や木彫りにも興味があると話してくれた。砂澤ビッキや床ヌブリ、藤戸竹喜といった木彫りのスターたちが集まっていた阿寒湖アイヌコタン。この場所は、アイヌの人たちを守り、成長させてきた場所なのかもしれない。ある民芸店では、木彫りやアクセサリーといった工芸品とともに、家族の軌跡を伝える写真が飾られていた。子グマと一緒に撮影しているものや、イオマンテ(神とされるヒグマを天の国に送り返す、アイヌの伝統的な宗教儀式)のときのもの。その伝統がつい最近まで生きていたのだと実感する。阿寒の人たちが、アイヌの生き方を伝えようとしてきた切実さも。

切り分けた細い布を置いて文様を縫いつけていくルウンペ(道のごとく、の意)で着物を仕上げていく西田香代子さん。後進に語りかける言葉は、「ただ、つくれればいいわけじゃない。他の人たちに知ってもらうことも大切」。
西山さんの師匠・西田香代子さんは、アイヌ刺繡の指導を熱心に行う文化伝承者だ。後進たちには「きちんとしたものを学び、受け継いでほしい」という思いで育成している。
「刺繡でもなんでも、先人のやり方は知っていてほしいと思います。現代の子たちは今ふうのものしか見ていないでしょう。それがダメというわけではないけれど、本物を知り、理解できていなければ、次の人に伝えられない。そしていずれ消えてしまう」

アトゥサヌプリ(裸の山)という名ももつ、ダイナミックに噴煙を上げる活火山・硫黄山。植物のない岩肌に点在する噴気孔から勢いよく噴き出す湯気と、鮮やかな黄色の硫黄の結晶がふしぎな風景をつくり出している。
西田さんも本物に学ぶために昔のアイヌの手仕事が所蔵されている博物館に通い、現物を見てきたという。アットゥシ(木の皮の繊維で織った着物)づくりを教える講座で、糸づくりのために山に入ったときのこと。木の皮を剥ぐときに細くなってしまった部分を捨てていく受講者が多いことに驚いた。
「それまで生きていた木が人間のために丸裸にされるのだから、全部使わなければ失礼でしょう。アイヌの人はゴミを出さない。どんなに使えないと思った部分だって絶対にムダにはしないの。山菜を採りに行くときも必要な分しか採りません。自然を使わせていただいているんだから」

明治時代は、マッチや火薬などの原料のための硫黄採掘で栄えていたという。
精神を伝えることはむずかしい。机の上ではなく、実際に交わした言葉や見た姿勢からしか学べないのかもしれない。アイヌの伝統というものをどのくらい意識しますか、と郷右近さんにたずねたとき、彼女はこう答えた。
「料理、手仕事、歌、踊り。どれかひとつではなく、アイヌは生活こそが文化なんです。いつか自分が天の国に行ったとき、ばあちゃんに頑張ったなと褒めてもらえるかどうか、それは常に意識していますね。昔のアイヌは生活が大変で、手仕事どころじゃありませんでした。祖母がアイヌ文化を学び始めたのも40代後半。この伝統を残さなければいけないと一念発起して、さまざまなことを学んでいったんです。頑張ってくれたばあちゃんたちのおかげで、いまの私たちがあるんですよね」
光の森とクマゲラ

阿寒湖周辺の広大な地で自然保護を行う前田一歩園財団。その所有林〈光の森〉を認定ガイドとともに歩く。雪の上に落ちていたツルアジサイ。
氷点下15℃ほどの朝、阿寒湖の上に立つ。厚い氷を覆った雪の光がまぶしい。阿寒湖を取り囲む広大な森林を所有・管理する前田一歩園内の〈光の森〉をスノーシューで歩いた。光の森は一歩園の認定ガイドだけが案内できる散策エリアで、〈阿寒ネイチャーセンター〉の安井岳さんが、樹木の説明をしながら先導してくれる。

オヒョウの木。アイヌの人たちは樹皮を剥ぎ、内皮から糸をつくる。
これはエゾマツで、この木からアイヌの弦楽器トンコリがつくられる、これは接着剤としてヤニが使われていたトドマツ、このキタコブシはいい香りだけれど、アイヌの人は、あえてオナラの木と呼び、悪いものが憑かないようにした……。

地表に噴出したボッケ。アイヌ語で煮えたつという意味で、地熱で地面が温かい。昔アイヌの人たちはこのあたりに家を建てていたという。
アイヌの知恵と生活がつまった森に、足跡をつけていく。何もかもを自分でつくり、自然とともに生きてきたアイヌの先人たち。そしてその心を絶やさないようにする現代のアイヌ民族。「舟を彫る鳥の神」いう名のチプタチカップカムイ(クマゲラ)がリズミカルに木をつつく音が、静寂の森に響いていた。

屈斜路湖は日本最大のカルデラ湖で、約3万年前の火山活動が原形となっている。冬の屈斜路湖の風物詩は、湯浴みをする白鳥。シベリアから渡ってきた白鳥が集い、4月まで滞在する。湖畔の砂浜からは温泉が湧き出て、足湯やコタン温泉(露天風呂)も点在。
●情報は、「FRaU S-TRIP MOOK 国立公園」発売時点のものです。
Photo:Yayoi Arimoto Text:Nobuko Sugawara
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千歳アイヌが国有林利用可能に 伝統的な道具や衣装制作

2022-04-05 | アイヌ民族関連
NHK04月05日 07時08分
千歳市のアイヌの人たちが、民族の伝統的な道具や衣装を作るための素材を国有林で、採取できるようになりました。
3年前に施行された「アイヌ施策推進法」では、自治体と国有林を管理する各地の森林管理署が取り決めを結ぶことで、アイヌの人たちが、儀式などで使う民族の伝統的な道具や衣装を作るために国有林での植物の採取ができるよう定められています。
千歳市では、地元のアイヌ協会の要望を受け、3月29日に市と石狩森林管理署が締結式を行い、道内で新ひだか町に続き2例目となりました。
4月1日から、千歳市藤の沢と西森のおよそ2500ヘクタールの国有林で、裁縫などに使う糸となるつるや薬草、伝統的な刃物のさやを作るための木材などについて、事前に決められた量を採取できるようになります。
千歳アイヌ協会の中村吉雄会長は「アイヌ新法の活用の取り組みの中で今回の締結に至りました。千歳市のアイヌ文化への理解のおかげであり、感謝しています」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20220405/7000045126.html

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「ヌプル」のロゴマーク決定 アイヌ文様をデザイン  登別

2022-04-05 | アイヌ民族関連
「ヌプル」のロゴマーク決定 アイヌ文様をデザイン  登別
苫小牧民報2022/4/4配信
 登別市は、JR登別駅隣接地で2022年度に開設する情報発信拠点施設「ヌプル」のロゴマークを決定した。3案の中から選んでもらう投票を広く呼び掛けた結果、最多得票を得たデザインを採用することにした。  市は、ロゴマークについて昨年12月…
この続き:391文字
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https://www.tomamin.co.jp/article/news/area2/73809/

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交通事故で大けが 共産党北海道 夏の参院選北海道選挙区の候補予定者を変更 

2022-04-05 | アイヌ民族関連
HTB4/4(月) 21:55配信

(写真:HTB北海道ニュース)
 共産党は夏の参院選北海道選挙区に元衆議院議員の畠山和也氏を擁立すると発表しました。当初擁立する予定だった松橋千春氏が交通事故で大けがをしたことに伴う変更だということです。
 畠山氏は4日会見を開き「ジェンダーやアイヌ先住民、気候危機の3課題で今の日本は国際水準から大きく立ち遅れている。若い世代をはじめ多くの人が声を上げているので一緒に国会で訴えていきたい」と述べ、夏の参院選に立候補する考えを示しました。50歳の畠山氏は2014年から17年まで衆議院議員を務め、現在は共産党の中央委員を務めています。
 共産党北海道委員会は当初、党の道国政相談室長の松橋千春氏を擁立する予定でしたが、松橋氏が先月23日街頭演説の移動中に交通事故で大けがをしたため選挙活動が続けられなくなったと判断し、交代を決めたということです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/82fadc750bb2cb39df83cfb731724ae4ec760d2b

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人間ドラマからホラーまで独特の空気感を味わう“北欧”映画『ベルイマン島にて』ほか

2022-04-05 | 先住民族関連
シネマカフェ4/4(月) 17:00配信

『ベルイマン島にて』(C)2020 CG Cinéma ‒ Neue Bioskop Film ‒ Scope Pictures ‒ Plattform Produktion ‒ Arte France Cinéma
北欧の地は、夏は短く、冬がとても長い。そして雨が降る日も多く、家の中で過ごすことが多くなり、そのような環境でいかに楽しく豊かに過ごすかという観点から、シンプルで飽きのこないオシャレな家具や雑貨が生まれた。どこかほっこりとするような安心感のある木製家具や、優しい風合いのリネンを使ったコーディネート。それらは北欧映画を楽しむポイントの1つでもある。
また、大自然が作り出す荘厳な風景も大きな魅力で、北欧を舞台にした映画には旅情をそそる風景が多く登場する。今回は、そんな北欧の空気感を存分に味わえる作品を6作ピックアップした。
★『かもめ食堂』(06)北欧の街角にある日本人が営む小さな食堂
日本人女性サチエはフィンランド・ヘルシンキの街角に「かもめ食堂」という名の小さな食堂をオープンさせるが、客は一向にやって来ない。そんなある日、日本人旅行客のミドリと知り合い、店を手伝ってもらうことに。やがて店に個性豊かな人々が次から次へとやってくるようになり、「かもめ食堂」が少しずつ賑わいを見せるようになる。
主演の小林聡美、片桐はいり、もたいまさこによる穏やかな会話劇や、劇中に登場する雑貨やインテリア、ライフスタイルも注目を集め、公開から15年以上経ったいまでも根強い人気を誇る荻上直子監督作品。
★『ぼくのエリ 200歳の少女』(10)孤独な少年とヴァンパイアの初恋
12歳の少年の怖ろしくも哀しく、美しい初恋物語。孤独な少年・オスカーの隣の家に、ある日同い年のエリが越してくる。2人はすぐに仲良くなり、やがてオスカーは彼女に恋をしていく。しかしエリの正体は、人間の血を吸いながら町から町へと移り住み、200年間も生きながらえてきたヴァンパイアだった――。
スウェーデンの静謐な雪景色と鮮血のコントラストが強い印象を残す、「北欧映画」の金字塔として常に名が挙がる伝説的名作。
★『サーミの血』(16)少数民族サーミ人の少女の成長と知られざる迫害の歴史
1930年代、スウェーデン北部の山間部ラップランドで暮らす先住民族のサーミはスウェーデン人から差別的な扱いを受けていた。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通うエレは成績もよく進学を望んだが、教師に「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げられる。そんなある日、エレはスウェーデン人のふりをして忍び込んだ夏祭りで都会的な少年ニクラスと出会い恋に落ちる。
監督・脚本はアマンダ・シェーネル。正確に再現された劇中の民族衣装、小道具、トナカイの扱いなど、サーミ人の文化を観ることができる。
★『ミッドサマー』(20)太陽が沈まない村で繰り広げられる狂気の祝祭
長編デビュー作『へレディタリー/継承』で注目されたアリ・アスターが監督と脚本を務めた、“フェスティバル・スリラー”。大学生のダニーと恋人のクリス、その仲間たちは、スウェーデンで夏至(ミッドサマー)に行われる、90年に一度の祝祭を訪れる。優しく穏やかな村人たちから歓迎されるも、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖…それは想像を絶する悪夢の始まりだった。
北欧の国々ではクリスマスと並ぶ一大行事「夏至祭」を舞台にした、美しくもトラウマ級の恐怖に襲われる1品。
★『ハッチングー孵化ー』(22)世界を震撼させたイノセントホラー
裕福な家庭で暮らす12歳のティンヤは、母親を喜ばせるために全てを我慢する日々を送っていた。ある夜、森で奇妙な卵を見つけたティンヤは、家族に秘密にしながらその卵をベッドで温める。やがて卵は大きくなり、ついに孵化する。卵から生まれた“それ”は、幸福な家族の仮面を剥ぎ取っていく。
少女が見つけた謎の卵の孵化をきっかけに起こる恐ろしい事件により、家族の真の姿が浮き彫りになっていく様を描いた、新鋭女性監督ハンナ・ベルイホルムによるフィンランドのホラー。ロマンチックな北欧スタイルの美術は必見。
4月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国にて順次公開。
★『ベルイマン島にて』(22)映画監督カップルによる、ひと夏の旅暮らし
スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンが数々の傑作を生んだ島を舞台に、映画監督のカップルが織りなすひと夏の物語。スウェーデンのフォーレ島にやってきた映画監督カップルのクリスとトニー。創作活動にも互いの関係にも停滞感を抱いていた2人は、敬愛するベルイマンが愛したこの島でひと夏を過ごし、インスピレーションを得ようと考えていた。
やがて島の魔力がクリスに働きかけ、彼女は自身の“1度目の出会いは早すぎて2度目は遅すぎた”ために実らなかった初恋を投影した脚本を書き始めるのだが――。
奇岩がそびえる島の風景や、夏の夜の屋外パーティーを楽しむ人々の様子などが旅情を誘う作品。監督は『未来よ こんにちは』『EDEN/エデン』などのミア・ハンセン=ラブ。
4月22日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c0d2a6c7b08f0ccf116e8b6bde32b7dbc08f7474

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