週プレニュース4/21(木) 15:00配信

「チェブレキ」はでっかい揚げ餃子? サクサクの生地の中にはお肉が入ってるよ!
今回作るのは私がウクライナの旅で最初に食べた食事。メニューが読めずにほぼ値段だけで指差し注文したそれは、大きくて平たい揚げ餃子のようなもの。クリミア・タタール人の民族料理「チェブレキ」でした。
それでは「旅人でも簡単に作れるおうちで世界飯」第32回、はじまるよ!
チェブレキは味付けした挽肉をごく薄くのばした生地で包み揚げたもので、クリミア・タタール人の居住する地域や、東欧、トルコ、中央アジアなど幅広いエリアで人気のおやつ的存在。かつてはチェブレキを食べるためだけに、ウクライナから本場・クリミア半島を訪れる人もいたのだとか。
黒海の北岸に位置するクリミア半島は、国際的にウクライナの領土とみなされながらも、2014年にロシアに併合され、現在までロシアによる実効支配が行なわれています。
クリミア半島の先住民族であるクリミア・タタール人は、併合直前まで半島に24万人居住していました。しかし、プーチン政権による迫害を受け、併合後はウクライナへ亡命した人も多く、その中には首都キーウで新たな生活としてチェブレキ作りを始めた人もいたようです。
私がキーウに訪れた2018年、1週間前にアルメニアでスリに遭ってからはお腹に隠した500米ドルだけで生活していたものだから、ろくにご飯を食べていなかったし、底を尽きる現金を心配して節約が続いていました。もちろんビールも我慢です。しかしキーウでは日本からの送金を受け取ることができたので、
「久々にレストラン行くぜ!」
と鼻息荒く訪れたのが、口コミサイトで評判の人気店、首都キーウの2千軒以上のランキング中ベスト10に入るお店でした。中近東料理、東欧料理だという以上に深掘りすることもなく、旅人に優しい価格設定ということで即直行。読めないメニューから、値段と英語で書かれた材料だけで注文したのがチェブレキだったのです。
私は人生初のクリミア・タタール料理を味わっているとも知らずに無我夢中でサクサクのチェブレキにかじりつきました。食感の軽い揚げ物で、中に入っているジューシーで獣臭のある羊の挽肉がビールと相性抜群。そういえば突き出しはパンとフムスで
実はそのレストランはクリミアから亡命してきた人の店で、口コミサイトにもこんなふうに書かれていま「チェブレキお薦め。ロシアに占領されたクリミアを脱出したクリミア・タタールの亡命者たちが最近開いたお店です。 チェブレキがおいしかった。
(それでは、クリミア・タタール料理、さっそく作ってみましょう!
<材料> 8枚分
*生地
・小麦粉...200g
・水(ぬるま湯)...120ml
・塩...小さじ1弱
・油...小さじ1強
*タネ
・お好きな挽肉...120g
・玉ねぎ...1個
・塩、胡椒、お好きなスパイス...少々
<ポイント>
・小麦粉はふるいにかけておくといいよ!
・生地は耳たぶの硬さくらい。硬かったら水を追加して調節!
・挽肉は羊だと現地っぽいけど、牛でも豚でもなんでもOK!
・スパイスはお好みで。おすすめはクミン!
<調理>
1.生地の材料を全てボウルに入れひとまとめになるまでこね(耳たぶくらいの硬さ)、ラップで包んで1時間寝かす。
2.玉ねぎをみじん切りにして挽肉と混ぜ、塩、胡椒、お好きなスパイスで味付けをする。水(分量外)を足しゆるめのタネにすると現地のものに近くなります。
3.生地を棒状に伸ばしてから8等分にし、それぞれ丸め直したら麺棒で薄く伸ばす。
4.生地の上に半月型に薄くタネを塗り半分に折り畳み、端を指やフォークの先などで押してくっつける。(大きく平たい餃子を作るようなイメージ)
5.フライパンに揚げる用の油(分量外)を多めに入れて、両面をキツネ色になるまで揚げたらできあがり!
★YouTubeで実際の料理シーンも見てみてね!【】
<実食>
揚げ物ってなんかワクワクします。作っているときの音も良いですが、空腹をくすぐる揚げ油の香り。
お店で一緒に添えられていたおそらくサワークリームの代わりに、ヨーグルトを用意してみましたが、これにより異国情緒感アップ。ついでに見た目がシンプルすぎるのでパプリカパウダーを。パセリなんかを添えてもいいですね。
さっそく食べてみると、軽い食感とお肉と玉ねぎのシンプルでジューシーな具は、まさにおやつ感覚で何個でもいけちゃう。危険です。
現地のメニューにはお肉だけでなく、マッシュルームやチーズ、トマトなどさまざまな種類のチェブレキがありましたが、それもまた美味しそうです。
またチェブレキは調理方法が異なると、ヤンティクという名に変わります。ヤンティクは揚げずに乾いたフライパンで焼き、溶かしバターを塗ったもの。
実は私、一枚のチェブレキでは足りず、読めないメニューからもうひとつ指差し注文したのがヤンティクだったのです。「なんだこれ似たような料理だな」と思いましたが、それもそのはず。素材は同じものですから。
偶然にもウクライナで体験することができたクリミア・タタール料理は、亡命者たちの愛して止まない故郷の味でした。
レストランのFacebookページによると、ロシア軍がキーウ近郊から撤退した現在、店は徐々に営業を再開し、ボランティアで兵士や難民へ食糧を提供しているようです。
しかし、材料確保のための経済支援の不足により、はじめは400食ほど配っていた食糧も200食、100食へと減りつつあるため、募金を募ったり、チェブレキをヒーローにしたキャラクターTシャツを作成して資金を集め、支援活動を継続しています。
キーウの観光名所である「黄金の門」の前では、音楽の宴による「ウクライナへの祈り」が捧げられたそうです。飲食業やデザイナー、ミュージシャンやパフォーマーなど、それぞれ自分たちのできることで支援活動を行なっています。逆境の中でも小さな笑顔と大きな勇気をもたらしているのは、こうした人々の結束や助け合いなのだと感じました。
「全てが戻ったらクリミアに戻ります」という彼らの願いがどうか、叶いますように。
PRAY FOR PEACE!
★次回配信予定は5月12日(木)です。
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。2014年より『旅人マリーシャの世界一周紀行』を連載。Twitter【marysha98】 Instagram【marysha9898】 YouTube【】
https://news.yahoo.co.jp/articles/22395f708a9273c928ab67b86f840c5bdea708a6